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絵本「空色のゆりいす」を娘と読んでー目の見えない女の子と風の少年との恋ー

「お母さん、なんだかすごくかなしいお話の本を借りてきたの。
読んでくれない❓」

小2の娘が昨日、学校の図書館で気になって仕方がないと言って
借りて帰ってきた絵本。



中身を確認すると、結構文章量が多い。
大丈夫かなあ。。。と思ったが、いざ読みはじめてみると
そんな心配は杞憂であった。


じゃがいもと牛乳がおいしい北の町に

いす作りの職人さんと奥さんが住んでいた。



これから産まれてくる赤ちゃんのために、
とっておきのゆりいすを職人さんはこしらえた。

空が、とても青い日に、
おかみさんには、女の子が生まれました。

けれど悲しいことに、その子は、
目が見えなかったのです。

それがわかったとき、
いすつくりは、あわてて、町のお医者を
呼びにいきました。

お医者は長いあいだ診察したあと、
生まれつきだから、なおらないといって帰りました。

いすつくりとおかみさんは、
それからずっと泣きました。

いく日もいく日も、泣きました。



悲しみに暮れる夫婦のもとに、
不思議な少年が現れる。


その男の子は、
画用紙にとっても美しい青色を塗っていた。


三角の棒を使って
空の色をあつめることができるという。

職人さんは思いつく。


あの子のために、一番美しい空色のゆりいすを
作ろうと。。。


「その青い絵の具をわけてもらえないかな❓」


男の子は職人さんに空から一日がかりで
色をもらってびんにあつめていった。


いすつくりは家に帰って、
さっそくあのゆりいすを引っ張り出しました。

そして、できたての絵の具を、
筆にたっぷりとつけてぬりました。

ゆりいすは、見るまに、
すばらしい空色になりました。

本当に、すてきな空色に‼︎


目の見えない女の子が3歳になった時、
そのゆりいすに座って彼女は空の色を覚えた。

それからこの世界で、一番広くて
一番高くて
一番美しいものが空だということも知った。


女の子が五つになったとき、
女の子は、自分に空色をくれた男の子と再会する。


男の子は女の子にそっという。


「ぼく、風の子。

秋がさよならするとき、
ほんのちょっと、やさしい、いい風がふくだろ。

ぼく、あれだよ。」


職人さんは大きくなっていたその風の男の子にお願いする。


「今度はあの子に花の色を教えたいんだ。
赤い絵の具を持ってきてくれないかなあ」


男の子は女の子のために禁忌を犯す。


ある晩、男の子は大きなかごをかかえて、
こっそりと、ばら園にしのびこみました。

そして、たくさんの赤いばらの花をむしりとりました。

かこがいっぱいになると、ポケットに入れました。

ポケットがいっぱいになると、ぼうしにも入れました。

そして、日がのぼらないうちに、にげていきました。



娘は女の子が目が見えないことにショックを受けていたが、
私はこの風の男の子が純粋であるがゆえに
女の子のために悪にまでもなってしまうことに
深い感銘を受けてしまった。


いもとようこさんの描く絵も
色が染みしみと心にもゆき渡るようで
この絵本のテーマである「空色」より
男の子が盗んだ「ばら色」の深紅の絵が印象深くうつった。

何か大切な、かけがえのないものを守るために
犯す罪はとても切ない。


少女の空色は、だんだんうすれていきました。

少女はゆりいすにすわって、いっしょうけんめい、
何かを思い出して、何かにもどろうとしました。

それから、いつか心にしまった、
いいものを取り出してみたいと思いました。

そりゃあ、いいものでしたっけ。。。。。

どこかへ、しまい忘れてしまったけれど。。。。

少女はため息をつきました。


その後の展開は相応のことがふりかかるのだけど、
言葉の捉え方がとても巧みで惹き込まれる。

作者の安房直子さんが心のひだをあたたかい眼差しで
包み込むかのように照らしているので
物語の現実は悲壮でも、優しく寄り添ってくれているような
安心感を覚える。


空色のゆりいすや、
罪をおかしたばら色
手に入らない海の色など、
かなり考えられて色も作られているのではないか。
奥ゆきが深い味わい深い色なのだ。


最後の、男の子の声によって、
女の子が忘れかけていた
色を取り戻してゆくさまは美しい。

(脳内BGMは「君の名は」の三葉のテーマ)


「これはいい本を借りてきたねえ。お母さん、ビックリしちゃった」

「あたしも感動しちゃった〜」


リリカルでエモい話や絵が私も娘も好きなので
いもとさんの絵本の魅力に見事はまってしまった。。。


「この人の絵本、図書室にいっぱいあるよ」

「え、じゃあ借りてきてよ。ごんぎつねは泣くぞ〜」


最高の絵本を読み終わったあとのため息は金色のオルゴール。

絵本はこの世界が美しいものに溢れているということを
素朴な文章と、純粋な絵で教えてくれる
最高の宝物である。