見出し画像

“組織に効く”全社オフサイトミーティングに大切な3つの観点

こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。

RELATIONSでは全社オフサイトミーティング「Harvest Meetup」を月1回実施しており、組織のバイオリズムを整えるために欠かせない施策となっています。しかし、始めからオフサイトミーティングの運用がうまく機能していたわけではありません。2021年頃から現在まで、都度組織の状態に合わせて新しい試みをしながら改良を重ねています。
ここ最近は比較的うまく機能している感覚があり、振り返ってみると”組織に効く全社オフサイトミーティング”にするためにはいくつかの大切なポイントがあるのではないかと感じています。
今回はその気付きを3つの観点に分けてお話します。

観点1: 場(ロール)のソースは明確か?

全社オフサイトミーティングをいまのような形でつくり始めたのは、2020〜2021年にかけて行ったRE:STARTプロジェクトの頃でした。今まで育ててきたメディア事業とマネジメント支援事業を譲渡をするという意志決定をしたことで、50名近くいた社員のうち20名ほどが退職し、組織としても大きな混乱と変革があった時期です。
パーパスやストラテジーを策定し直すことで新しい方向に舵を切り、社員と対話を重ねながら組織の文脈を整えるプロジェクトを4ヶ月ほどかけて丁寧に行っていきました。

▼RE:STARTプロジェクトの全容はこちらの記事をご覧ください。

組織の土台に必要なことは、それぞれが抱えるモヤモヤが循環する”素直な関係”づくりであると確信があったため、その一環として全社オフサイトミーティングの在り方も見直すことに。RE:STARTで社員たちと幾度も対話を重ねてきたプロセスが功を奏したのか、これまでには表に出てこなかった声や、多様なアジェンダが活発に出てきて全社の場で扱われるようになっていきました。一方、アジェンダの質はさまざまで、なかには「これはわざわざ全社会議で扱うべきなのか?」というものが混在することに対して自分の中でモヤモヤを抱くように。
その後、オフサイトミーティングを企画・運営するロールを、私も含めたメンバー4人で立ち上げ、「質の高い本音と情報が循環する場」をパーパスに掲げ毎回運営方法に改良を重ねていきましたが、まだなにか場が停滞しているような、何かが不足しているような感覚がありました---。

変化が起きたタイミングは2023年9月に山梨県の清泉寮で行った全社合宿でした。

その全社合宿の場で出てきた「本音」と「愛」という文脈。それを合宿の場だけで途切れさせてしまうのではなく、”日常にもしっかりとつなげたい”という明確なロールの意志が立ち上がりました。
そしてロールメンバーで話し合い再策定して掲げたのが、『本音と愛が循環し、一歩踏み出す覚悟が生まれる場』というパーパスです。

パーパスの再策定から始まり、ロールがソースとなって場をしっかりとホールドするエネルギーは強化されていきました。場の選定にこだわりをもったり、企画を自律的に各自が行ったりすることもちろん、当日のファシリテーターの役割までロールメンバー4名で担い、意識的に自分たちがその場に立つように。半年以上経った現在も、推進力高く、上手く機能している感覚があります。

この経験を通して感じるのは、場(ロール)のソースが明確であり、自覚的であるということの重要さです。どのようなプロジェクトにも言えることではありますが、オフサイトミーティングという大勢の感情や意思が交わる場においては、特に大切なことなのだと思います。

観点2: アジェンダを出した本人の覚悟や熱量を問えているか?

全社員の貴重な時間を使って行うオフサイトミーティングでは、本当に話したいテーマがきちんと扱われることが何よりも重要だと思っています。そのためにも、扱いたいアジェンダを出した本人の覚悟や熱量がどの程度のものなのかを問うことが大切だと考えています。

私たちのオフサイトミーティングの冒頭では、事前に募集した全アジェンダについて、なぜそれを共有したいのか・対話したいのかという想いを、アジェンダを出した本人が全員の前でシェアします。その後、関心の高いものを2つほど選んで各自に挙手してもらい、場全体がいま何に関心を持っているのかをとらえていきます。
しかし、多数決で決めるのではなく、最終的にそのアジェンダを扱うのか、却下するのかどうかは、提案した本人に意思決定してもらう仕組みにしています。(※却下した場合、OST(オープン・スペース・テクノロジーの略)など少人数の場で扱うアジェンダに回したり、Slack上で扱うことにしたり、そもそも扱うことを辞退するという選択肢などがあります。)

▼OST(オープン・スペース・テクノロジー)の詳細についてはHUMAN VALUEさんの記事をご参照ください。

「このタイミングで組織全体が話したがっているな」と感じるテーマについて本気で意見や想いをぶつけあい、”知的コンバット”する場であってほしいという想いが組織のベースの考えにはあるため、全社的に関心度の高いアジェンダを優先して扱うことが自然と多くなります。

しかし、一部の人しか関心は無いけれども、単に全社的に認知されていないだけで、実は会社にとって非常に重要なアジェンダが隠れている可能性もあると思っています。そのため、アジェンダを出した本人が「このアジェンダは全社で絶対扱うべきだ!」と言い切れるかどうかが肝になります。もしそう言い切れるのであれば、たとえ関心を持った人が他にいなくとも、それは全員で聞く価値のあるものだと思うのです。

観点3: 五感を共有できているか?

