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素敵なクリエイターさんたちのノートをまとめています。
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#創作

原稿を読み返す

去年、書いた原稿を読み返してみた。数ヵ月ぶりである。 推敲ではなくて、ただ読む。少し離れていたから、作者としてではなく、読者を意識して目を通す。 そんなに枚数は多くないのに、時間がかかった。普段、原稿を読んでもらうということはその人の大事な時間を使っていただいているのだなと改めて思う。 結果、いまいちだなと思った。めちゃくちゃ悪くはないかもしれない。でも読後感がよくない。ラストが弱いし、ところどころ弱い。そしてどうしてかはわからないけど、読み進めにくい。はよ終わらんかなと自分

【散文】旅立ち#四節の輪舞曲

Kindleで出版している本を記事でも出しています。 ポートフォリオ的な目的です。 Kindle Unlimitedなら0円で読めますので、そちらをオススメします。  本書の宣伝とあとがきはこちらの記事で紹介しております。 誰にも読まれないのは記事として寂しいので、2日くらいは無料にしております。その後シレっと有料になりますのでご注意ください。 空気の冷たい午前4時 騒がしいほど静寂な世界で目が覚める 私は、軽く髪を梳き 着替え 顔を洗う 目の前にある左右対称

手紙小品「ひとかけらの勇気 手のひらに花」

拝啓 今年最初のうぐいすは、雨の山の中で出会いました。いえ、姿なんて見えません、声だけ、ホーホケキョって、上手だったんですよ。 慣れたものですからね、何処へだって一人で行きます。蕎麦屋の暖簾も潜れますし、砂浜だって歩きます。何ヘクタールにも及ぶ春の花畑だって、平気に歩いて見せますとも。楽しいですよ、それはそれでね。 だけど、本当にいつも思います。勿体ないなあ~って。こんなに素敵な景色をどうして一人で見ただろうって、いつも思うんです。一緒だったらよかったなあって、いつも思っ

SNSに疲れたくせに、つぶやきじみたものを書き残したい夜だ

自分のことを安心して話していいのだと、思える場所は多くない。相手を気持ちよくするのが会話のコツだと、就活のとき教わった。目を見る、相槌を打つ、続きを促す。よく笑い、よく食べ、決して怒らない。そうしていれば人は自分を嫌わない。自分はここにいてもいい。そうしないと生きていけない。 でもあるとき、ぐしゃんと崩れた。運ばれる前に崩れたホールケーキ。返信する前に充電が切れたスマートフォン。くるしい言葉ばかり並ぶSNS。ぐしゃん。ぐしゃん。ぐしゃん。中学校が廃校になった。色褪せていく青

【短編小説】余命幾許#夢の訳し方を知らない僕等

文学フリマで出版されている短編集に寄稿したお話です。 ポートフォリオ的な目的で記事でもアップしています。 できれば本の形で手に取っていただきたいですが、必ずしもそうはならないと思うので。 Kindle Unlimitedでも読めるようなので、できればこちらからどうぞ。 『夢の訳し方を知らない僕等』 その他の作品の紹介の記事はこちらです。 (読了目安7分/約5,200字)

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【掌編小説】卒業の#シロクマ文芸部

(読了目安3分/約1800字+α)  卒業の宣言を聴いて、もう三年になる。アスファルトの合間から力強く葉を広げたタンポポを見つけ、私は彼のことを考える。北海道で正社員として就職したのだ。連絡は控えているからどうしているかはわからない。せめて彼のそばに共通の友達がいれば良いのに、と思い、軽く首を振った。  昴晴とは、ものごころついた時から一緒にいた。隣の家に住んでいて、親同士が友達だったため、ほとんど家族のようにお互いの家を行ったり来たりして過ごしていた。  私の3つ年下で

【ネットショップオープン告知・お知らせ】Atelier Amulet of Butterfly Will へ、ようこそ。

みなさん、こんばんは。禧螺です。 今日もnoteをご覧いただき、ありがとうございます。 本日は急ですが、そのまま記事本編に入って参ります。 タイトルにあります通り、 「【ネットショップオープン告知・お知らせ】」 です。 💜 ご紹介させていただくのは、実装できました禧螺のハンドメイドショップ 「Atelier Amulet of Butterfly Will」の「minne店」と「STORES本店」についてです。 同じアイテムをご購入いただけるのですが、様相と

