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隣の席のあの子

二度寝がすき。
三度寝もすき。
四度寝も、五度寝も…。

ほどよく記憶に残り、感情の残り香のする、あわい夢をみられるから。




このあいだもそんな心地よい夢をみた。
まさに青春の1ページ。
みじかい夢物語だった。


高校か、大学か。
教室のような空間に、前後左右に並ぶ机。

僕は窓側で、いちばん後ろの席にいる。

隣の席には知らない女の子。
(現実には知らない、夢の中では知っている?らしい)
あの子の顔は思い出せない。
髪は黒くて、重めのミディアムくらいの、あの子。


僕とあの子は楽しそうに何か話している。
なんの話なのか、まったく思い出せない。
けど、あの子はとてもいい顔で笑っていて、僕はそれに目を向けるのを恥ずかしがっていた。
顔は覚えていないのに、そのシーンは覚えている。感情を覚えている。


楽しそうに話すあの子。
無邪気に笑うあの子。
ときどき肩がぶつかるあの子。
右の席のあの子。

僕はドキドキしていた。


半分だけ現実にいる自分の思考がこう言う。
「久しぶりだなーこの感じ」
あの学生時代にはたしかにあった、あの時しか得られない、あの淡い感情を、僕は思い出していた。


心地よく心臓が跳ねる時間はとても短く、ほんの少し長かった。
どうやらおしゃべりタイムは終わりらしい。

あの子が言う。
「最後に写真とろ!」

肩をよせるあの子とiPhoneでセルフィーを一枚。


パシャ。




確かに撮ったあのツーショットは、枕元のiPhoneの中には残っていなかった。


もう会えない、だれも知らないあの子とのあわい青春の物語。
あの切なさも、あの幼い恋心も、忘れないように書き留める。


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