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音楽は人生と密接だから、あの瞬間を思い出せる特別なスイッチを贈ろう

2022年12月17日。第3回目のバースデーランウェイが幕を閉じました。まずは1年という大切な時間をこのプロジェクトに預けてくれたさきさん、tamaさん、まことさん、はるかさん、ゆかこさん、みのりさん、かえさん、本当にありがとうございます。

バースデーランウェイ公演が終わってもう2週間が経ち、あっという間に年を越し、2023年が始まったことに驚きを隠せません。

バースデーランウェイと歩んだ1年間を大切に言葉にしたいと思い何度かパソコンの前に向かったのですが、どうにも上手くまとめることができず、いくつかに分けてゆっく紡げたらいいなと考えています。

そんなバースデーランウェイに関する投稿の第一弾は「ランウェイと音楽」について、ゆっくりとお話ができたらなと思います。

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「私たちが作っているショーは服が主役のショーではない」と言葉にすることがあります。バースデーランウェイの主役はランウェイを歩く” 表現者”と呼ばれる人たちで、表現者さんの思い描く未来の人生に合わせて衣装や照明などの演出を考えます。

ファッションショーを思い浮かべるとEDMのような楽曲がBGMに使われているイメージもあると思いますが、バースデーランウェイでは今のところ3公演全てで歌詞のある曲を選んでいます。

こういった音楽を利用するとなれば、映像として配信することにさまざまな権利が発生するので、より多くの人に見てもらえる可能性を考えると「フリー音源にすればいい」というのも確かにあって、主催者のユウカさんとそのことについて何回か話をしたこともあります。

それでもバースデーランウェイがあえてフリー音源ではない曲を使うのは、私たちの作るショーは当日1回だけではなく、自分と向き合う過程を含めてその後の人生にも大きく関わっていくもの。

だからこそ、ランウェイが終わってからの日常で触れられる可能性がある音楽を選びたいという気持ちがありました。

ランウェイ曲の発表は公演の半年ほど前に衣装のデザインやモチーフと一緒に行うのですが、そのときから表現者さんにとってランウェイ曲は「自分のために演出がついた、世界にひとつだけのランウェイで流れる大事な曲」になります。

そんなランウェイで流れる曲との出会いが、これから人生を歩む中で、この日を思い出すスイッチになってくれたらいいなとも思っていたんです。そのスイッチを押せるのは表現者さんだけではなく、会場を訪れていたお客様も同じようにです。

スイッチは自分で押すこともできれば、街中やCMなどで耳にしたときに偶然発動するように、記憶と音楽の繋がりが密接だと私自身が信じているからこそ、大切な日の音楽はフリー音源ではないものを選びたいという気持ちもありました。

そんな想いを抱きながら、バースデーランウェイ当日のランウェイ曲を各表現者さんたちに1曲ずつ決めていきます。

1年に2回行うヒアリング

曲の決め方は表現者さんが参加するヒアリングに私も立ち会わせてもらい、そこで表現者さんが言葉にする想いや感情をピックアップしながら、キーワードを歌詞で検索してみたり、楽曲の雰囲気に合うアーティストを1組思い浮かべて、そこから類似のアーティストに飛んで、曲の雰囲気や歌声を確かめたりと、意外と作業は多いです(笑)

とはいいつつも、7名の表現者さんのランウェイにピッタリな曲を探すこの時間は私にとっては宝の山からそれぞれの表現者さんにピッタリな宝石を見つけ出すような、ワクワクする時間で、この時間が終わるとちょっとだけ寂しくなることもあります(笑)

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2022年度のバースデーランウェイのランウェイ曲は前回公演と少し違う方法で選ぶことを決めていました。

前回は参加してくれた5名のモデルさんたちの多くが、「今、一歩を踏み出したい」という想いで参加してくれていたので、その背中を押せるような曲を探して選んでいました。

⇧2021年度のBDRランウェイ曲

今回の公演には「諦めきれない夢をもった7名の表現者さんが自分自身と向き合い、思い描く未来をランウェイで表現する」といったテーマがあったので、この"ランウェイで表現する”という部分をすごく大事にしたいなと感じていました。

