陽だまりの粒 その(参)
常識に基づいて、現実を変えて行きたいんです
Q - ドランカーズのインタビューを始めます
まずおふた方の自己紹介からお願いします。
雪 - ドランカーズのギター雪野 和彦です。
泉 - ドランカーズのマネージャーの雪野 泉です。ちなみに和彦と私は兄弟です。
Q -マルトウビル 階段 PUNK塾を始められたきっかけは?
雪 - 始まりは今年の5月で、きっかけと言うよりも、昼間のLIVEが終わった後で僕はマルトウビルの3階にあるレコード店にレコードを買いに行くんだけど、僕の後をこっそり付いてきた、数名が僕と話がしたいと言うので、そこで座談会を始めたのが始まり。
Q - どのような事を話されたのでしょうか?
雪 - 話のテーマは、ざっくばらんにバンドの事、レコードの事、映画の事、本の事、社会問題。
Q - その後、バンド活動等に変化はありましたか?
雪 - まずスニーカーズと仲良くなった。
これが1番大きい。
で自分の発言の影響力が大きくなったので、
もう適当な事は言えなくなりました。
Q - 言った事に責任を感じると?
雪 - それが何の責任なのかは、分からないけど、僕が言ったことが、そのまま着てる服になってる人がいるよね!
例えばほら、7 SECONDSのTシャツ着た咲ちゃんとか、HARD ONSのTシャツ着た美彩ちゃんとか(笑)今度、意地悪してさ、僕がメタルTシャツがカッコ良いなんて言ったら、彼女達メタルTシャツ着るのかな?
Q - MANOWARとかWASPだとか(笑)
雪 - MOTLEY CRUEとかマッチョなバンドね(笑)
咲・美彩 - そんなの着ないよ!だったら雪野君は着るの(笑)
雪 - 部屋着だったら着るよ!
咲・美彩 - 1度見てみたいな〜(笑)雪野君メタルTシャツ持ってるの?
雪 - 持ってません。
全員 - 爆笑
Q - アットホームでいい感じですね。
ここからちょっと、ミーハーな質問をします。雪野君は休みの日は何をしているのでしょうか?
雪 - 泥のように寝てます。
泉 - サザエさんが始まると起きてきます(笑)
で夜寝れなくなって朝まで起きてます。
Q - 泉さんは、どうでしょう?
泉 - 私はなにしてんだろう?学校の友達と遊んだり普通の高校生してます。
咲 - 雪野君は、彼女はいるんですか?
Q - 司会を奪われてしまいましたが、雪野君どうでしょう?
雪 - (爆笑)参ったな…いくらミーハーな質問でも、これありか?…咲ちゃんの質問に答えます。彼女はいません(キッパリ)。
全員 - 爆笑
雪 - …いや、今の笑う所か?(笑)
咲 - きゃ〜嬉しい!
全員 - 爆笑
Q - 泉さんは、彼氏がいますか?
泉 - 一瞬いましたけど、速攻別れました。
Q - それは何故ですか?
泉 - 付き合って2時間たったら、やらせろって、煩いから。
Q - (笑)バンドの話に戻します。今日のLIVEをどうお考えですか?
雪 - 忘れたい位に最低最悪だと思います。
ドランカーズは解散ですね。
泉 - まさか今日自分が、ステージデビューするとは、思ってもいなかったので、最悪のLIVEでした。
Q - 途中でドラムの人が曲を忘れたように、動かなくなりましたが、原因はなんですか?
雪 - 原因は酒の飲みすぎです。
へべれけになっちゃった。
泉 - 私、彼と中学の時の同級生なんだけど、普段からこうで、練習しにきてんだか、酒飲みに来てんだか、分からないです。
Q - 泉ちゃんは、頭でスネアを叩いていましたけど、普段からこんな感じですか?
泉 - そんな訳ないでしょう(笑)ドラムを交代したら、クダ巻いてうるさいので、頭に来たから
そういうパフォーマンスをしちゃいました(爆笑)
全員 - 爆笑
Q - 新曲でアルペジオを入れた曲を披露しましたが。
智美 - 凄く綺麗なイントロで感動してたら、ドラムが凍りついて曲が続かなかった(笑)
里香 - 一瞬時が止まったよね。
泉 - もう最悪!なにやってんだか…
ドランカーズは解散だな!
雪 - 不条理の世界で、国に命を消された人達へのレクイエム…沖縄、チリ、アルゼンチン、その他独裁政権の国で生きてる間に見られなかった夢を。
咲 - 雪野君カッコいい!
Q - おふた方のオススメの本がありましたら、教えて下さい。
雪 - 南京への道、天皇の軍隊、悪魔の飽食
危険な話…以上4冊。
泉 - 反日革命宣言!以上
Q - 危険な話は、私も読みましたが、その他は、どのような内容の本ですか?
雪 - 日本人が記憶から敢えて消してしまった負の歴史。
泉 - 戦時中のアジアで日本人が何をしていたのか?知って欲しい。その前にまず自分で読まなきゃダメでしょ。
雪 - 捏造だの幻だの言われるけど、こんな極悪非道な事を、作り話で語れる人がいるのか?
人間は、闇の中で狂気を共有し始めると、光の下では、絶対に見せない内に秘めた狂気を全てさらけ出してしまう。
泉 - 日本軍による強姦はなかったと言う人が
アジアに買春旅行に行ってるし。
自分の犯した罪の深さを、全部女性に押しつける。
Q - 今話した事は、所謂政治的と言われる事ですが、その事がおふた方の音楽活動とどう繋がっていくのでしょうか?
