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心理的安全性

チームでプロジェクトに臨むとき大切にしたいことを、自戒の気持ちをこめてまとめます。Googleはプロジェクトアリストテレスにおいて、効果的チームの条件は何かという問いに答えるため180のチームを調査しました。

効果的であるかどうかの評価基準としては、業績などの定量的特性のほか、チームメンバーからの聞き取り調査や、マネージャーの評価などの定性的特性も加えて多角的に調べています。そうしてわかったことは、チームのパフォーマンスに大きな寄与をしているのが、「誰がチームのメンバーか」ではなく、「どのようにチームが協力しているか」だった。つまりチームメンバー個々人の能力ではなく、人間関係の在り方が決定的だったのです。

重要な要素:心理的安全性

最もパフォーマンスに寄与していた心理的安全性とは、

Psychological safety refers to an individual’s perception of the consequences of taking an interpersonal risk or a belief that a team is safe for risk taking in the face of being seen as ignorant, incompetent, negative, or disruptive.

と定義されています。つまり言動によって自分が傷ついたり、後悔したりする心配がないという心理的状態を指します。思ったことを率直に話しやすい、建設的な議論が生まれやすい雰囲気ともいえそうです。また他の要因としてメンバー同士の信頼や、プロジェクトのビジョン共有などを挙げています。面白いのは、逆にあまりチームのパフォーマンスに寄与していない要因として、チームメンバーの働き場所が挙げられていることです。良いチームは場所を選ばないし、完全オンラインでも仕事ができる。またチーム規模が大きすぎると生産性が低下することも指摘しています。現在コロナの影響で在宅勤務が拡大していますが、そのときに使うオンライン会議ツールやアプリなどでも、このような心理的安全性が仕事の能率に大きく影響します。

心理的安全性を提唱したエドモンド氏はそれを高める三つの方法のひとつとして、仕事を業務の遂行ととらえるのではなく学びの場としてとらえることをすすめています。

スクラム

これと関連して、トヨタ生産方式を生みの親とするアジャイル開発の一種、スクラムでも同様の姿勢が求められます。スクラムも日本の製造業に起源をもつ高品質かつ迅速な開発のフレイムワークであり、一橋大の野中氏によって提唱されました。

今度読もうと思っている解説書:

モブプログラミング

スクラムのなかにモブプログラミングをとりこむという試みもなされています。これはプログラミングをチーム全員で画面共有しながら進めていくもの。在宅でも実践できる形態であり、しかも最初は知識の差があったチームがこれによって均一化していき、チームに一体感が出てきます。またプログラミングは黙々と一人でやるもの、というイメージを覆すほどにわいわいと楽しい。

これもチームの心理的安全性に貢献しているのではと思います。プログラミングの知識が乏しいメンバーを放っておいたら、当然そのメンバーの心理的安全性は低下するばかりだし、仕事の意義も見出しにくい。そこにモブプログラミングを適用すれば、チーム全体の理解を確かめながら進めるため皆が意見しやすいし、自分なりの貢献をしようと思えます。確かに最初は仕事のスピードが落ちるかもしれません。が、同じチームで長い間プロジェクトに取り組むとか、そもそも複雑な問題を解決しようとしているときは、チームの団結力が最終的なアウトプットに大きく差を生むということだと思います。こういった手法は実践してみないとそのメリット・デメリットはわからないもの。この機会に吸収できることはしなければ。実際の様子:

このテーマを語るときよく引き合いに出されるアリストテレスの言葉を最後に引用しておきます。

全体は部分の総和に勝る。

この主張は私の専門である複雑系でも非常に重要です。構成要素へ還元しても予想できない全体としての自己組織的ふるまいがある。心理的安全性は、人間の成すチームが全体として自己組織し、力を発揮するためのダイナミクスを生むのかもしれません。


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