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「社会にいいこと」をカッコよく。社員・顧客・取引先…ステークホルダー全体を共感で巻き込む【JAL&ヘラルボニー】

ヘラルボニーは「異彩を、放て。」をミッションに、企業様とさまざまなカタチでコラボレーションし、社会課題の解決を目指しています。

そして今回登場いただくJALさんとは、2021年より共創の取り組みを重ね、2023年にはヘラルボニーと業務提携を締結。イベントの開催やアメニティグッズのアート採用、動画制作とさまざまなチャレンジを進めてきました。

JALとヘラルボニーが出会ったきっかけ、ヘラルボニーとの共創によってどんな成果やシナジー効果が生まれたのか。

機内アメニティなどの商品開発を担当された、カスタマー・エクスペリエンス本部商品・サービス開発部部長・岩本正治さんとCX戦略部・戦略グループ主任・石川恭子さんに、お話を伺いました。

今回のコラボレーションで起きたこと

  • ESGとDE&Iの取り組みを同時に実現

  • 社内の雰囲気が前向きでイノベーティブに変化

  • 従業員・顧客・取引先企業…多様なステークホルダーからの共感

「社会にいいこと」をカッコよく。きっかけはひとりの社員の声

――JALさんとは2年前、客室乗務員の佐藤さんからご連絡いただいたことから共創がスタートしました。

岩本正治さん(以下、岩本):佐藤さんは普段は客室乗務員なのですが、コロナ期に社内ベンチャーチームに所属し新しいプロジェクトを立案していて、今回の共創の火付け役となってくれました。
その第一弾として羽田空港で廃材アート展が開催されました。

航空機部品廃材とヘラルボニーの作家のアートを組み合わせた作品が展示された

私も誘われて何気なく見に行ったのですが、実はそのときはヘラルボニーさんのことを存じ上げなくて。「ヘラルボニーって海外のアーティストの方の名前?」と思ったのを覚えています。

そんなこともあり、障害があるかないかは関係なく、すごく斬新で鮮やかな作品なので、純粋なアートとしてスッと入ってきました。

その後、私がちょうど商品・サービスの開発を担当する部署に異動が決まりまして。ヘラルボニーさんと何かできないかと考えるなかで、アメニティを作る企画がスタートしました。

石川恭子さん(以下、石川):ただ、コロナ禍の影響で構想から実現までにかなり時間を要しました。私たちは「早く実現したい!」と思っていましたので、そういった意味でも念願のコラボレーションでした。

ーーそう言っていただけるのは大変ありがたいです。

岩本:ちょうどこの時期、石油由来のプラスチック削減の取り組みの一つとして、機内食の容器をプラスチック製から紙製に変えました。ただ、容器のフタが紙製だと温度変化のために外れやすいという難点があり。スリーブ(帯封)をつけることになりました。その時に、社内のメンバーからスリーブにヘラルボニーさんの作品を起用したらどうかという意見が出まして。その提案に対しても「いいんじゃない!」とチームの反応は肯定的で、話が進んでいきました。

国際線ファーストクラス・ビジネスクラスの機内アメニティ
機内食のスリーブには、2次元コードを掲載。各作家の異彩のストーリーを読むことができる

――アメニティやスリーブが実現したときは、どのように感じられましたか?

石川:私たちはこれまでも商品・サービスを通じて、ESG経営の推進やSDGsの達成に向けて社会課題の解決に取り組んできました。環境への取り組みの一つとして、使い捨てプラスチック削減は、お客さまにもわかりやすいと思いますが、ESGのS(Social)に含まれるDE&Iの取り組みは目に見えにくいものでした。

しかしながら、ヘラルボニーさんとコラボレーションすることで、環境に係る取り組みとDE&Iの取り組みを同時に実現できたと思っています。これは過去になかったことで、社内に先行事例が作れたと考えています。

岩本:たとえ、私たちが開発した商品やサービスを「サステナビリティやSDGsのためにいいんですよ」と言っても、お客さまにそれを「不便だ」「デザインかっこ悪い」と思わせてはいけないわけです。やはりその両立が大事だと思っています。

その意味で本件では、「社会課題の解決の一助になる」と「お客さまに喜んでいただける」の両方を叶えられましたし、さらにその裏側にある豊かで厚みあるストーリー展開が実現できたことも評価しています。

――私たちも、「デザインとして素敵だよね」で終わってしまうとちょっと残念だと感じていまして。でもJALさんがハブとなって、ストーリーも含めて届けていただける点がとても意味のあることだと思っています。 

岩本:ヘラルボニーさんのストーリーは、機内で流す映像や機内誌でもお伝えしています。当初私が知らなかったように、世の中にはまだヘラルボニーさんの目指すもの、価値観を知らない方も多いと思いますし。とにかく多くの人に知ってもらいたいですね。

会社全体の文化・雰囲気も、チャレンジに対して前向きに変化

――社内にはどのような変化がありましたか?

