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勉強しなさいって言わなくても勉強する子にどうやって育てたの?(2)

●寝る子は育つ

「小学生のころ、『ドラえもん』を見ていて、のび太が居眠りする意味がずっとわからなかったわ~」つい先日、娘がこう言いました。これを聞いたとき、私は「居眠りする意味って、なにそれ?」と思いました。娘が言っていることの意味がわからなかったのです。

子どもたちが幼いころ、就寝時間は夜8時でした。学年が上がるにつれて少しずつ遅くなりましたが、娘が小学校を卒業する頃でも、夜9時には寝ていました。娘が中学1~2年生、息子が小学校高学年でも夜10時。娘が初めて「学校で眠い」という経験をしたのは中学3年生の時だそうで、そのとき初めて、のび太が居眠りをする意味がわかったそうです。それまで一度も、学校で居眠りしてしまうような眠気を感じたことがなかったのです。

私は、子どもたちの睡眠時間を十分に確保することを重視していましたが、のび太が居眠りする意味がわからないほど、うちの子どもたちは十分な睡眠を取っていたのだということを、つい最近知りました。息子は、姉のこの発言の意味をすぐに理解していましたので、小学生で9時間、中学生でも8時間程度の睡眠時間があれば、決して学校で眠くならないということになります。

私は、子育て本を読みあさる母親でもありませんでしたし、子どもの人生に過度の期待を寄せる母親でもありませんでした。子どもの人生は子どものもの、同じように私にも私の人生がある、そう思っていました。

私自身、子どものころに塾に通ったことがなかったのですが、学校の勉強でとくに困ったこともなく、普通に公立高校に進学して、私立大学に行って、卒業後は銀行に就職しました。普通に自分のようにちゃんと育ってくれればよかったので、子どもを「どうしたい」などという願望もなく、そもそも親が子どもをどうにかするものではないと思っていました。ただ、子ども自身が自分の好きなことを見つけて一生懸命過ごし、できればその好きなことが将来の仕事に繋がってくれればいいと思っていました。

そんな中で、子育てにあたって最初に「これだけは」と決めていたのは、「子どもは夜ぐっすり寝かせる」ということでした。

子育てについて人から聞かれたとき、私は一番にこのことを言うのですが、皆さん決まって「なんだ、それだけ?」と言います。どうして子どもの睡眠を軽く見るのでしょうか。子どもが、毎日の起きている時間の中で、全力で集中して、日々出会う新しい物事に興味を持って取り組んでいくには、「眠い」ことは大敵です。

眠い中で、物事への興味や関心など芽生えるはずがありません。学校でも同じことです。眠い中で聞く授業なんて、興味がわくはずもなく、興味を持てなかった勉強は、ただの「面倒なこと」になり、いつしか「しかたなくやること」になってしまうのではないでしょうか。

学校での毎日の授業をしっかり聞いていれば、何も特別なことなどしなくても、少なくとも小学生のうちは「勉強のできない子」には決してなりません。勉強のできない子になることの方が難しいのではないかと思います。

先日、22時以降に就寝する子どもの割合が増えているというニュースを目にしました。小学生どころか、1歳~3歳児ですら22時以降に就寝するケースが増えているそうです。どうしてそんなことになるのか。簡単です。そのほうが、親が楽なのです。自分たちが寝る時間まで子どもを普通に遊ばせておいて、疲れ切って寝てしまうまで放っておくほうが、手間がかからないのです。

早く寝る子どもは、勝手に早く寝てくれるわけではありません。早く寝るという習慣を身につけるまでに、親が相当の労力と時間を費やして、早寝の習慣を身につけさせているのです。子どもの早寝の習慣を獲得するために労力を費やしたことのない人にはわからないと思うので、少し詳しく説明しますが、寝る時間から逆算して夕方以降のスケジュールを考えてみたいと思います。

20時就寝ということは、19時にはお風呂に入らなければなりません。そのためには、18時には夕食を食べ始めなければなりません。ということは、遅くとも17時には夕食を作り始めなければなりません。仮にこのスケジュールをこなせたとしても、20時に布団に入ったら、子どもが勝手に寝てくれるはずはありません。

自分は、まだまだ家事その他の用事があっても、いったん一緒に布団に入らなければなりません。そして、布団に入ってからの何か楽しいことがなければ、子どものまだ遊びたい気持ちを押さえて、布団に誘導することはなかなか困難なことです。そこで、「布団に入れば絵本を読んでもらえる」ということを、毎日の当たり前の楽しい行事にするべく、来る日も来る日も繰り返し親が頑張るわけです。

子どもの気の済むまで絵本を読んでいたら、それこそ自分のことは何もできなくなるので、1冊とか2冊とか決めて、それを読み終えたら電気を消して、子どもが眠りにつくまで添い寝するのです。20時就寝といっても、日によってはそれら全部が終わるともう21時、などということもあります。親がこんな面倒なことを繰り返して早寝を習慣づけるより、子どもが勝手に寝るまで放置しておくほうが、親にとってはどれほど楽なことかしれません。

私は息子が幼稚園に入るまでは専業主婦をしていたので、このような生活が可能だったのかもしれません。もともと専業主婦志望ではありませんでしたが、出産当時、法律上は育児休業の制度が存在していたものの、世の中に浸透しているとは言えない状況で、産前産後休業すら職場の中で取得した人を見たことはありませんでした。それでも、妊娠7ヶ月まで仕事を続けた私は当時まだ珍しい存在だったかもしれません。しかし、幼い子どもがいながら、それまでと同じように仕事を続けるのはどう考えても不可能で、出産でいったん仕事を辞めるという選択をせざるを得ませんでした。

現在は産前産後休業にその後の育児休業、さらには職場復帰後の時間短縮勤務も法律で整備されており、実際にそれらの制度を利用する人も増えています。「専業主婦じゃないから、子どもの早寝早起きなんて無理」とは一概に言うことはできないのではないでしょうか。実際、知り合いの中にも今現在、育児休業取得後に時間短縮勤務で復帰して仕事をしながら、子どもの早寝早起きを実行している人がいます。

もちろん、それには親の努力が必要不可欠で、そのお母さんは毎朝5時起きで、朝から夕食の準備を整えて出勤しているそうです。子どもに一刻も早く夕食を食べさせて寝る準備をするには、やはり親にそれ相応の覚悟が必要だということです。

幼児期にこのように頑張っておけば、小学生になれば絵本を読み終わったら電気を消して部屋を出ることができるようになります。そうなれば、親は子どもが寝た後に自分の時間を手に入れることもできますし、子どもは毎日ぐっすり眠って学校に行き、一日集中して授業を聞いて、帰ってからは自分で宿題をやって、次の日の授業の用意も全部自分でできるようになるのです。自分のことは自分でできる、ということが、自分で勉強ができることに繋がっていくはずです。


(次回は「●子どもの人格形成」)


勉強しなさいって言わなくても勉強する子にどうやって育てたの?(1)

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