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頭の片隅。

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恋の話をしています。
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#眠れない夜に

「安心は要らないんだよね」と、君は言った。

「安心は要らないんだよね」と、君は言った。

もう半年も前、五月末。当時付き合っていた恋人と別れた。聞かれるたびに話してはいるものの、半年も経つと顔やら声やら香りやら何から何まで記憶から消えていく。

そんななか、ふと、SAKANAMONの「猫の尻尾」の聴いた瞬間に思い出してしまった。初めて聴いた曲で歌詞をがっつり聴いていたわけではなく、メロディだけだったのだが、それでも思い出してしまった。

彼との別れは話すと長くなるけれど、簡単にいうと、

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今日も、言葉を探してる。

今日も、言葉を探してる。

人に会う。何十億のうちのたった一人。
ただそれだけなのに、大勢の前でスピーチをするよりも、数億円の案件のプレゼンをするよりも緊張する。
嫌な緊張じゃない、騒がしい心臓の音が少し愛しく感じる。

初めて会うとき、二回目に会うとき、三回目に会うとき…それぞれにそれぞれの緊張があって、胸の高鳴りがある。そして、その高鳴りを感じる相手はそんなに多くない。

時間をかけて服を選んで、整えた肌にメイクを乗せて

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冬はやがて、

冬はやがて、

「12月7日何してるん」

5年近く会ってない相手からのLINEは、なんだかつい最近会った友人のようで、通知を見た瞬間に身体の内側で何かが飛び跳ねたような感覚になった。

「今のところはお仕事の予定」
「よるは?」

飲み会にそんなに行くこともない私、夜の時間はだいたい空いていて、それを伝えると「なら、空けといて」だけ言われた。約5年ぶりの再会の約束は思っていたより淡々としていた。

この約5年間

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春の前夜に、

春の前夜に、

これが最後だと思いながら貴方のもとへ行く。これが最後だと分かりながら、貴方と最後のお別れができるなんて なんと幸せなんだろうと頭では思ってるし、声にも出して言い聞かせてみせるのに頬がどんどん濡れて、そこに夜風が当たってつめたく感じた。

幸せだなんてそんなのどれだけ言い聞かせてみせてもだめで、やっぱり貴方との最後だと思うとそれは何よりも寂しい。悲しい。貴方に話したいと思うこと、知って欲しいと思うこ

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どうか穏やかに、

どうか穏やかに、

「飲まなくていいからお散歩しない?」
普段なら絶対に断る時間、21時30分。お風呂も歯磨きも終えたこんな時間に外に出るなんてどうかしてると思った、明日も仕事だし。けど、「お散歩しない?」という言葉だけでなんかいいなと思ってしまって準備を急いでして家を飛び出た21時54分。車窓から見えた夜がなんだか綺麗だった。

初めて会った君はなんだか黒くて、そういう服も着るんだねと少し思ったりした。そして、散歩

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