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88.対話からの幸福論

今年も世界各国の幸福度をランキングで示した国連の世界幸福度報告書の2024年版が3月20日に発表されました。

今回初めて年齢層別のデータが公表されて、30歳未満の若者の多くが、中年期に陥りやすいとされている うつ などの心理的な症状に相当する問題を抱えていることが判明したとのことです。

30歳未満の幸福度では、リトアニアが1位で、2位にイスラエル、3位にセルビアと続きます。

フィンランドは総合的には7年連続1位になりましたが、30歳未満の幸福度は7位でした。

30歳未満の幸福度では、日本は73位、アメリカが62位、イギリスが32位になっています。

総合のトップ10は、フィンランドを始め、北欧諸国を中心に昨年までとほとんど変わりありません。

11~20位は変化があり、チェコやリトアニア、スロヴェニアといった東欧諸国の幸福度が上昇しています。

ちなみに総合では、日本は51位、アメリカは23位、イギリスは20位です。

日本もアメリカも、順位が下がったのは30歳未満の幸福度が低下したことが要因です。

世代別に見ると、1965年以前に生まれた人は、1980年以降に生まれた人よりも平均して幸福度が高く、その差は年齢が上がるにつれて広がっています。

60歳以上の幸福度ランキング1位はデンマークです。

日本は36位、アメリカは10位、イギリスは20位です。

そりゃ、少子社会にもなるというものです。

高齢化とともに福祉を発展させてきている日本ですから、こうなってしまうのも仕方ありませんが…。

そこで今日は、幸福を求めるにつれて、かなり重要だと思われる“対話”についてのお勉強です。

対話がしっかりできていれば、ひょっとしたら核兵器なんて必要なくなるでしょうし、人同士が心理的に又は物理的に殺し合うなんて行為も必要なくなってくるのではないでしょうか…。

人間という字は人の間と書きます。

人間は、1人の人ともう1人の人がいるから、その間で成り立っているということです。

人間は、たった1人では何もできないし、何もできないということは生きていくことはできません。

動物も人間も群れをなして暮らしています。

動物の欲求の中で特に基本的なものに食欲と性欲がありますが、もう1つ、集団欲というものがあります。

動物や人間は、集団から離れて1匹又は1人でいる時間が長くなると、精神が壊れていってしまうと言われています。

人間は周囲に他の人がいないと成り立たないと言うことです。

そんな人間が構築している社会で起きる問題は、全て人と人との間の問題だと考えることもできます。

経済の問題や、いじめの問題、親子の問題、国と国との境の問題、戦争もそうですが…、これらも全て人間の問題です。

お金の問題であったり、格差の問題、国境の問題、宗教の問題など様々な問題がありますが、これらは全て、人と人の間に生じる問題です。

お互いに妥協をすることや落としどころさえ見つけることができれば、解決することができるはずです。

人間力とか社会力というのは、人と人との関わり合いの力ということになります。

その関わり合いの基本になるのが対話力です。

対話は言葉を発して話すことから始まります。

コミュニケーションを取るということです。

コミュニケーションにおいては何に基づいて判断されるかというと、言葉の部分はたったの30%で、残りの70%の要素は、外見や表情や声質と言われています。

そんなコミュニケーションですが、現代はビジネスでもプライベートでもあらゆるコミュニケーションがSNSやメール、チャットなどを通じて行われるようになりました。

その結果、対話が成り立たないことが多くなってしまいました。

価値観が多様化している現代ですが、単なる会話にとどまらず、対話することが相互理解にとってとても重要になると考えられます。

対話とよく似ている言葉に、会話があります。

対話は、今まで当たり前と思ってきた前提を再定義して新しい解釈や意味付けを行う過程のことです。

日常的に行われる会話の内容には通常そこまでは求められません。

個人個人でそれぞれが培ってきた経験や解釈、価値観をもとに“違い”を持ち込んで、互いの“違い”を顕在化させながら、新しい意味、
理解、知識を一緒に造り出す双方向なコミュニケーションが対話です。

ロシアの哲学者のミハイル・ミハイロビッチ・バフチンさんは、対話を、“人間の生そのものに対話的本質が存在しています。
生きるとは即ち対話に参加することです。
尋ね、耳を傾け、答え、同意することです。”と言っています。

単なる会話ではなく対話が重要なのは、人間ひとりひとりの価値観が違うからです。

対話は価値観の共有であると言えますが、それ以上の力があるようにも思えます。

自分の価値観を相手に対して発信してそれを理解してもらう以上の力があります。

対話によって…複数の人間が何かを協力して造ることができます。

社会構成主義という考え方があります。

アメリカの社会心理学者のケネス・J・ガーゲンさんは、“私たちが現実だと思っていることはすべて、「社会的に構成されたもの」であり、そこにいる人たちが「そうだ」と合意して初めて、それは現実になります。”と言っています。