泉 - ドランカーズには、所謂政治的な歌詞は、1曲もないんで、あくまでも個人の信念です。
Q - ちなみにドランカーズは、どんな事を歌っているのですか?
雪 - "世の中なんかクソ喰らえだ、ぶっ壊してやれ"みたいな、たわいもない歌詞です。
泉 - 日常を妄想化した歌詞です。
お猿のモンキーを歌った曲もあります(爆笑)
全員 - 爆笑
Q - 着てるTシャツからもっと、社会的な歌詞だと思っていました。
雪 - 反マクドナルドのTシャツ?
Q - まあそれもありますし、反戦とか。
雪 - どっちかと言えば、イギリスのCHAOTIC DISCHORDみたいだよ。「政治もお前らもどうでもいい、だまれ、失せろ」みたいな感じで。
僕はキャラが違うので、このバンドにいてホントに良いのか?と毎日葛藤してたから。
Q - 納得です。
雪 - 音楽で政治を歌うなら、政治家にでもなればとか言われるけど、僕達は、職業で音楽やっている訳でないし、政治的な事と堅苦しく難しく捉えちゃうから、ハードルが高くなるんですよ。政治は日常的な事です。
泉 - PUNKとかHARDCOREとか、自由だと言うけど、なんだか自由をはき違えている人が凄く多いと思います。
雪 - 何でも好き勝手にやるのも自由なんだけど、僕達は、そういう自由じゃなくて、ある程度の決まり事を守った上での自由を求めているんです。
泉 - 常識に基づいて、現実を変えて行きたいんです…
QP - なるほど
雪 - 僕達は、政治的と言われる主張を持っているけど、政治的ではないバンドと一緒にLIVEやっているじゃないですか。
スニーカーズだって、CATS EYEだって政治的な歌詞はないですよ!でもそれは、それでカッコいいですよ。要は自分達が何処で納得するかですよ。
Q - インタビューしていて、凄い勉強になります。いや〜やって良かった。
雪・泉 - ありがとうございます。
Q - 質問の順番がズレましたが、個人で影響を受けたバンドなどを教えて下さい。
泉 - 私は、日本のガールズバンドに影響を受けました。RAP、キャー、UNIONが大好きです。
あと、赤痢も外せない。
雪 - イギリスのCONFLICTに影響を受けました。音楽的に凄い深みがあるんですよ。
怒りだけじゃない、哀しみの表現が出来る彼らには、僕の音楽なんて足元にも及ばない。
"弱者を守ることからはじめよう、無防備な者
動物達、病気や障害を持つ者達を"
こんな歌詞をいつかかけるように、自分を磨いて生きたいです。
Q - 今後の予定は?
雪 - 年内にスニーカーズの音源を出したいなと、思っています。
美彩・智美・里香 - スゲ~
泉 - バンドに関しては全て未定です。
Q - 最後に何かメッセージがあれば
雪 - 僕らの目的は、PUNK以外の人にも僕らの考え方を知らせる事なので、こういう機会を作って戴き感謝します。
泉 - 読んでくれた人に分かって頂けたら最高ですね。
1990年7月某日 喫茶ボヌールにて収録
「読んでみた感想は?」
「悪くないよ、これでGoじゃん」
敬子の問いに美和が答えた。
「そうじゃなくて、インタビューに出てくる人物よ」ちょっとイラついた感じで、敬子は、美和をせきたてた。
「なんの事か分かんない…あっ」
敬子は、やっと気づいたかという表情を美和に向けた。
「実は私、今日の事件の第一発見者なのよ」
「え〜嘘?マジで」
美和は、敬子の顔をマジまじ見つめた。
「私、その光景が脳裏に焼きついちゃって、離れないのよ…」
敬子はそう言うと、手で顔を覆った。
「敬子大丈夫?」
「全然大丈夫じゃない…誰かの叫び声がしたから、フロアの外に出てみたら、上半身裸の咲ちゃんが懸命に逃げようとしてた…」
「それで?」
「私は、足がすくんで動けなかったの…助けたくでも、身体が震えて動けなかったの…すぐ側に雪野君がいたから、一心不乱に雪野君に助けを求めた…」
敬子と美和は20歳で、看護学校の2年生である。二人とも同じ高校に入り意気投合してバンドを組んだ。看護学校に入ったのも、もう少しだけ音楽と関わっていたいと、後先考えないで軽いノリで入っただけだから、入学してからが色々大変だった。
敬子も美和も気が付いている、バンド生活がもうスグ終わる事を。
「美和…私、今まで何して来たんだろう?1人でも多くの人にLIVEを見に来て欲しくて、ミニコミまで作って…頑張ったつもりでいたけど、
今はただ挫折感しかないや」
「でも咲ちゃんを手当てして、看護学校で習って事が無駄じゃなかった事を証明出来たから、胸張って生きようぜ」
「美和にさっき見せた、インタビューが終わった後に咲ちゃんが私にTUBEのコピーバンドの人がこっちを見てるって言ってたのよ」
「えっどこから?」
「同じ喫茶店の中から」
「嘘~気持ち悪」
「大体アイツら何者なの?」
「憶測で大学生」
「憶測って何よ?」
「だから憶測だってば、誰もアイツらと話した人がいないんだから、しょうがないじゃん」
「美和さん、我々の妹みたいにカワイイ、咲ちゃんの敵討ちをやりますか?」
「それでこその敬子様です、では早速報復隊を動かしますよ」
「ちぃと、その前に私、敬子がどうしても、やりたい事があるので先にそっちを企画しますよ」
敬子は、思い出したように受話器を上げた。
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