社員全員で五感を共有し合うということは、組織の信頼関係をつくる上で大切にしたい要素です。

ゴリラの研究などをされている霊長類研究者で、京都大学総長でもある山極さんは、「人間の五感はオンラインだけでは信頼しないようにできている」と言います。

言葉ができる前は、人間も五感を通じて身体的につながっていたわけですよ。五感のなかで、一番リアリティをもたらすのは視覚と聴覚です。「見る」「聞く」は共有できる感覚ですから。
触覚や嗅覚、味覚は100%共有することはできません。〜中略〜
ところがおもしろいことに、この触覚や嗅覚、味覚という「共有できないはずの感覚」が、信頼関係をつくる上でもっとも大事なものなんです。
〜中略〜
チームワークを強める、つまり共感を向ける相手をつくるには、視覚や聴覚ではなく、嗅覚や味覚、触覚をつかって信頼をかたちづくる必要があります。
〜中略〜
人間は言葉や文字をつくり、現代ではインターネットやスマートフォンなど、身体は離れていても脳でつながる装置をたくさんつくってしまった。
だから、安易に「つながった」と錯覚するけれど、実際には信頼関係は担保できているわけではないという状況が生まれています。

サイボウズ式『「チームワークを発揮できるのは、全動物の中で人間だけなんです」──霊長類の第一人者・山極京大総長にチームの起源について聞いてみた』

RELATIONSは通常フルリモートワークのため、社員同士が直接顔を合わせる機会が少ない状況です。すると、リモートワークの会議中は常に視覚や聴覚を共有しているけれども、嗅覚・味覚・触覚は全く共有できていないということになります。見せかけではない本質的な信頼を築くためにも、同じ空間に一日中一緒にいるということには大きな意味があると思っています。

同時に、無意識のなかであらゆる身体情報の交換することで、お互いのコンディションを認知し合うという意義もあります。たとえ直接言葉を交わさなくとも、近くにいるだけで「この人ちょっと元気なさそうだな」「疲れてるな」「お、調子良さそうだな」という仲間の状態を知ることができる。そうした認知がベースにあると、自然と助け合いや協働が生まれやすくなっていくのだと思います。

また、味覚や嗅覚の話で言うと、コンサルタントや営業メンバーは全国各地の顧客先へ出向くことが多いため、出張先の地域のお菓子を買ってきてもらうようにロールから依頼をしています。彼らがどのような想いでお菓子を買ってきてくれたかなど、それぞれのナラティブをシェアしてもらいながら触覚と味覚を共有をする。その行為自体が一つの信頼感を増す上で価値のあることなのではないかと思います。そういったものの積み重ねがチームワークの基盤になっていきます。

これからの課題は「日常で判断していく力」

ハレの日ケの日のように、いまRELATIONSの全社オフサイトミーティングはある意味”非日常”の場として機能しているように感じます。一方で、非日常として機能しはじめているからこそ、知的コンバットや意思決定が非日常でしか進まないような構造に陥りがちになっているような気がしています。

「この方針で事業を進めます!」「この案件は進めるべきなのか疑問が湧いています。」「営業案件が足りないので案件をください!」など、本音の交換や要求、率直なフィードバックがいかに日常レイヤーの会話でできるかどうか。そういったコミュニケーションが増えていくことを目指したいと考えています。
(これはRELATIONSの経営をしてきた中で、私自身が、いつしか仲間たちに本当は伝えたいことを伝えられなくなっていた苦しい過去があるからこそ、強く抱いている想いでもあります。経営者として手放す怖さや、ぶつかり合うことで「社員が辞めたらどうしよう」という恐れが一般的には強く出る場面かもしれませんが、いまの私はむしろ、経営者として社内の多様な声を受け取りつづけることが”価値”であると捉えています。)
そのようなコミュニケーションが日常で積み重なった結果、どうしても解決できなくてスタックした”本当に扱われるべきアジェンダ”が全社オフサイトミーティングで扱われるというサイクルが回ることが健全であると考えています。

全社オフサイトミーティングの在るべき姿は、組織の構造や規模、働き方などさまざまな要素によって最適解が異なると思います。しかし限られたリソースのなかでインパクトのある時間にしたいという想いは皆同じだと思っています。ぜひRELATIONSで大切にしている3つのポイントが何かしらのヒントになれば幸いです。

今日もええ一日にしていきましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?