【ショートショート】私の彼は

「ええっと、砂糖に、カカオバター、ミルクパウダー、カカオリキュール、レシチン、バニラと。バランスはどうしようかな。砂糖の値を増やしすぎないように気を付けないと」  教室の隅でデバイスをいじりながらアカリがなにやら呟いている。 「なにさっきからブツブツ呪文みたいに唱えてるの」 「んー? なにってバレンタインのチョコを作ってるの」 「作ってる? レシピを検索しているんじゃなくて?」  アカリがしているのはさっきからデバイスをいじっているだけで、チョコを刻む包丁も湯煎する鍋もここに

【掌編小説】チョコレート#シロクマ文芸部

(読了目安4分/約2900字+α)  チョコレート。チョコレート。チョコレート。  ピンク色に飾られた会場には、右も左もカラフルな包装をされたチョコレートが並んでいる。プレゼントの山でつくられた迷路を、所狭しと女たちが歩き回る。艶々と輝く髪を結い、口紅と頬をピンクに色付け、甲高い声できゃあきゃあと笑う。  私は思わず眉をしかめ、通路をふさぐようにして話している女たちに背をぶつけてすり抜ける。ツンとした香水か、ヘアオイルの匂いがする。  入口で手に取った正方形の箱を二つ

ハートにブラウンシュガー12

「オレが悪かった」 ファミリーレストランのテーブルに座ると、クマこと茶倉満男はそう言って頭を下げた。 「何でオマエが謝るんだよ」  佐藤三郎ことサブが不思議な顔でクマを見た。  ヴォーカルの田中ティナも未だ呆然とした顔で、二人の方へ顔を向けた。 「何が言いたいの?」  ちなみにもう一人のメンバーレイこと真柴玲は音楽プロデューサーのKに話があると引き止められてまだAレコード本社に居残ったままだ。  ブラウンシュガーの面々はAレコードから契約を見送ると宣言されたばかりであった。し

それからのこと

「どうだい? 未来の自分に逢った気分は」 カエル君はそう言ったが、まさか、それはない。 「あの人は偉大な作家だよ。ボクとは違う」 「どうしてそう思う?」 「昼間あの人の作品をいくつか読んだよ。あんな文章、とてもじゃないが、ボクには書けない」  そう言うとカエル君はまたしてもフフフと意味あり気な含み笑いをした。 「それに名前が違うよ。なんだかとても難しそうな名前だった」 「……臥龍覆水」 「えっ?」 「老作家の名前だよ。がりゅうふくすい先生だ」 「は? 読み方さえ分からなかった

ハートにブラウンシュガー 11

 その日、ブラウンシュガーの面々は都内にあるAレコード所有のスタジオを借りて最後のオリジナル曲の録音をしていた。  プロデューサーの松尾から課せられていたオリジナル曲春の分十曲(秋の十曲を足すと計二十曲)もこれで無事完了だった。  一方、春の新人コンサートツアーも今週末が最終日となり、昨年の秋から始まったこのライブツアーもいよいよ終わりを迎えていた。 「さて、今のテイクでOKということなら、少しみんなで話しておきたいんだが、いいか?」  リーダーのクマこと茶倉満男はドラムの

【散文】雪化粧#シロクマ文芸部

雪化粧は 刹那にして 四方へ向く百合のような くちびるの先々から 吐息は空へ 夜は白く染まりゆく 地を這う八段腹も 飛び疲れて休む肩甲骨も 立ち止まる三段尻も 深く 静かに どうか 今はおやすみ 白銀の地に 足跡をつける その日まで シロクマ文芸部の企画応募です。 いつも遊んでくれていたカピバラさん=いまえだななこ様がnoteを卒業されるらしいです。 今までの感謝とエールを込めて書こうと思ったら、カピバラさんに引っ張られてなんかちょっと変なの出てきた。最

【掌編小説】新しい#シロクマ文芸部

(読了目安2分/約1300字+α)  新しいグラス。最低でも二、三千円はするのだろう。細かなカッティングが入った色違いの綺麗なグラスがキッチンの洗い場に置かれていた。はやく洗わないと茶渋がついてしまう。ついてしまえ。  私は食器棚から以前、百均で購入したつるりとしたデザインのグラスを二つ取り出すと、冷蔵庫の麦茶を注ぎ、ダイニングテーブルへと持って行く。  彼は手を動かす様子もなく、ただ私の持ってきた離婚届を見つめていた。 「彼女はもう一緒に住んでるの?」 「……いや