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「かっこいい」をアップデートする

 こんにちは、株式会社のヘラルボニー COOの忍岡(おしおか)です。

 この記事は、【資本主義のアップデートについて考えるアドベントカレンダー2023】の企画として書かれたものです。

 株式会社 Figurout CEOの中村さん、『資本主義の中心で、資本主義を変える』著者の清水さんを発起人とする「資本主義のアップデートについて考える Advent Calendar 2023」の企画にお声かけいただき、光栄なことに経済学者や投資家の皆さんと並んでこのような記事をを投稿する運びとなりました。

 さて、ヘラルボニーは資本主義をアップデートしていると言えるのでしょうか・・?

 ヘラルボニーは営利企業であり、スタートアップである

 ヘラルボニーは、「異彩を、放て。」というミッションを掲げ、国内外の主に知的障害のある作家の描く2,000点以上のアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスへ展開しています。支援ではなく対等なビジネスパートナーとして、作家の意思を尊重しながらプロジェクトを進行し、正当なロイヤリティを支払う仕組みを構築しているのが特徴です。

 ライフスタイルブランド「HERALBONY」のほか、商品や空間の企画プロデュース、取り組みを正しく届けるクリエイティブ制作や社員研修プログラムなどを通じて企業のDE&I推進に伴走するアカウント事業など、多角的に事業を展開しています。

六本木ヒルズで2023年12月8日(金)〜 2024年1月21日(日)の
約2ヶ月間実施するポップアップショップ
丸井グループとの事業提携により、利用額の0.1%がヘラルボニーを通して作家や福祉施設等に還元されるクレジットカード「ヘラルボニーエポスカード」を発行。
通常のカードに比べ、LTV(顧客生涯価値)は4倍に。

 この間の事業成長に伴い、ライセンス使用料の年間支払額(作家や福祉施設等にお支払いした報酬)は過去2年間で8.7倍にも増加しました。

 また、直近ではESG重要型グローバルベンチャーキャピタルファンドのMPower Partnersをリード投資家とし、鎌倉投信株式会社と合わせて資金調達を実施(プレスリリース)したほか、2023年度の官民によるスタートアップ支援プログラム「J-Startup」「J-Startup Impact」にも選定いただきました。

 こういったベンチャーキャピタルから資金調達をしている以上、事業成長によって投資家の皆様にリターンを産まなければならないですし、期待される成長スピードは外部資金を入れない企業と比べて圧倒的に速いです。
 メンバーはデジタルマーケティングやBtoB営業に精を出し、クリエイティブチームはいかにアートの良さを生かしたプロダクトや企画ができるかに頭を悩ませています。社内では他のスタートアップと同じように「リード獲得」「CVR(コンバージョンレート)」「予算達成」など生々しいビジネス用語が飛び交っています。

 このように、ヘラルボニーは間違いなく資本主義の仕組みにのって、お金を稼ぐことを目的にした営利企業です。
 さて、そのような会社であるヘラルボニーは果たして資本主義を「アップデート」しているといえるのでしょうか・・。

 ヘラルボニーの企画やプロダクトを買ってくださるのはなぜか?

 確実に変わってきているのは、企業や消費者の関心や好みだと感じます。
 
 お金を稼ぐことを是とする資本主義の力によって私たちの生活は確かに豊かになり、モノに溺れるような日々です。反面そこにはひずみや、ムラ、弊害が生まれてきていることも確かで、一人一人が違和感や居心地の悪さを感じ始めているように思います。
 ヘラルボニーが少しこれまでの企業と違うのは、そのように変わりつつある市場の好みの変化をより大きく捉えるために「かっこいいとはどういうことか」をアップデートしているということだと思います。

 前提として、ヘラルボニーのクリエイターは、「障害がある方が作った」という文脈を離れたとしても、「かっこいいか?」「美しいか?」という観点で評価し、企画やプロダクトに昇華させます。

 これまでは障害のある方の作品を売ることについて、ビジネスというよりも福祉、支援の文脈が強くなりがちであったことを考えると、新しいアプローチであるといえるでしょう。

 アートそのものをキュレーションをしているのも金沢21世紀美術館のキュレーターである黒澤浩美さんです。本当にこのアートは現代アートとして評価できるのかという観点で選んでおり、逆に言えば、それ以外のプロの世界と同様、選ばれないものがあることを許容する厳しい選抜があります。

2023年5月から6月の期間で三井住友銀行東館1Fアース・ガーデンで実施された「「ART IN YOU アートはあなたの中にある 」と題した展覧会

 その前提があった上で、ヘラルボニーの事業を成り立たせるために重要なのは、作家や作品の裏にあるそれぞれのユニークなストーリーと、作家へ還元がきちんとされていることが、分かりやすくステークホルダーにコミュニケーションされているということになります。
 これによってステークホルダーの皆様からみて、単なるブランドである以上の、熱烈な応援をいただき、愛着を持っていただけている、ということが事業の競争力の源泉だと感じています。

(かくいう私も、「かわいい名刺入れの会社」としてヘラルボニーを知り、あとからストーリーを知って熱烈なファンになった挙句に、枠もないのに一方的に応募をして入社した一人です。私の入社エントリーはこちら「子どもの自分がワクワクする会社、ヘラルボニー」

 その意味では、誤解を恐れずに言えば、ヘラルボニーは事業の戦略として「障害のある作家が制作したアートを使っている」ということを活用させていただいているといえるでしょう。

数字に現れたブランドの力


 このことを表す数字を少し紹介させていただきます。

ヘラルボニーのパートナー企業向けソリューションのケイパビリティシート(ソリューションに関するリンクは末尾へ)より

  NPS(Net Promoter Score、顧客推奨度)は顧客のロイヤリティを測る数字として広く使われる数字で、単純比較は難しいものの、50点台というのは他の企業と比べて極めて高い数字と言えます。
 また、toC事業のお客様の5人に4人がヘラルボニーを口コミしてくださり、toB事業を実施したパートナー企業の社員のうち70%以上の方が社内の変化を感じているという調査結果が出ています。これらの数字はこれからも精査を続けていくべものですが、一定程度私たちのアプローチが誤っていないことを表していえるでしょう。
 これは、クリエイターやセールスチームによるプロダクト企画、パートナー企業の課題やニーズに沿った深い提案というものは前提としてありながら、やはりアートとストーリーの力があるからこそなのだと思います

 このように、ヘラルボニーはこれまで資本主義の世界に必ずしも公平な条件で参加できていなかった障害のある作家の力をお借りし、これを自社のビジネススキルを活用してレバレッジすることで新しい「かっこいい」を提供し、資本主義の真ん中で勝負しようとしています。

 それを支えてくださっているのはまず第一に作家の皆様ですが、同時に、世界の変化を敏感に感じ取り、それを無意識にでも日々の選択に反映しているお客様やパートナー企業様なのだと思います。ヘラルボニーはこれからもこのユニークなブランドを大切にしながら、日本で、世界で、より多くの方に出会えるように事業を進めていきます。

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ヘラルボニーのパートナー企業向けソリューションのページhttps://solutions.heralbony.jp/

ライフスタイルブランド「HERALBONY」のオンラインストア


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