こうし3_

アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #3

 ――ドナドナを怖がってはいけない。
 ――怖いのなら見てはいけない。
 ――なぜなら、ドナドナは可哀想なのだから。

 ジムは猟銃に弾を込める。
 単なるおとぎ話だと思っていた。
 言う事を聞かない子供を怖がらせるためのおとぎ話だと。

 ゴトゴト

 音が近づいてくる。
 ついさっき半狂乱でこの家に逃げ込んだトーマスが事の次第を教えてくれた。
   cock-a-doodle-doo!
   cock-a-doodle-doo!
   cock-a-doodle-doo!

 
 養鶏場の鶏が一斉に鳴き叫ぶ。
 解放の自由を謳歌する奴隷のように。
 革命の成功に歓喜する市民のように。

 ジムの制止を無視して鶏の様子を見に行った地主は帰ってこない。
 
 ゴトゴト 

 見なければよかったのだ。
 やり過ごせばよかったのだ。

 だが、ジムはまだ”悪い子”だった。
 意を決して外に飛び出し仔牛の真正面に立つ。
 視界の端では鶏の群れが何かを啄んでいる。
 それが何であるかは考えないようにした。
 俺はビビってなんかいない。
 俺はこんなバケモノ怖くなんかない。

 BLAM!

 引き金を引く。
 弾は荷台にぶら下がる眼球の一つを吹き飛ばした。
 残りの眼球が同時にジムの方へ瞳を向ける。
 
 ――ああ、なんて人間は可哀想なのだろう

 仔牛は前脚の蹄を彼の額に押し当て、そのまま地面に叩きつけた。
 
 ゴトゴト

 仔牛は進む。
 ジェニーは走る。

 市場まであと1マイル。

【続く】
 

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