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松の木よ菰巻き加減いかがかな

季語:菰巻き(仲冬)

まつのきよこもまきかげんいかがかな

菰巻きの目的

菰巻き(藪巻きともいう)は、幹に藁で編んだむしろを巻きつける、江戸時代から続く松の冬支度です。防寒対策に見えますが、松の木の防寒対策ではありません、松の木に巣食う害虫のための防寒対策です。

寒くなると害虫たちは、地面に降りて枯葉や土の中で冬を越します。地上に向かう途中に菰を巻きつけ、その中で虫に越冬させます。暖かくなり、虫たちが活動を始める前に、菰を外し燃やしてしまうことで害虫をまとめて駆除することが本来の目的でした。

目的からずれている昨今の菰巻き

ところが、菰の中で越冬するのは害虫だけではありません。害虫の天敵となる益虫も一緒に菰の中で越冬してしまいます。そのため害虫も益虫もまとめて燃やしてしまうことになります。

それでもまだ生き残る益虫の方が多ければ、やる意味があります。しかし、近年の研究によると、益虫の方が多く死んでしまっていることがわかりました。松のためにと考案した方法が、かえって逆効果になってしまっているのです。

200〜300年前の江戸時代には、効果的な害虫駆除方法だったのかもしれません。しかし、近代以降の環境変化や多くの外来種の登場によって、菰巻きは元々の目的を失ってしまいました

松の木は全国の庭園や街道で見ることができます。研究結果を受けて、菰巻きをやめてしまった庭園もたくさんあります。一方で、伝統行事として菰巻きを続けている庭園もあります

伝統を重視する以外に、造園業者への配慮なんて理由ももしかしたらあるのかもしれません。広島では縮景園という庭園での菰巻きが、風物詩としてニュースにも取り上げられています。

伝統行事や風物詩がなくなるのは残念なことですが、意味のないことを続けるのもよいこととは思えません。個人的にはムダなことはやめよう派なのですが、理詰めだけでは片付けられない難問だと思います。

新しい知恵や技術をプラスして、伝統をより優れた形で継承していくことができればいいですね。

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