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花の窟神社 巨岩崩落

 漫画家のとり・みきさんのツイートで、三重県にある花の窟神社の御神体の岩が崩落したことを知りました。

 崩落した岩は3つで、大きなものは横1.5m、高さ1mくらいの大きさがあり、30m程の高さから落下した[1][2]ようです。
 この巨岩は花の窟神社の御神体で、高さが45mもあり、伊邪那美命(イザナミノミコト、以下イザナミ)の被葬地だとされています。

 イザナミは、夫の伊邪那岐命(イザナギノミコト、以下イザナギ)とともに神々を産み出していきますが、軻遇突智(カグツチ、火の神)を産んだ際に火傷を負い、亡くなってしまいます。
 その後、神話はイザナギがイザナミに会いに行く話、イザナギとの離縁の話、人の生死にまつわる話を挟んで、イザナミは黄泉の国の神として黄泉津大神(ヨモツオオカミ)と呼ばれると展開します。
 ヨモツオオカミと呼ばれることの解釈は様々ある[3]ようですが、少なくともイザナギが死に関する特性を持つといえるでしょう。

個人的には、イザナギがイザナミに会いに行く一連のエピソードは、殯(もがり)のモチーフと考えています。

 イザナギの被葬地は、古事記では出雲と伯耆の境にある比婆山に葬られたとあり、日本書紀には紀伊の熊野に葬られたとあります。
 つまり、花の窟神社の御神体であるこの巨岩がイザナミの墓所であり、黄泉の国との境界というわけです。

 その、黄泉の神の墓所の一部が、原因不明で崩落したとなると、先のとりさんのツイートのとおり、「えらいこと」に思えませんか。
 黄泉の国イザナミのご乱心!?何かの凶兆でしょうか!?

 ツイート主の漫画家のとり・みきさんは個人的に好きな漫画家で、コミカルなものから歴史ものまで、長短編問わず楽しめる作品を多く作られています。中でも、「件(くだん)」はゾクゾクするストーリーで、民話・伝承や歴史の好きな方には読んで欲しい作品です。
 最近は漫画家のヤマザキマリさんと「プリニウス」を共作されています。こっちも毎度新刊が出るのが待ち遠しい。

 古代史や神話にも造詣が深く、長期休載(?)になっている「石神伝説」にも花の窟が登場します。とり・みきさんはその辺りも含めて、冒頭の「えらいこと」とツイートされんだと思い、ドキッとしました。
 連載が再開するのを首を長くして待ち望んでいます。

 さておき。この巨岩を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」は、2004年(平成16年)7月に世界遺産に登録されていますので、その意味でも岩の崩落は「えらいこと」です。

 ニュース[2]によると、1ヶ月程前にも落石があり、御神体から離れて参拝するよう呼びかけているとのことです。けが人もなく、何よりでした。

 素人ではっきりしませんが、この岩は流紋岩(花崗岩?)でしょうか?長年海や風にさらされて風化しているんでしょうか。
 今後の調査によって崩落原因が分かるといいですね。

参考文献

[1] 日テレNEWS24. https://www.news24.jp/articles/2021/09/09/07937092.html, (cited 2021.9.11)
[2] メーテレ. https://www.nagoyatv.com/news/?id=008809, (cited 2021.9.11)
[3] 國學院大學 古事記学センター. 神名データベース. http://kojiki.kokugakuin.ac.jp/shinmei/yomotsuokami/, (cited 2021.9.12)

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