記憶のなかの、ふるさとの風景
吸い込まれるような広い空。季節ごとに違う表情を見せる一面の田んぼ。
「ふるさとの風景」という題を見て思い浮かべたのは、そういう、なつかしく、慕わしいふるさとの面影だ。
でも、わたしがこれから書こうとしているのは、ある日消えてしまった町のことだ。そういう「ふるさと」があることも書いておきたい。
わたしは、東北の地方都市で育った。生まれたのは両親の出身地の三陸海岸で、親の転勤でその都市へ移り住んだ。引っ越したのがまだ小さかったから、海沿いに住んでいたころの記憶はほとんどない。