そこに居る対話している人たちが合意することで生み出されたものだけが現実になるということです。

現実は対話を行う両者の関係性によって変化するものだと言えます。

対話の相手を“こういう人だ”と決め付けた瞬間、相手をそのイメージに閉じ込めてしまい、そこから何か新しいものが生まれてくることはなくなります。

創造的な対話を行う為には、自分の中にあるイメージや社会的束縛など、あらゆる決め付けや前提から自分の視点を解放することが重要になります。

その点をバフチンさんは、“対話は自分の中にある新しい側面を知り、お互いを豊かに変えるものです”と言っています。

自分が変わることについて、対話を行う両者がオープンな姿勢で臨むことで創造的対話が可能になります。

対話にどのような主観が持ち込まれるかによって、その対話の方向性や質は変化します。

対話には自分自身の内面を持ち込むということです。

創造的対話があれば、破壊的対話があるのも事実です。

2人が話して、そこに何か新しいものが創造されるどころか、既にある価値や関係性までが破壊されてしまうことがあります。

2人の間になされるコミュニケーションが破壊的になる理由としては、問題に対して批判的であったり、批評的な視点を持つ姿勢になっていることが挙げられます。

自分はその問題の一部ではなく外側にいて、客観的に問題をジャッジできると考えている可能性があります。

もし、お互いがそうした外側の視点に固執すれば、妥協点は見つけられないで、批判し合うだけのやりとりになります。

一方で、視点を問題の外側から内側に移して、自分自身を問題の中に持ち込んでその一部だと考えれば、批判的な視点を持ち続けることはできなくなります。

誰も自分のことを批判したいとは思わないからです。

自分には何ができるか…という視点に変化します。

つまり、物事の見え方が180度変わります。

ビジネスの現場では、対話をディベートだと思い込んでいる人が多くいます。

自分の視点の優位性を証明して、相手を説得することが問題の解決策を提示することになると勘違いしている人です。

しかし、ビジネス上の様々な問題を批判的なスタンスで捉えて同僚や後輩たちと誤った対話をしているうちは何も変わらないし生まれません。

そうしたコミュニケーションは創造的ではなくなってしまいがちです。

自分の主観を対話に持ち込んで問題の当事者であることを自覚することで、お互いを破壊し合う意味のない議論から、未来に向けた創造的対話へと変化させることができると考えられます。

現代の社会は多種多様な人間が集まって、企業や地域社会、家族など大小様々なコミュニティーを形成しています。

人種、年齢、性別、宗教など…多様な価値観を互いに認め合って、誰もが生きやすい社会を造る為には創造的な対話が不可欠です。

そうした対話によって、お互いの価値に優劣をつけて批判し合うのではなく、平等に包含できるようになると考えられます。

イノベーションは誰か特定の優秀な人の頭の中から生まれるわけではないと思います。

異なったバックグラウンドや経験を持つ人材がぶつかり合うことで生み出されます。

ぶつかり合うことはお互いを批判し合うことではありません。

多様な人材が問題の中に自分を持ち込み、合意に向けて対話を重ねることで新しいものが造り出されてイノベーションが生まれます。

対話をやめたり諦めた時点で揉め事は起きます。

いや、そもそも対話をしない今のご時世では揉め事の芽がいろいろな場所に存在しています。

現代はVUCAの時代と言われていますが、VUCA(ブーカ)はVolatility(変動)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたものです。

現代社会は不確実で、予測が困難だということです。

そうした中では価値観や視点が異なる人材が、対話によってプロジェクトや組織造りを進めなければ乗り越えられないと考えられます。

現場から遠く離れた所に存在する制度やシステムに従って仕事を進めるだけではうまくいかない時代になってきました。

人は誰かと対話することで自分が形成されていきます。

国籍など関係なく人はみんなが育った環境が違い、価値観が異なる以上は、空気を読むのではなく、対話が必要です。

どれだけテクノロジーが発達しても、本当の共生社会を造る為には短時間でも良いので顔の見える距離でのコミュニケーションが大切になるのかなと思います。

単なるおしゃべりや雑談と違って、難しそうに…そして面倒臭く感じられる対話ですが、まずは相手の言葉に耳を傾けることから始めます。

平和を次世代に繋げていくことが、今を生きる私たちの責務だと思います。

その為には、絶対に対話が重要になります。

個人レベルでも、家族レベルでも、組織レベルでも、地域レベルでも、国レベルでも…様々な場所で重要になります。

相手のことを批判しないで、自分の言葉で話すことを続けていけば、自然と対話が創造的になっていくのかなと感じたところで、今日の ふくしのおべんきょう を終了します。

写真は先日に、札幌市で撮影したものです。

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