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「魔術師よ」"Enchanters"の歌 ドラゴンエイジ・インクイジション

ゲーム音楽はほんとうに素晴らしいですね。 自分ではゲームをしないくせにこうした音楽ばかりききあさっています。曲も世界観もしっかり味わえるゲームプレイヤーの方々がうらやましいかぎりです。 この「魔術師よ」の曲は、酒場で歌われている歌のうちの一つです。 これからいよいよ戦いが始まる……!という雰囲気がとても良い。 メロディーも歌詞もとても良いので必死こいてあちこち訳を探したのですが、見つからなかったので結局自分で訳しました。 早くどなたかがもっとより良い形で訳してくださるのをまつばかりです。 Enchanters! The time has come to be alive In the Circle of Magi, where we will thrive With our brothers. Enchanters remind That time will not unwind. The dragon’s crooked spine, Will never straighten into line. What we plea will be A faithful end decree, Where a man will not retreat From the defeat of his fathers. Enchanters! A time has come for battle lines. We will cut these knotted ties, And some may live and some may die. Enchanter, come to me Enchanter, come to me Enchanter, come to see Can-a you, can-a you come to see, As you once were blind In the light now you can sing? In our strength we can rely, And history will not repeat. 魔術師よ 魔法使いの輪の中で、兄弟たちと一緒に進む時が来たのだ 魔術師よ 時間の流れは止まらないことを忘れるな ドラゴンの曲がった背骨は決してまっすぐにはならない 我々が願うのは誠実な終わりという天命だ 父祖の敗北から退くことはないだろう 魔術師よ 戦いの時が来た 結ばれた絆を切るのだ、生きる者も死ぬ者もいるだろう 魔術師よ、来たれ 魔術師よ、来たれ 魔術師よ、来たれ どうか、姿を見せておくれ かつては光の中で盲目だったあなたが今は歌えるのか 私たちの力があれば歴史は繰り返さない

    • フェニーチェ劇場(ヴェネツィア)

      2018年の秋に、フェニーチェ劇場で「椿姫」(原題:La Traviata」を鑑賞しました。ここで少しだけ紹介できたらと思います。 一度はボックス席でみてみたいと思っておりましたので、チケットは2か月前にインターネットのフェニーチェ劇場のサイトから予約しました(今は右クリックでほとんど翻訳になるので便利ですね)。 サン・マルコ広場に近いサン・ベネデット劇場が焼失し、その建て直し後の1792年に完成したのがフェニーチェ劇場です。 劇場入り口。扉のところでチケットを持ってい

      • 【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 10. そして再び水曜日(最終話)

         翌日からのヴェネツィアの町はすっかり静まり返っていた。長く続いたカーニヴァルが終わり、とうとう四旬節に入 ったのである。  広場での大道芸や見せ物小屋は解散し、劇場や賭博場のリドットはすべて閉館、昨日までの賑わいが嘘のようであった。  その粛然とした空間で、フランス貴族オランクール伯爵家の子息、リュシアン・アンリ・ドゥ・レヴィエスの葬儀がサン・ミケーレ島の教会でひっそりと行われた。  ダンドロの主人の横に立つソフィアは悲しげな表情をしていたが、兄の穏やかな顔をした遺体を見

        • 【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 9. 火曜日

           カーニヴァル最後の火曜日。サン・マルコ広場は昼前のうちからどんちゃん騒ぎであった。  政庁の前では最後とばかりにたくさんの“見世物”の披露が行われていた。仮設舞台での喜劇、動物たちのいる見世物小屋、人形劇、カメラ・オブスクラ、軽業師たちのパフォーマンス、楽師たちの演奏、それに合わせた踊り子の舞。またあちこちで花火や爆竹まで鳴らされているようだ。仮装した人々はそれらに群がり、祭りの最後の日を楽しんでいた。  その場所から島の反対に位置する岸ーーフォンダメンタ・ヌオヴェでは、

        「魔術師よ」"Enchanters"の歌 ドラゴンエイジ・インクイジション

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        • 【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 10. そして再び水曜日(最終話)

        • 【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 9. 火曜日

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 8. 月曜の夜更け

           突然バンッと開け放たれた扉に、ボックス席にいたマルチェロとエドアルド、そしてソフィアはびくっと肩を震わせてそちらの方を振り返った。 「ちょ、ちょっとやあね、私よ私!」  燭台を片手で持ちながら慌てて仮面を外す女はクリスティーナだった。  エドアルドは「な、なんだクリスティーナか」とほっとした声を出した。 「まったく、ノックぐらいしろ。これだから礼儀のない庶民は……」  マルチェロは眉をしかめてぶつぶつ呟くのを聞きながら、クリスティーナは「はいはい失礼しました」と言い

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 8. 月曜の夜更け

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 7. 月曜日

           空が白み始め、明けの明星が輝く頃、マルチェロとエドアルド、そしてクリスティーナは、仮面とバウタ、帽子タバッロを着付けた姿でリアルト橋のたもとにやってきた。  昨夜は騒がしかったのだろう、橋にはあちこちに酒瓶や、リボンやら紙ふぶきの切れ端が落ちているが、この夜明け直前の時刻は、しんと静まり返っていた。もうすぐ祈祷の鐘が鳴るだろう。  マルチェロは寒さに身を縮め、タバッロをかき寄せた。教会の中と比べて、やはり水辺は凍りつくようだ。 「ううー寒いわね」  クリスティーナが仮

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 7. 月曜日

          ジョヴァンニ・ダヴィッド《珈琲を飲むマスクの男》(1775)

