アーリー・アフタヌーン・ウィズ・ブルー・ブルー・スカイ #4
ゴトゴト
ある者は羊の群れに襲われ衣服と頭髪を表皮ごと食い荒らされた。
ある者は覆いかぶさる驢馬を振り落とそうと暴れたが押し潰された。
ゴトゴト
荷馬車が揺れる。
――――――――――――――
村の中央にある広場。
十数個の簡易テントが周囲を覆う壁のように建ち並び、新鮮な肉や卵、野菜に果物、衣類、薬品などさまざまな品物を求める人々が店頭を賑わしている。
その中を1人の少女が駆け抜けていく。
靴も、おろしたてのオーバーオールも、ブラウンの癖っ毛も何もかもが泥だらけだ。
「ちょっとジェニー!?どうしたのそんなに泥んこで?!」
心配する声を背に一番大きなテントに飛び込み叫ぶ。
「逃げ…逃げ…てッ! ドナドナ...ドナドナが来るからッ!!」
テントの中でコーヒーを呷っていた男たちは、ジェニーの訴えに一瞬唖然とした後、一斉に笑いだした。
「ヘイヘイジェニー、その手には乗らないぞぉ」
人差し指を立てて左右に振りながら笑ったのは、農耕馬を育成しているベイリーおじさんだ。
「これから競りが始まるんだから、大人の邪魔をするんじゃな…」
ペキ…ペキ…ペキ…
ベイリーの発言を遮るようにテント内に奇妙な音が聞こえる。
ペキ…ペキペキペキ…
「ヒィッ!」
別の男性が小さな悲鳴をあげた。
テント内に積まれた鶏卵にヒビが入っていく音だ。
やがて殻の中から血まみれの雛が顔を出し一斉に鳴き始める。
peep! peep! peep!
peep! peep! peep-peep!!
peep! peep! peep-peep-peep!!!
現状を理解できず慄くばかりの男たち。
続いてテントの外から大きな悲鳴が聞こえてきた。
「だから言ってるでしょ!早く逃げてッ!」
男たちは慌ててテント外へと飛び出し、ジェニーもそれに続く。
外にはまだ多くの人が居た。
皆、広場の入り口を見つめて、ただ立ち尽くしている。
ゴトゴト
大きな荷馬車を抱えた仔牛がゆっくりと広場に入ってきた。
【続く】
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