あくまでも表現者さんが主役となる舞台で、表現者さんが歩くランウェイに彩を添える。いい意味で”「BGMとして成り立つ曲を探すこと」が今回の目的だったなと思います。

表現者さんに初めてランウェイ曲を伝えるときに、

・表現者さんがランウェイを歩いて自分を表現するから、ランウェイ曲が音楽が会場から聴こえてくることをイメージして選んだこと

・表現者さんの衣装、表現、音楽がひとつにまとまったときに、はじめて演出として成り立つこと

この2点をお話するようにしていました。今思うと難しいお願いだったなと感じるのですが、ランウェイが終わり、当日や、これまで一緒に過ごした時間を振り返ってみると、表現者のみなさんは衣装のモチーフや音楽を自分事として解釈して、それぞれが、自分のランウェイを表現するためにたくさんの努力をしてくれたんだなと感じました。

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ランウェイ曲について書くだけで、約2000文字近くになりましたが、このまま七名の表現者さんのランウェイ曲について、私が選んだ当時の想いをずっと大切にするためにも、あらためて言語化しておきたいなと思います。

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さきさん『しゅらしゅしゅしゅ/女王蜂』

BDRの表現者さんにはメンバーカラーがあり、さきさんの色は「黄色」でした。表現者になったさきさんに初めてお会いした、いや、すれ違った大阪駅でのたった数秒のやりとりで、さきさんはヒマワリみたいな人だなと感じたんです。

「出会っただけで一瞬で色鮮やかな花を咲かせられるようなさきさんの明るさはトップバッター向きだな」と、初めてお会いしたときの印象がとても強かったので、当初は会場がさきさんの明るさでパッと明るくなるような曲をイメージしていました。

ですが、ヒアリングを通してさきさんの夢に対する想いを聞いたときに心に浮かんできたのは「さきさんはもっと輝ける人だろうし、私はそう言い切れる自信がある」といったよくわからない自信だったんです。

自分のことではなく、誰かに対して自信がみなぎる感覚はとても不思議なもので、衣装のモチーフを考えてくれたナイトウさんや、ユウカさんと話をしながら、「さきさんが主役になれるアバンギャルドな世界を演出できる曲」を探すことになり、「女王蜂のしゅらしゅしゅ」に決定したのです。

この曲をランウェイで流すことは私たちにとっても挑戦で、前回とは全く違うバースデーランウェイを魅せることになるなと感じていたのですが、そこに不安は全くありませんでした。

だってこの曲でランウェイを歩くのは「さきさんなら絶対にできる」と、スタッフが躊躇うことなく言葉にできたさきさんだっかたら。

ナイトウさんと、表現者さんに衣装モチーフや音楽を伝える際のリハを何度かしたのですが、そのときに「さきさんには”私たちがさきさんならできるっていう自信がある”って言葉を伝えたいですね」とよく話していました。

このときからさきさんがトップバッターを歩くイメージは結構あったのですが、それが実際に形となり、さきさんがこの曲で、そしてトップバッターで歩いてくれた2022年度のバースデーランウェイは前回とは違う、私たちの”やりたかったこと”が表現できたんじゃないかなと思うほどのものでした。

さきさんに想いを託して本当によかったなあ。


tamaさん『Love me, Love you(ENSEMBLE Version)/Mrs. GREEN APPLE』

tamaさんは元々はこの曲で歩く予定ではなかったんです。(唐突に)

もともとプレゼントというモチーフは決まっていて、モチーフに合う違う雰囲気の曲で一度決定していたのですが、社会人になってかなり多忙な毎日を歩まれていたtamaさんを見ていると、「自分にもプレゼントを」というコンセプトがランウェイを歩いているときに思い出せるような曲にしたいなと考えるようになりました。

tamaさんは本当に愛に溢れた人で、表現者さんとの集まりがあればみんなに丁寧に、そして平等に愛情を配られている姿が印象的でした。

そんなtamaさんだからこそ、お客様とか周りの人に優先的に目を配るのではなく、ランウェイの瞬間をまずは自分が楽しめるような曲はないかなと探していたときに出会った曲です。

アンサンブルバージョンのドラムの始まりと、楽器の音の重なりがランウェイにピッタリで「LOVE」という言葉が多く使われる曲はきっとtamaさんのランウェイに色を添えてくれるだろうなと感じました。

曲の中に

人の出会いは運命なんだ

という歌詞があるのですが、なぜかtamaさんと会うたび、このフレーズが頭の中に浮かんでくるんですよね。その理由は私にも分かってないけど、tamaさんが日頃紡がれるnoteを見ていて、大切にされている感覚がこの曲に近いんじゃないかなと思うことがありました。

そして、ランウェイ当日tamaさんがとっても素敵な笑顔でお客様に手を振ってる姿を見て、私はハートを射抜かれていました(笑)

