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49.格差社会

日本国憲法第14条に…、

“すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない”

…と書かれています。
 
所謂、法の下の平等の規定です。
 
しかし現実はと言うと、かなりかけ離れた社会になっているように思えます。

格差です。
 
両親の世帯年収や学歴と子どもの学歴や生涯年収の間には、相関関係があると言われています。

義務教育期間は教育の機会が保証されているとはいえ、学校外支出…つまり習い事にはどうしてもお金がかかります。

子どもの教育をしようと考えても、全ての家庭が実行に移せるわけではないのが現実です。
 
つまり、経済格差と教育格差が子どもの学力格差を引き起こし、学力の格差がやがては教育の格差と経済格差を生み出して、格差が再生産されているということです。
 
また、学校数や教育レベルの地域格差や、周囲にも同様に教育に力を入れている人がいるかどうかなどの情報を得られるかどうかという情報格差も教育格差の原因になっています。
 
格差社会とは、成員が、特定の基準から見て隔絶された階層に分断された社会のことです。

特に、所得・資産面での富裕層と貧困層の両極化と、世代を超えた階層の固定化が進んだ社会のことを指します。

経済面において富裕層はとても裕福であるのに対し、貧困層の所得はとても低くその差が非常に大きい社会のことです。
 
どのような社会でも全員が全く同じ所得、資産になることは不可能であり、ある程度の差が生じるのは当然です。

しかし、その差があまりにも大きいこと…、そしてその差を生む原因が社会全体の課題や問題に繋がることから、格差社会と敢えて呼ばれています。
 
格差社会は様々な社会的背景から生まれている場合が多いです。

近年の急激なデジタル化による産業構造の変化は社会の経済格差を大きくしたと言われています。

これまで主流だったのは肉体労働でしたが、デジタル化によってITの専門的な知識を持った人材が重宝されるようになりました。

その便利さからデジタル産業の規模はどんどん大きくなり、IT人材の需要もその賃金も高くなります。
 
相対的に肉体労働を主としていた産業は規模の縮小や賃金の低下を余儀なくされ、格差が生まれてしまうということです。
 
高度経済成長期を境に賃金や処遇の決定方法が変化していったことも格差を生む原因になっています。

高度経済成長期以前の日本では、労働組合が経営者に賃金や処遇について交渉する春闘によって、労働者の賃金は業界ごとにほぼ同額を維持していました。

その為、労働者間で所得格差が発生しづらくなっていました。

しかし、高度経済成長期以降、実力主義、能力主義の傾向が強くなり、個々の成果や能力に応じて賃金や処遇が決められるようになったので、同じ労働者の間でも所得格差が生まれるようになったということです。
 
日本の出生率低下による少子高齢化も格差を生む原因です。

若い世代が少なくなる一方で、年金を貰う世代は増えています。

年金の財源確保は難しくなっていて、年金に頼って生活をする高齢者は貧困に陥りやすくなります。

その反面、会社役員などのポストに就いて高収入を得る高齢者もいて、収入格差が生まれてしまいます。
 
日本の高齢化は今後も進んでいくとされていて、更なる世代間格差の広がりが予想されています。
 
日本では2004年から労働者派遣法が施行されて、企業側への規制が緩和されたことで派遣社員…つまり非正規での雇用が増加しました。

派遣という形で自由な働き方ができるようになった一方で、非正規社員は収入が正社員に比べて低く、更に雇用が不安定であるというデメリットがあるのも確かです。
 
正社員になれない人が増えることで格差社会が広がっています。

福祉業界のように、正社員であったとしても、一般的な非正規雇用の平均と変わらないかもっと低い収入で働いている人もいます。

離婚や死別など様々な理由からひとり親世帯が増加傾向にあり、親が1人で仕事と家事や子育てを両立しなければならず、正社員として採用されにくいという背景があります。

そうすると、法改正によって緩和された非正規雇用や低賃金労働を選ばざるを得ず、結果として低所得で不安定な雇用により貧困に陥ってしまいます。
 
所得格差は子どもの教育や学力格差にも繋がり、お金がないことによって充分な教育を受けられず、その後の進学や就職などにも影響を及ぼし、子ども世代にも貧困が連鎖してしまいます。