岩本:今後ヘラルボニーさんの作品を、こういうものにも、ああいうものにも展開したいね、というアイデアが出始めています。他の部署やグループ会社から「ちょっとヘラルボニーさんの話聞かせて」「うちも一緒にやっていきたいから紹介して」と言われることも増えました。

石川:実は私が働くオフィスのフロアでもヘラルボニーエコバックをよく見かけるようになりました。「かわいい!素敵!」というふうに認知し、その先でヘラルボニーさんの取り組みを知り、段階的に社内における価値観のスイッチが変化しつつあると感じます。

新しい挑戦に対して否定的な意見がなく、臆せず「やってみよう」という雰囲気があるので、今後会社全体でDE&Iの取り組みを進めていく後押しになると思います。

岩本:その一例でいくと、JALグループでは障害のある社員が社内でコーヒーを出すサービスを手がけていたのですが、そのプロフェッショナルな技術を生かして、羽田空港のJAL国際線ファーストクラスのラウンジでお客さまにコーヒーを提供するサービスもはじめました。

社内の理解が少ないと心配する声も出たかもしれませんが、ヘラルボニーさんとの共創を通じて理解が深まっていていたためか、前向きにやっていこうという雰囲気でしたね。

――それはうれしいですね。ラウンジでご提供するコーヒーカップにも、ヘラルボニーの作家のアートを採用いただきました。

岩本:そう考えると、ヘラルボニーさんは私たちが変わる一つのきっかけになってくれた気もします。私たちは常に安全第一で、安定的にオペレーションをしていくことが大前提です。オペレーションの安定ということを考えると変化はある意味リスクになりかねません。

結果、変化に消極的な傾向もあったかもしれません。それゆえに「堅い」イメージがあったのか、今年度の新入社員からは「JALらしくない取り組みですね」と言われてしまいました(笑)。でも、それも含めて「いい変化」だと実感しています。

パートナー企業からも新しい共創が

――お客さまの反応はいかがですか?

石川:SNS等の反応を見ていますと、例えばアメニティのデザイン性や機能性が優れていることはもちろん、「ヘラルボニーとJALのコラボが熱い」「ヘラルボニーのアートをJALが起用しているのがいいね」など、今回のパートナーシップ自体を評価し、共感いただいている印象があります。

反応も、JALの従来の顧客層より若い層に広がっている感覚があります

岩本:先ほどお話に出たコーヒーカップは外国の方々にも好評で、「かっこいい」「かわいい」というポジティブなコメントを多くいただいています。

国境を越え、ヘラルボニーのアート自体がお客さまとJALとのコミュニケーションツールになっていると感じています。

――年齢や国境を越えて、より多くのお客さまに評価いただいているのですね。ステークホルダーの方々の反応はいかがでしょうか?

岩本:従来のパートナー企業やクライアント企業からポジティブな反応をいただきました。例えば、「実はヘラルボニーさんと接点があった」「興味があった」といった声ですね。「今後は3社で一緒にやりませんか」というような動きも出てきています。それはグッズやイベントだけでなく、アクセシブルツアー※などにも広げていきたいと思っています。

※発達障害のあるお客さまが安全・安心に参加できるツアー。ツアー実施前に「事前搭乗模擬体験会」や「事前搭乗体験会」を開催し、ツアー当日もお客さまの不安を解消するためのさまざまな工夫を取り入れている。

石川:アクセシブルツアーに関して、それ自体はすごくいい取り組みではあるのですが、私たちからの発信が広く障害のある方々に届いていないというもどかしさもあります。

その点ヘラルボニーさんは、障害のある方々に信頼ある情報発信源として世の中から信頼されている印象です。それを特に強く感じたのが、今回の能登半島地震の際でした。

――能登半島地震の際、災害時に発達障害などいろいろな特性のある方たちを支援するガイドラインをまとめた特設サイトを公開しました。

石川:その情報発信力を生かして、JALとの取り組みについても広げていただくことで、「私も旅行に行ってみようかな」と考えてくださる方が増えていく、そんな効果も今後期待しています。

――いろいろと広がってきましたね!

石川:世の中は、「誰もが生きやすい社会なら、私たち一人ひとりも安心して生きられる」という価値観に少しずつシフトしてきているような気がします。ただ、世の中の価値観を変えていく取り組みや発信は、自社だけでやり切るのは難しいと痛感しています。
これからは、お客さまやパートナーの皆さんのご協力を組み合わせて、みんなで解決していくという考え方が必要になってくる。その第一歩が今回の共創だと考えています。

――ヘラルボニーもアート事業だけをやりたいとは思っていなくて、アートを切り口にして、障害のある方たちがこうして存在している権利を発露させ、誰もが輝ける社会を構築していくような運動体でありたいと考えています。そうやって皆様と共に、社会を変えていきたいですね。


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