生き様に惚れて(包丁の造り手と使い手)
今まで包丁を買ったことが無かった。
昔、働いていた居酒屋を辞める時に
一番気にいってよく使っていた包丁をプレゼントしていただいた。
ステンレスのモリブデン鋼の24CMの牛刀。
型抜きで作られたであろう業務用のもの。
だいぶん研がれていて筋引きのように身幅が細くなった手に馴染む一丁。
包丁を売っている有名な刃物屋のほとんどは自社工場を持っていない。
自分のお店の銘が入っていても、実際に作っているのは刃物製造メーカー。
ジュエリーと一緒だよね。
ブランド店で売っていても、実際にブランドでは自社工場を持っていない。
自社ブランド名を刻印させたものを外注で作らせている。
シャツなどの衣料品でも同様の商慣習で作られているものがある。
知らないだけで様々なジャンルで同様の過程で制作されているものがあるんだろうね。
2012年に惜しまれて閉店した横浜の刃物メーカー。
高橋刃物製作所。
様々な刃物屋のOEMでの包丁製造を請け負っていて
閉店後には百近くの刃物屋の刻印が残されていた。
高橋刃物の真骨頂が鍛造ステンレスの包丁。
猛烈にステンレスを鍛造で叩くことで炭素鋼と同様の硬さと粘りを生み出していた。
唯一無二のメーカーだったんだそう。
家庭で使う物であれば一生もの。
洋食屋(レストラン・クレソン)オーナーシェフが高橋刃物の包丁に惚れて
作り手の高橋の親父さんの生き様に惚れてしまったことが
綴られていたブログから伝わってくる。
クレソンさん曰く
高橋刃物の包丁に出会わなければ包丁を使う作業は嫌いになっていたかも・・・・
高橋刃物の親父さんは
築地の刃物屋さんの主人に
「お前さんが作った包丁は修理も来ないし
何年も何十年も次の包丁を買いに来ないから儲からない」
「良い包丁は簡単に砥いで刃が付き、どんどん減るのが儲かる良い包丁だぞ」
って昔言われたそうです。
刃物屋にとっては儲けさせてくれないメーカー。
使い手にとっては最高のメーカー。
研ぎ屋の方がいい包丁と褒めていたのが高橋刃物の自社プランド光友の包丁だった。
それはステンレスじゃなくって鋼。
数多の包丁を普段から研いでいる人に分かるほど手間をかけてしっかり鍛造して作ってある包丁。
以前、研がれたかね惣の菜切り包丁に同じ印象を持たれたと書かれていたんだけど
それって作っているのが同じ高橋刃物製作所だからなんじゃないだろうか。
別の研ぎ師の方は自分が気に入って長く使っている包丁が
古い正本の鋼の牛刀だと説明されていた。
古い正本は良かったって。
映像で見る限り、その正本の包丁ももしかして作ったのは・・・
高橋刃物の閉店後に正本の刻印も残されていたからね。
プロの料理人が生き様にまで惚れてしまう作り手の包丁って
いったいどんな包丁なんだろう。
プロ料理人じゃないけれど
料理もときどきパスタを作るくらいなんだけど
いい包丁作りに一生をささげた親父さんの包丁ってどんなだろう。
そんな想いが膨らんでいたタイミングで
未使用の高橋刃物製作所のステンレス包丁を奇跡的に手に入れることが出来ました。
ぼくより長生きするであろう高橋刃物のステンレスの包丁。
大事に研いで自分好みに育てていきたいと思います。
ブログという形で発信して残してくださっていたので高橋刃物製作所を知ることができました。
クレソンさんありがとうございます。
※在りし日の高橋刃物製作所の親父さん
※これはクレソンさんのキャベツの千切り。使われているのはもちろん高橋刃物製作所の極上牛刀なり。
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