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脳外科医がスタートアップへ 爆速成長を促した2つの気づき

こんにちは!Contrea株式会社 執行役員CMOの吉川といいます。

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Contreaは急性期医療機関の外来DXに特化して「患者さん中心の医療」「医師の働き方改革」の双方を実現するためのサービスを開発・提供・運営しているスタートアップです!

僕はそのContreaで執行役員 CMOという役割でやらせてもらってます。
「CMOのMがMarketingMedicalかわからないから、外部に出す時はどちらかきちんと明記しろ」と社内でよく突っつかれてますが、Medicalの方でChief Medical Officerの略です。

主にヘルスケアにおけるドメインエキスパート領域と、Biz領域(Mark・Sales・CS)を管掌しています。
早いもので、医師からヘルスケアスタートアップの世界に未経験で飛び込んで1年と4ヶ月が経ちました。時間経過あるあるですが、長いようで短く、短いようで長い1年4ヶ月でした。

今日はジョインしてから今までの日々で、僕なりに成長のブレイクスルーとなった瞬間やマインドセットを振り返ったことを書いていきます。

この記事はこんな人向けに書いてます

・スタートアップに興味ある医療従事者
・壁にぶち当たっていて、とにかく成長に飢えている人


このnoteを書いているのがジョインして1年ちょうどの時期ではなく、4ヶ月半端にはみ出てるのがこの内容を書くにあたり大きな意味を持っているというか、直近4ヶ月がなければたぶんこんなこと書けてないので、1日1日に学びがあり日を追うごとにその質が高まり続けてるのだなあと思います。

この1年4ヶ月で会社のフェーズ・体制が目まぐるしく変わり、吹き荒れるカオスのなかで、僕の役割は日に日に大きく変わっていきました。

もともとは医療領域のドメイン知識を持つ動画制作マネジメント・ディレクションの責任者として入社したのですが
時が経つにつれて、事業計画を達成するための制作工程の大幅なテコ入れチーム全体の人員補強計画の立案と実行、動画の監修をお願いする医師への依頼、それも各界のKOLと言うべき名だたる教授陣の協力を得るために奔走したり……などなどやっているうちに気づけば全社の事業戦略を立案・実行するのが主なロールとなっていました。

背中を預けられる仲間も増え、縦横無尽に戦えるようになりました。

仲間が増えるとこんないい感じの写真も撮ってもらえます。
代々木公園でよく医師のコスプレをしてます。

僕の内にあり、Contreaに来ることがなければおそらく朽ち果てるまで放置されていたであろう未開拓のスキル群は、限られた期間で開発され拡張していき、このアーリーフェーズのスタートアップを牽引するファクターの1つとなりました。

ジョインした当初、医師辞めたてピチピチの頃はビジネスに活かせるようなスキルが何もなかったので、社内MTGでも外部との面談でもまったくバリューが出せず、焦りと落ち込みでとにかく危機感を抱いたのをよく覚えています。
特にジョイン前後の千葉道場さんとのオフサイトジョイン直後の社内合宿は思い出すと今でも苦々しさを感じます。(地蔵とはまさにこのこと、という置物感でした)

ビジネススキルのようなものを何も携えずにこの世界に飛び込んだのですが、まとまった時間をかけて自らの能力を伸ばす端緒を掴めたことはとても喜ばしいことだと考えています。

では

何が成長のトリガーとなったのか?
ターニングポイントはなんだったのか?
病院で働くこととスタートアップにおけるゲームルールの違いとはなんなのか?

そういったことを考えて言語化してまとめるのがこの記事の目的です。

みなさんよければ最後までお付き合いください。


1.  再現性がないことがゲームシステムであることを理解すること

これは、Contreaのようなアーリーフェーズのスタートアップに特有の環境かもしれませんが、『再現性がないことがゲームシステムの1つである』ことを理解できたことが、成長の土台として大きかったと思います。

どういうことでしょうか?

