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アーリー・アフタヌーン・ウイズ・ブルー・ブルー・スカイ

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【完結】 昼下がりの農村に現れた一匹の仔牛。 人は因果に流され、因果は人を流さんとする。 ゴトゴト。 荷馬車が揺れる。
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#ホラー小説

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #6

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #6

ガランガラン

 ベルを鳴り、仔牛の足元には痩せこけた野良犬が2匹ふらふらと寄ってくる。
 机の上の肉塊が無造作に地面に放りだされ、静寂の広場に咀嚼音のみが広がっていく。
 もはや誰のものとも判別がつかぬ頭部が机に置かれる。
 テントの柱に止まったカラスが鳴くとその方向に頭部は投げ出され地面を転がっていく。血に塗れた長い髪は暖かな風になびくこともない。
 黒い塊があっという間に群がり、頭部は見えな

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アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #2

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #2

 ジェニーは走った。
 12歳の少女とはいえ、相手はゆっくりと歩いてくる仔牛である。
 距離はどんどんと離れていった。
 しかし、どれだけ走ろうとも彼女の耳にはハッキリと”あの音”が聞こえてくる。

 ゴトゴト

 振り返らずに走る。市場を目指して走る。
 
 BANG!

 背後から銃声。

 ゴトゴト

 あの音も聞こえる。銃声はもう聞こえない。

「おーいジェニー、どうしたんだいそんなに慌て

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アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #3

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #3

 ――ドナドナを怖がってはいけない。
 ――怖いのなら見てはいけない。
 ――なぜなら、ドナドナは可哀想なのだから。

 ジムは猟銃に弾を込める。
 単なるおとぎ話だと思っていた。
 言う事を聞かない子供を怖がらせるためのおとぎ話だと。

 ゴトゴト

 音が近づいてくる。
 ついさっき半狂乱でこの家に逃げ込んだトーマスが事の次第を教えてくれた。
   cock-a-doodle-doo!
   

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アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #4

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #4

 ゴトゴト

 ある者は羊の群れに襲われ衣服と頭髪を表皮ごと食い荒らされた。
 ある者は覆いかぶさる驢馬を振り落とそうと暴れたが押し潰された。

 ゴトゴト

 荷馬車が揺れる。

 ――――――――――――――

 村の中央にある広場。
 十数個の簡易テントが周囲を覆う壁のように建ち並び、新鮮な肉や卵、野菜に果物、衣類、薬品などさまざまな品物を求める人々が店頭を賑わしている。
 その中を1人の少

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アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #5

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #5

 ゴトゴト。

 仔牛は広場の中央に進んでいく。
 縄をかけて取り押さえようとした1人が力に抗いきれず引きずられる。
 男を支えた何人かも同様であった。
 肉切り包丁を構えて突進した男は仔牛の目の前で急に立ち止まり、呆けたようにその場に立ち尽くしている。
 
 ゴトゴト。

 仔牛は広場の中央に足を進める。
 一番大きな机の前に立つと、担いでいた荷馬車を両の前脚で天に捧げるように高く掲げた。

 

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