まことさん『二月のセプテンバー/GOOD ON THE REEL』

今回のランウェイ曲のなかでは静かでエモーショナルな雰囲気が特徴的な二月のセプテンバー。

もともと私がこのバンドに思い入れがありよく聴いていたのですが、まことさんのヒアリングに参加した時に、突然何かを思い出したかのようにこの曲が頭の中に流れてきました。

頭の中に流れてきたのはサビの

二度と来ない今日に傘をさして まぶたの裏の方で君を待った
二月のセプテンバー/GOOD ON THE REEL

という部分でしたが、なぜかその言葉をどうにかしてまことさんに伝えたいなと思ったんです。私は縁があってまことさんのマネージャーを担当していたのですが、面談のときに「歌詞の考察をすることがある」とお話してくれたことがあって、ふと、自分にとって思い入れのある曲の考察をまことさんにしてほしいなと思ったからかもしれません。

いくつか曲の候補を出す中で、「この曲がいい」と他のスタッフから言ってもらい、そこから衣装のモチーフをみんなで考えたのですが、モチーフを担当してくれたナイトウさんが「雨水(usui)」というテーマを持ってきてくれたとき、心がドキドキしたことをよく覚えています。

雨水は雪が雨へと変わって降り注ぎ、降り積もった雪や氷もとけて水になる頃という意味で、言葉の意味が二月のセプテンバーというタイトルにもマッチしていました。そしてまことさんは2月生まれという不思議な縁を感じるチョイスに、「この曲しかない」という気持ちを強く抱きました。

ランウェイ曲を初めてお伝えするときにまことさんに「この曲の歌詞には”待っている”という言葉があってその言葉が待っている相手は…」と私なりの歌詞の考察を少しお話しました。

私はこれまで音楽を聴いて「こういう意味じゃないか」と考察することはあまりなかったのですが、まことさんとの出会いを通して、過去によく聴いていた曲を新しい視点で捉えるキッカケをもらい、それを言葉にできたのは、上手く言えませんが、この曲と私との再会にも何か意味があるのかな…なんてことを思ってしまうほど、不思議な感覚でした。

そして、リハを含めてランウェイで曲に合わせて表現するまことさんを見ていると、きっとまことさんなりに歌詞を考察して、自分の人生と照らし合わせながら表現してくれているのだろうなと感じ、それがすごく嬉しくも、愛おしくもあったんです。

私にとっても大事な曲となった二月のセプテンバー。まことさんのランウェイは本当に綺麗でした。

はるかさん『シャンパンになりきれない私を/Shiggy Jr.』

はるかさんと初めて会ったときに感じたのは、「キラキラした透明な水」でした。ピュアで何にも染まっていなくて、でも今から何にでも染まれる。その個性がとても素敵だなと感じていたんです。

そんなはるかさんのランウェイには非日常的な華やかさを演出したいなと考えていて、この曲に出会いました。

シャンパンが弾ける華やかでキラキラしたイメージと、タイトルにある「”なりきれない”」という葛藤が、出会った当初を生きていたはるかさんにとても合っているなと感じたんです。

はるかさんはランウェイを歩きながら花ビラを撒いてくれたのですが、照明に照らされた花びらがとってもキラキラしていて、曲にすごくぴったりな世界が表現されているなとすごく嬉しくなりました。

曲の歌詞に合わせてフリやポージングをしてくれるはるかさんを見ていると、この曲をたくさん聴いて、一緒に1年を歩まれたんだろうなと、本当に幸せな気持ちで胸がいっぱいになりました。

はるかさんがこの1年で決断された「周りの人を笑顔にする」という選択の第一歩となった日。

はるかさんがランウェイを歩くことで近くのお客様は本当に笑顔になっていて、はるかさんが素敵なランウェイを歩いてくれたおかげで、いつかこの曲を偶然耳にしたお客様が、あの笑顔いっぱいのランウェイを思い出して、心に笑顔の花が咲くんじゃないかなと感じます。

ゆかこさん『Outsider/milet』

ゆかこさんの曲はいろんな角度から「かっこいいとは何か」を考えて決めた曲でした。ゆかこさんの理想の「かっこいい女性」に近しいものはどんなものだろう…と考える時間はとても有意義な時間でした。

元々は別の曲がランウェイ曲として決まっていたのですが、中間ヒアリングを機にゆかこさんの「未来コンセプト」が大きく変更となったため、曲のイメージもガラッと変更することになったんです。

この曲は他の表現者さんのランウェイ曲とはまた違う、「魅せること」に重きを置いたような曲だと感じていたので、正直この曲で歩くのは勇気がいるんじゃないかなと思う部分もありました。