例えば、成長をドライブするのに一役買うのが「目標設定」ですが、目標設定ひとつ取っても再現性がある環境とない環境では立て方と追い方が大きく変わってきます。

個人の目標設定で考えてみます。

医師として働いている時は、目標設定が非常にしやすかったことを覚えています。
まず若手医師には「専門医」という目標が明確にあり、そこに到達するまでの症例経験、手術手技の習得、それらを達成するため医局から提供される教育プログラム……専門医を取得してからもサブスペ領域にはロールモデルとなる先輩がいて、修練先も用意されています(実力次第ですが)。

つまり医師個人としての能力を高めると言う観点において(診療科チームの生産性をあげるという観点においても)
「なに」(What)を「なぜ」(Why)やるかというところはそこまで深く考える必要はなく、「どう」(How)「やる」(Do)か、すなわちHowとDoのクオリティを最大化するところにフォーカスがあります

それは日常・症例・手術・キャリアパスといった自身の成長に関連する多くの要素に再現性が担保されていたからだと振り返っています。

規定の年数で専門医を取るには「今年の1年間でこの手術をX例みてY例助手に入ればおおよその流れが掴めてZ例やると独り立ちができるだろう。そのためには……」と環境と努力によって再現可能な要素を組み合わせることによって目標達成、ひいては成長を遂げることができます。
積み上げの要素が強いと言えるでしょう。

もちろんこれは医師のキャリアや成長が楽だと言っているのではなく、むしろ数少ない症例や手術経験のチャンスをどう掴むか、掴んだ上でどのように自分の糧にするか、といった実行段階において目標設定とは全く異なる次元の困難があることが前提の話です。

医師をやっていた頃の僕にとって、こういった再現性のある修練をブン回すことはむしろ得意科目でした。

自分が習得すべき手術手技において、緊急でいきなり来てもいいように予め学び、過去の手術ビデオを見て、先輩の助手には積極的に入り、マイクロ手技の練習も欠かさない。
病棟業務も積極的に行うことで、上司からの信頼を得て、仕事を振ってもらえるようにする。
この繰り返しで脳外科医としての実力はどんどん伸びていきました。
(僕だけではなく、医学部生にとっての共通の得意領域かもしれませんが…)

代々木駅前の山水楼はいつも僕たちを暖かく受け入れてくれます。

一方、スタートアップで自らの能力を伸ばすことは全然違うゲームでした。

Contreaに入った直後、自らのアウトプットの弱さに衝撃を受け落胆したことは前述しましたが、とはいえその後、自分がどの能力を伸ばしてどのようなロールでどのようなキャリアを歩んでいくのが最善であるのか、
またどのようにその能力を伸ばしていけばいのかといったことが全く思いつかず、それもまた大きな落胆、そして焦りにつながっていきました。

それもそのはずです。

僕が入った当時のContreaはPre-Aシリーズ調達の直後、やっと小さなオフィスを手に入れた段階で、まだプロダクトも未熟でセールス・マーケ・CSのいずれも確立しておらず、コーポレートなんて誰も手をつけていない状態でした。

そんな環境ではどこを探しても
「この役割に沿ってこの能力を伸ばすべき」
「これを繰り返し行えば成長できる」
なんてものはありません。

毎日のように異なるトラブルと異なる成功があり、進行方向を保証する羅針盤はなく、あるいは殆どアテにならず、それはまるで暗闇の荒野を突き進むが如くです。

times(社内twitter)への投稿
人生で大事なことはジョジョとハンターハンターとのだめカンタービレが教えてくれた

この状況において、医師時代に行っていた「積み上げ型」の成長パターンはまったく意味を成しません。

「まず何をすべきか」すら定まらないのですから、目の前にあることをこなしていっても、それは自分のあるべき、チームのあるべき、会社のあるべきとは容易にズレていってしまいます

ではどうするべきか?

あらゆる物事に再現性がないというルール下でのゲームであることを理解した上で、自らが捉えられる出来る限り大きなイシューから分解していくこと。
これに尽きると思います。

大きなイシューとはなにがしかのロードマップであったり、全社目標であったり、はたまたその上段に明確な質の高いイシューがあるかもしれません。

その際、どれだけ大きなイシューを解像度高く捉えられるかがその時点での自身の能力であり、その領野(界隈で視座と言われてるものでしょうか)を広げることが成長をドライブする因子だと理解しています。

その過程で、後述する<シュギハリ>のテクニックをよく使いました。

そして大きなイシューから小さなサブイシューに分解していくことで、自らの取り組むことが明確になっていきます。

会社の中にある正しさが保証されている数少ない部分見えている部分(例えば「自分はこの領域が得意である」という確信や「少数ではあるが特定領域のユーザーのバーニングニーズは確実に解決できている」など)というのは、分解する際のヨスガや良いメルクマールになります。

例えば……というと事業面の大きな意思決定やゴニョゴニョな内容を含むので詳細は書けないのですが、あるタイミングで会社にとっての最も大きなイシューが「PMFを達成すること」でありました。