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』のイメージにつながればと思い、こちらで紹介させていただきます。 18世紀後半のイタリア画家兼版画家のジョヴァンニ・ダヴィッド(Giovanni David, 1743-1790)の《珈琲を飲むマスクの男》(1775)です。 ダヴィッドの「様々な肖像画」(Divers Portraits)シリーズの表紙絵で、タイトルの通り、珈琲を嗜むマスク姿の男が描かれています。典型的なヴェネツィア貴族男性の服装で、ジレ

          ジョヴァンニ・ダヴィッド《珈琲を飲むマスクの男》(1775)

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 6. 日曜の夜更け

           ギーシ家の屋敷からほど近い広場は、相変わらず祭りを祝う人々で賑わっていた。あちこちにランタンが灯されており、大勢の人間が仮面をつけて、仮装をした姿で楽しそうに踊ったり歌ったりしている。広場の真ん中では誰かが演奏しているようだ。  マルチェロはそんな人々の間を縫って、運河沿いに出た。あまり歩かないうちにすぐに空のゴンドラを拾って乗り込んだ。 「フォスカリーニ邸へ」  マルチェロの言葉に、船頭が「へーい」と軽く返事をして櫂を漕ぎ出した。  ゴンドラはゆっくりと暗い運河の上を

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 6. 日曜の夜更け

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 5. 日曜日

           マルチェロが目を覚ましたとき、椅子に座ったままのエドアルドとクリスティーナはまだ眠っているようだった。  むくりと身体を起こすと、窓辺から差し込んでくる日の光の眩しさにマルチェロは目を細めた。光というものはこれほどまでに美しいものだったのか。これまで特に気にしていなかったが、ピオンボの暗闇を経験したマルチェロにはこの光がとても貴重なものに思えた。  マルチェロは目を閉じ息を吐いた。  さて。考えなければならないことは山ほどある。事態は解決したわけではない。自分は脱走した身

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 5. 日曜日

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 4. 土曜日

           この国にあるいくつかの監獄のうち、一つはピオンボ(鉛)と呼ばれる。  建物の一番上に位置するこの一つ一つの牢は、冷たい石壁で覆われていた。中には窓どころか隙間ひとつない昼間でも深い闇に包まれている牢もある。たったひとつ、硬く頑丈な分厚い黒鉛の扉だけが牢からの出口であった。  ピオンボからずっと下に下りたところにはポッツォ(井戸)と呼ばれる地下牢があり、そこには手のつけられないような極悪人の収容されているとされていた。また拷問によって夜な夜な恐ろしい悲鳴が聞こえると言われ、カ

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 4. 土曜日

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 3. 金曜日

           翌日。  マルチェロは寒さにぶるっと身を震わせ、目を覚ました。  窓辺の光からして、もう昼に近いようだ。  昨夜はコーヒーを四杯も飲んでしまったせいで帰宅してもなかなか眠れず、明け方にようやく眠ることができたのだった。  マルチェロはむくりと起き上がり、緊張しながら左頬に手をやってみた。 昨日ほどの痛みはないが、まだ固い。口の中に何か物を入れているようにも感じる。おそるおそるベッドから出て鏡台に歩み寄った。  鏡に映った自分の頬は、赤くはないがまだ腫れが引いていない。  

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 3. 金曜日

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 2. 木曜日

           窓から聞こえてくるがやがやとした声で、マルチェロはうっすらと目を覚ました。外は明るくなっている。どうやら朝らしい。  マルチェロは、あくびをしようとして左頬に痛みがつきりと走り、顔を歪めた。  そうだった。昨夜、どこの誰かもわからない賭博客に殴られたことが頭に蘇る。  マルチェロは盛大にため息をつきながら起き上がった。昨日より痛みは引いているが、やはりまだ痛い。顔の腫れはどうなったのだろうか。ふらりと立ち上がると、マルチェロは棚の引き出しから鏡を取り出して顔を映した。  左

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 2. 木曜日

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 1. 水曜日

          「くそっ」  マルチェロ・フォスカリーニは顔を歪ませて自慢の栗色の髪を掻き上げると、きれいな文字が並ぶ手紙をぐしゃりと握りつぶした。  窓の外は薄暗くなっている。人々の笑い声が騒がしい。もうじき夕刻の鐘が鳴るだろう。  扉が叩かれ、部屋に召使いが入ってきた。 「ゴンドラの用意が整いました」  その言葉にマルチェロは唸るように答えた。 「すぐに下りる。玄関口で待つように言え。それと行き先はサン・マルコだ」  金の縁取りの三角帽子を被り、ポルテゴを下りて扉を開けると、

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』 1. 水曜日

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』前書き

          お読みいただく前に この物語は18世紀末のヴェネツィア共和国を舞台としていますが、登場人物の名前は架空であり、実在した人物とは一切関係ありません。 また作中で、ある職業や身分についての理不尽な差別や、偏見のある描写が出てきますが、作者自身の主義とは異なるものですのでご了承ください。 ヴェネツィアの用語一覧 カーニヴァル:謝肉祭のこと。四旬節前のお祭り。 ゴンドラ:小さな小舟。 タバッロ:マント。 バウタ:黒い絹の頭巾。 フェルツェ:ゴンドラの上に付いている屋根付きの空間

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』前書き

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』予告

          恋人に振られたばかりのヴェネツィア貴族マルチェロ・フォスカリーニは、体面のために新しい相手を必死で探していた。仕方なく顔見知りの駆け出し娼婦クリスティーナを連れて出向いた貴族の屋敷で、マルチェロは隣の部屋を覗く怪しい男を目撃する。これこそが今回の騒動のはじまりであったーー。 18世紀末のヴェネツィアを舞台に、カーニヴァルが終わるまでの一週間を描いたヒストリカルミステリー。 なろうとアルファポリスにも載せています。

          【小説】『マルチェロ・フォスカリーニのカーニヴァルの最悪な一週間』予告