この曲は他の曲のように「ここからサビです」という雰囲気があまりなく、もともとmiletさんが歌で表現していた力強さをより倍増させたようなシンプルな入りのサビだなと感じていたんです。

歩き出しからサビにかけて盛り上がりを作ってくれるのもランウェイ曲の魅力であり、ランウェイをより魅力的に見せてくれるものだと感じていますが、この曲の場合はその盛り上がりをランウェイで表現するのはすごく難しそうだなと…。

ですが、歩かれるのはゆかこさんだったので、そこに心配を感じることはなく、むしろ一定の力強さが継続するこの曲だからこそ、ゆかこさんにしか表現できない「アウトサイダーな世界」がきっとあるんじゃないかなと感じていました。

ウォーキングレッスンのときに、この曲で歩かれるゆかこさんの姿を見たときに、この曲を自分なりに解釈して、力強さとかっこよさを形にする才能に圧倒されたことをよく覚えています。

ランウェイ本番の力強さと美しさは本当に圧巻で、モチーフの「モルフォ蝶」にピッタリなランウェイでした。

みのりさん『Fall/Superfly』

みのりさんの未来コンセプトは「今持っている力を信じてみんなの私の世界へ巻き込んでいく」です。モチーフはブラックローズで、衣装もかなりクリエイティブな仕上がりになりました。

みのりさんだからこそ似合う、みのりさんだからこそ生み出せる世界を全面に押し出せる曲を探し、決定したのが「Fall」です。

曲の前奏が特徴的な曲なので、照明と共に、会場のボルテージは高まるだろうなと感じていました。だからこそ、みのりさんが登場したら、そこからはみのりさんが創り出す世界にお任せしようとも思っていたんです。

私たちがいい意味で全く触れていない、いや、触れられないものをみのりさんに”表現”という形で託したのですが、もう本当にお任せしてよかったです。素敵なランウェイでした。

曲の歌詞に合わせてフリをつけて、妖艶に、ときにはかっこよく、そして儚く、表情を変えて踊るみのりさんの姿を初めてみたとき、本当にドキドキしたなあ。

会場がみのりさんの世界に巻き込まれていく姿をこの目で見られて良かったです。

かえさん『ものがたりは今日はじまるの/吉澤嘉代子featサンボマスター』

今回選んだランウェイ曲の中で、すぐに「これだ」と決まったのがかえさんの曲でした。ヒアリングで優花さんの言葉を「うん、うん」と受け取り、悩みも丁寧に言葉にして、ほがらかな笑顔で周りを包んでいくかえさんのヒアリング時間には、近くにいた私たちスタッフも癒されるような、そんなかえさんにしか出せない空気があったなあと覚えています。

そんなかえさんの夢は「自分を好きになること」。今回参加してくれた表現者さんのなかでは抽象的な夢だったかもしれないけど、やっぱりこの夢はみんなの夢であり、私の夢でもあります。

自分を好きになることを掲げて自分と向き合うことは正直私なら逃げたくなることもあるだろうなと思うような夢ですが、かえさんは1年間、自分と正面から向き合いながら、その夢を少しずつ叶えていく姿を見せてくれました。

かえさんのランウェイ曲に選んだのは、私がたくさん救われたサンボマスターの山口さんが紡いだ曲ですが、曲の始まりの音がちょっとおもちゃっぽくてどこか懐かしく、そして幻想的で、初めて聴いたときに「夢の世界に連れて行ってくれるような曲だな」と覚えた曲です。

そこに吉澤さんの素敵な歌声がマッチして、さわやかながらも切なくて、そんな不思議な雰囲気の曲が、かえさんをいい意味でランウェイという舞台に連れて行ってくれるようなイメージが浮かんできました。

ランウェイ前映像でかえさんが「イントロが流れたら、雲の上を歩いているような感覚になれる」と話してくれたのを見たときに、解釈が近くてすごく嬉しくなりましたし、実際のかえさんのランウェイは雲の上にいるような、ふんわりとした世界で、この曲を選んでよかったなあと感じる時間になりました。

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こうやって思い返しながら曲を選んだ理由を紡いでみると、それぞれの表現者さんに曲を通して伝えたいことがあったんだなと感じました。

今回選んだ曲は表現者さんがランウェイで自分の思い描く未来や夢を表現してくれなければ演出として完成しないものばかりだったので、1年間自分自身と向き合ってくれた表現者さんたちがいたからこそ、あのランウェイは完成したんだろうなと思うと、七人の表現者さんに最大級の「ありがとう」を伝えたいです。


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