当時僕はメディカルチームの責任者として、動画制作周りや外部医師との渉外を担っていたため事業面(特にBiz側)へのタッチが少なかったのですが、PMFのために必要な要素を分解し、現在社内で成し遂げられていることと成し遂げられていないことに分解し、足りない要素を満たすためにいまの組織で誰が担うべきなのか誰が担うことができるのかといった思考の手順で、自分が取り組むべきことが明確になったことがあります。

僕の筆力が弱いせいで、文章に起こしてみるとなんてことはないように感じられてしまう意思決定ですが、不確実性の海の中から、答えがあるものとないものに一つずつ振り分け、解決すべきイシューと自らのアクションを一本の線で紐づけることができた経験は、成長への第一歩だったように思います。

ただ難しいのはここからで、分解して取り組んで終わり、ではなくそこから先も自分がいま取り組んでいることがあっているのか間違っているのか、仮説を持ってモニタリングすることが大事であることを日々実感しています。

このアクションを行えば、このサブイシューが解決されるからこういう成果に結びつくはずだ、それはさらにこの成果に結びつくはずだ……と芋蔓式にイシューが解決されていくはずなのですが
(ex:この施策を行えば〜月には〜件のリードが獲得できているはずだから〜月にはMRRがいくらになっているはずだ……など)
逆にモニタリング項目(KPI)をミスるとそこからガタガタと崩れていきます

当然そのモニタリング項目すらあくまで仮説であり何を正解におくべきか誰もわからないので、、とやっていると思考がグルグル巡ってしまうので
再現性の確立されていない不確実性の中で戦うことは、20時間の開頭手術の助手をやるのとはまた別の次元で大変だなぁと日々実感しています。

まとめ
・アーリーフェーズのスタートアップには物事の再現性などという概念はない
・そのような環境で自分が成長する・会社を成長させるには、大イシューを解像度高く捉え、<シュギハリ>のテクニックを使い、見える部分をヨスガに自分のアクションに出来る部分まで下ろしていくことが大事
・とはいえそこからの仮説検証モニタリングも超大事


2.  「守破離」を超えた「シュギハリ」


なんだか少年漫画のような見出しになってしまいましたが、これはいまの僕がすごく大事にしている考え方で、「守破離」の「守」と「破」の間に「疑」を加えて「守疑破離(シュギハリ)」としたものです。

振り返ってみると「なにかを疑う」「ルールや原則、一般論を疑う」ということがこの1年と4ヶ月で僕にとって大きなアドバンテージをもたらしてくれました。

でも、疑うってなんなんだろう?とはずっと思っていました。

だってなんでもかんでも疑っていたらおよそ仕事にならないし、何も身につけることはできません。
適切な疑いの目とはなんなのか?ということを改めて考えたときに、これは守破離の1プロセスなのだと気づくことができました。

代々木のスタートアップ、代々木公園で写真撮りがち。
代々木駅から代々木公園は実は超遠い。

元々僕は脳外科医だったので、守破離の考え方はすごく身近にありました
新しい手術や手技を学ぶ際に、まずは教科書や先輩の方法を見て学び、その型を乱すことなく守りながら修練し、やがて専門性が生まれると型を破り、達人の領域になると型を離れ新たな型を生み出す、このプロセスを大事にすることで効率よく習熟することができました。

ところがContreaにジョインしてからというもの、原則や一般論を守るフェーズから破るフェーズにいくまでのスパンが短くなりました。

その要因として「疑いの目を向ける」ことを意識的に行っていたことが挙げられます。
しかしながら、それは「守」をおろそかにしたり軽視するものではなく、「守」(=一般論・原則)を学ぶ際に半ば批判的な目線を持つことで、自分(あるいは自社)にあったもの・必要なもの・合わないもの・modifyが必要なものがわかるようになり、早期に型を破ることにつながったということです。

それは言わば、守破離の最中に明示的に「疑」を入れることと認識したので、このたび「守疑破離<シュギハリ>」と命名しました。

例えば、というとまた社内の細かい話になってしまうので割愛しますが、巷で言われている原則をベースにした考え方や施策がワークしなかったとき、アクションの内容や質に目を向けることも必要ですが、その原則そのものを疑うことも大事なプロセスです。

特に「その原則が間違っているのではなく、自社特有の何らかの変数によりmodifyが必要になる」といったケースは想像以上に多く、そこの捉え方を間違うと延々と闇の中を彷徨うことになります。
(知とは関数系なのだ、ということを最近よく考えるのでどこかで記事にまとめます)

times(社内twitter)への投稿。命題を関数と捉えること。

また目標設定そのものにも疑いの目を向けるのも効果的で「一般的にセールスチームの目標は売り上げで語られるべきだから……」といった一般論の上に成り立つ目標設定が、自社フェーズあるいは現状に即したものであるかを疑うところから、直面しているイシューの質が高まったりもします。
(これが「1.再現性がないことがゲームシステムであることを理解する」ことで述べたイシューに対する解像度を高めるために「守疑破離」を使うにつながります)

