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香りと記憶

東京都国立博物館に古代メキシコ展に行った。

マヤ文明が好きだとは自分でも気がついてなかったけれど、セノーテを泳ぎたいと思い立って、
メキシコまでわざわざチェチェンイツアというピラミッドを見に行ったのだから、
きっと縁はあるのだと思う。

みたかったのは、
パレンケという古代都市から出土された、
当時の王様がつけていたとされる翡翠のマスクだったけれど、
残念ながらそれは展示されていなくて、
今回の目玉は、同じパレンケから出土された赤の女王のマスクと言われる、
孔雀石を組み合わせで作られたマスクだった。


白目のところに翡翠がはめられていた。
翡翠の石は、他にもそこかしこに使われていて、
緑という色には、 生命、水、植物のエネルギーが宿ると信じられていたという。

メキシコという場所は
色が圧倒的に力と意味を持っている気がする。

色と輪郭がはっきりして、全てが濃く見える。
生きてるものも、そうじゃないものも、なんか毒々しくて、生々しい。

赤、
オレンジ、
黒、
緑、

自然の中で見た色も
街の雑貨屋で見た色も
暗いバーでみた色も、

色の記憶がその国の記憶になっているみたいに色の印象は強烈だった。

古代のものをたくさん展示する場所にいると、
薄暗いせいもあると思うけれど、
じっと覗き込んでるうちに、
その頃の人達の暮らしや、どんな思いで暮らしていたのかが映画を見ているように浮かび上がってくる。

妄想だけど、1人では作れない妄想..

ジャングルのような濃い緑と白っぽい月の下で、階段状の大きなピラミッドの下、
催事をしている様子が浮かぶ。

動物と人間は今よりもっと入り混じっていて、小人サイズの人間とも動物ともつかない生き物もいる。

生贄の文化が盛んで、祭りの日はみんな興奮している。

火が焚かれて、
太鼓や鐘が打ち鳴らされて、
沢山の香炉で炊かれた煙と
生贄の置かれた大きな台

動物と人間と真っ赤な血

叫び声と痛みと、
死と再生の世界観が生々しい。

美術館を、歩きながら、
別の所では
全く違う祭りの光景を見ている。

へー、面白い。
私にもこんなことが起こるんだ。

巨大な香炉から登る沢山の煙
これは何の匂いだったのだろう?

南米でセージの代わりに炊かれる樹脂を蒸留したパロサントかもしれない

黄色い花の咲く豆科の植物パラメラ

もっと、麻薬作用の強い私の知らない植物かもしれない。

そんな名前が浮かんできた。

帰ってパロサントとパラメラの精油の香りを嗅いで、つけてみた。

香りの背後にある植物の記憶と、昨日私が感じたことが相まって
香りが体にまとわりついてきて、その香りが話しかけてくるみたい。

精油はただ嗅ぐだけでも、芳香成分が脳と神経に働きかけて、
ストレスを減らしてくれたり、いい気分にさせてくれたりするけれど、

記憶と結びついた時には、精油の生きた有機物の側面がより深く心に入ってくる。

私たちは、
いろんなことを忘れて生きているから、
香りと記憶というテーマでは、いろいろなことができそう。