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京都で江戸期創業の庭師の会社・植彌加藤造園が文化財の活用について考えます。~ヘリテージデザインはじめます~

「ヘリテージデザイン」とは?

文化財施設の運営をする側の目線から、これからの日本で、文化財の活用がどうなっていったら良いのか?を考えるプロジェクト。活用現場の実情や、シェアしたら役に立ちそうな工夫、そして文化財に関わる様々な人々のインタビューなど、投稿していきます。

なぜ、やろうと思った?

植彌加藤造園は、1848年創業の日本庭園をはぐくむ技術をもった庭師という職人が集まる会社です。ひとつの世代にはおさまらない、時には数百年にわたって在り続ける京都のお寺や別荘のお庭をはぐくんできました。つまり、文化財という言葉ができる、ずっとずっと前から、文化財がある場所で仕事をさせていただいています。

時代が移り、近年では、新しい制度の中で、日本庭園がある文化財に指定された、施設の活用を行う会社にもなりました。

とはいえ、私たちのバックグラウンドは、京都の地の御用達文化の中で培った技術や考え方にあり続けます。それはつまり、常に所有者の視点に寄り添い、その場所に対する想いを景色に反映することにつきます。

文化財の保護、つまり保存と活用の推進が、法律の下できちんと制度化されている日本の状況は世界に誇ることができます。他方で、未来に向けて、その意義を伝えて守り続けるためには、文化財の存在に、自分事として想いを寄せる人を一人でも多く創り出す必要があります。

母屋_Main Japanese Building

私たちは京都の岡崎にある無鄰菴を、指定管理者として運営しています。そこでは、観光客、京都市民の方、留学生など毎日いろいろなお客様をお迎えします。運営を始めて1年目は、現場のサービススタッフも企画部も、これでいいのか?という問いと向き合い続けました。次第に、おひとりおひとりをこの庭の所有者と考えて運営することで、再びこの庭に戻ってきていただけることを発見しました。

それから5年たった今、無鄰菴は、フォスタリングフェローズという提案型のボランティアさんや、茶道教室の生徒さんや、イベントリピーターさん、あるいは毎朝ぶらりと訪れてくださるご近所さんなくしては、ありえない豊かな空間となりました。無鄰菴の空間が、初めて来る観光客の方にも、押しつけがましくなく居心地が良いと感じてもらえるのは、それぞれが自分事として、自分なりのやり方で無鄰菴を未来に向かってはぐくもうとしているからに他なりません。

2017.11.28-無鄰菴受付・その他-select-34

無鄰菴を運営して、こんな方々が、たくさんいることが分かりました。自信がでました。

そこで、一つの施設の中だけではなく、ウェブの世界にも場所をつくってつながったら、もっと文化財をはぐくむことに近づけるのではないか、文化財に自分事として想いを寄せる人が生まれるのではないか、と考えました。だから、ヘリテージデザインはじめました。

考え方は同じでなくてよいと思います。無理に手を取り合う必要もない。立場を異にしながらも、私たちが生きる時代のベースを形作っている文化財を、まずは知って、コミットを深める。このことに寄与できれば何よりです。

誰がやってるの?

京都市左京区にある植彌加藤造園の知財企画部が運営しています。
創業嘉永元年1848年、いわゆる老舗の造園会社です。職人は毎朝それぞれのお庭に出て、仕事をしています。知財企画部は、管理や作庭をさせていただくお庭に関する学術的な情報を収集・研究・アーカイブしたり、それを使って日本庭園の見方をわかりやすくお伝えするイベントなどを企画実施しています。

編集長 山田咲について

山田咲/プログラムディレクター/植彌加藤造園知財企画部長 
1980年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。東京藝術大学大学院映像研究科監督領域修了。東京にて広報関係の仕事を経て、2016年4月植彌加藤造園に入社。知財管理部(現:知財企画部)の立ち上げ、文化財施設の運営など、主に活用面から日本庭園や文化財に関わる仕事に従事している。他方でパフォーミングアーツにドラマトゥルクなどの立場で関わったり、イベント企画を行ったりと、文化的領域を横断した活動を続けている。



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