このnoteを書くことを通して守疑破離について言語化できたことは僕自身にとっても大きく、未知の分野に対する成長と実践の速度が爆上がりするので、これからも意識したいと思います。

まとめ
・守破離は大事だが、守と破の間に意識的に疑を入れることで成長スピードが上がる

3. 結局なにがブレイクスルーだったのか


「再現性がないことがゲームシステムであると理解すること」そして「守疑破離(シュギハリ)」
何がきっかけでこの2つを意識するに至ったのか。
おそらくここを理解することが僕の1年4ヶ月をレビューする上で大切なことでしょう。

あくまでレトロにふりかえって……ですが、明確なブレイクスルーのポイントとして1つ思い当たるものがあります。

それは2022年12月から2023年1月にかけて全4回催された、全社オフサイトです。

事業・組織両面での大きな課題感のもと緊急で開催され、明確な結論が出ずに議論は朝まで続き、MTG時間を全部合わせると24時間分にもなりました。(3営業日分!)

特に組織課題に対してメンバー各々が感じていることを率直にぶつける会は「ぶつけあう会」として今も社内で語り継がれています。

「ぶつけあう会」を含めて計24時間を費やした全4回の全社オフサイトを経て、会社の状況は見違えるように好転しました。

しかしそれだけではなく、これらの会は僕に大きな気づきを与えてくれました。それこそがブレイクスルーのきっかけでした。

会の中では、多くのメンバーが事業における何かに戸惑い、壁に直面しているように感じました。(実際に会社の状況はそうでした)

皆、僕とは違い豊富な社会人経験があるにも関わらず、です。

その様子を見て

なぜだろう?
誰か1人くらい正解のような選択肢を持っていてもいいのに……

とモヤモヤしていたのですが、ある日理解を得ました。
それは事業をドライブさせるために確立された再現要素が少なすぎるため、誰も正解がわからないということです。

再現性が確立された領域を高速回転させるゲームと、
何が正解かもわからない中で、一筋の光に希望を見出して再現的な結果を生み出す仕組みを確立するゲームは全くの別物です。

それに気づいたことが「今は再現性がないところに再現性を生み出すフェーズだ」と認識するに至る第一歩でした。

そして同時に
「誰かが言っている、あるいは巷で言われている正解らしきものが正解ではない可能性(今のContreaの状況にそぐわない可能性)」
というものを強く認識しました。

これこそが「何かを学びながら、同時に疑うこと」すなわち「守疑破離」を意識することになったきっかけでした。
(当初僕はこの考え方をジョージ・オーウェルの「1984年」に出てくる「二重思考」のようなものだと捉えていましたが、「守疑破離」の方がポジティブな感じがして気に入っています)

正解とは結果だけが教えてくれるもので、論理的な思考と広い視野こそが多少の助けにはなるものの、「正解らしきもの」を盲信することはあってはならないのです。

ボロボロになるまでメンバーと議論を重ねることで
僕は「再現性」と「疑うこと」という2つの飛躍のきっかけを掴むことができました。
年末年始を跨いで本当に大変でしたが、そのおかげで今の僕があります。

学会出展の様子。同じMedチームの河瀬さんと。
本当にいつもありがとうございます。

最後に


最後に最近思っていること、今後こうなりたいという2つの像について書きます。

1つ目。
僕は、僕自身の何かに立ち向かうアクションや姿勢がContreaの素晴らしいメンバー全員を鼓舞するものでありたいと考えています。

それは、何も経験・スキルが無かった僕が自らの殻を破って成長し、Contreaの成長を牽引することによって、全社をモチベイトし更なる成長を呼び込む好循環を生むことが期待されるからです。

2つ目。
Contreaには3つのバリューがありますが、
その中で一番好きなのは<Make Domino Wave>という意思決定に関するバリューです。

大きなDomino Waveを起こすべく探索的に行動し、ここぞという場面で逆算的かつ指数関数的な成果をもたらす意思決定の一手を打ち続けることが、この1年4ヶ月を経ての自分のロールであると自覚するに至りました。
驕ることなく、されど自らを見誤ることなく、成長曲線を描き続けたいものです。

おわり。


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