これにより、更に格差社会が広がってしまうということです。
 
格差社会は単純な所得の差から社会全体の問題へと発展するので、対策が必要な課題です。

放置していると格差は広がるばかりか、その差が固定化してしまう可能性もあります。
 
個人の努力では改善が難しい規模の問題です。

その為、国レベルで様々な対策が行われています。

日本では、厚生労働省が働き方改革を推進しています。
 
現在の日本では、少子高齢化によって労働可能な人口が減っていることや、育児や介護など様々な事情に合わせた働き方が求められています。
 
働き方改革はこの課題の解決の為、働く人の置かれた個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く人ひとりひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

働き方改革の取組の一環で、同一賃金同一労働も重視されています。

以前は、正社員と非正規社員で同じ仕事をしているにも関わらず、正社員の待遇が良いということも多くあったので格差が生まれていました。

厚生労働省は“同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることを禁止する”として、同じ仕事をしている人には賃金を始めとした待遇を平等にするように働きかけています。
 
海外の一部の国や地域でベーシックインカム制度というものも試みられています。

ベーシックインカムは、国などが無条件で生活に必要な最低限の金額を支給する制度のことです。
 
働いているにも関わらず貧困から抜け出せずにいる層に対しての所得格差を改善する制度として日本でも注目されています。

しかし、財源の確保が困難であることや労働意欲の低下などが課題とされていて、日本では導入されていませんし、海外でもまだ実験的に導入されている程度にとどまっています。

貧困による教育格差は、子ども世代にも貧困を連鎖してしまうどころか、日本の社会全体の成長にも影響を及ぼしかねない大きな問題です。
 
教育格差への対策は経済支援、就労支援、生活支援の3つに分かれています。
 
経済支援は、主に児童扶養手当が挙げられます。

ひとり親世帯や父母に変わって子どもを扶養している人に対して支給されるものです。

生活が苦しくなってしまうことの多いひとり親世帯の生活を支える制度です。

他にも、子どもの修学資金や就職準備金を年利1.0%で貸し付ける母子父子寡婦福祉資金貸付金制度もあり、ひとり親世帯の経済的な自立や生活を支援する制度として利用されています。
 
就労支援は、ひとり親が技術やスキルを身につける機会を提供し、更に就労も促進する総合的な支援です。

具体的にはハローワークで行われる職業訓練などを指します。

職業訓練は就業に必要なスキルを学べたり資格を取得したりすることができるもので、民間のものに比べて経済的な負担が軽いことが特徴です。
 
生活支援は大人も子どもも対象として、住居や物的支援、精神的支援を様々な方法で行っています。
 
具体的には、地域の相談員と相談して自立計画を立てる自立相談支援事業、家計改善や相談者自身での家計管理を促し早期生活再生を目的とした家計相談支援制度、就職活動をすることを条件に住居を失った人に対して家賃相当額を支給する住居確保給付金の支給などです。
 
また、精神的な理由などからすぐに就労するのが難しい人に対して、長期プログラムに沿って就労支援を行う就労準備支援事業、住む所がなかったりネットカフェを点々としたりしている人に対して一時的に宿泊場所や食糧、衣服を支援する一時生活支援事業などがあります。
 
格差社会は単なる貧富の差だけではなく、様々な社会問題と繋がっている問題です。

全員が全く同一の経済状況になるのは難しく、多少なりとも差は生まれるものだと思いますが、その差が大きくなりすぎないように対策していく必要があります。
 
 
 写真はいつの日か…中山峠から羊蹄山を撮影したものです。

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