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Project monoNoFuT -#006 ver2.0 琴葉-
概要
プロジェクトモノノフサムライパンクスに登場するオリジナルサイボーグ「叶香(かのか)」「琴葉(ことは)」の紹介です。
目次
NFT
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紹介文
行方知れず同然だった彼女をずっと探していた人との出会いが戦闘一つだった彼女を変化させます。
「これからの私は、あの人の為にあります。」
新しい記憶と過去の記憶との狭間で、彼女は戸惑いながらも生きていくことを決めました。
背景
「仮想『神代ちゃんver1.05』5体展開!
接続先『叶香』!」
神代と雪華は歯医者にある治療台の様なベッド?に横たわってサイバー攻撃の準備を始めた。
次々とスクリーンが映し出され、コードやログが画面上で滝の様に流れ始める。
「仮想分身3体展開します。
プロキシサーバー20ヵ国に展開。
叶香さんからの接続完了、待機中です」
その間舞蝶(あげは)は叶香の隣のイスにちょこんと座って2人を眺めていた。
「…あなたは手伝わないんですか?」
叶香が不思議に思って尋ねる。
「私の得意とする所は別だからね。適材適所よ。」
そう言って避雷針の様な刀2本、ポンポンと叩いた。
「叶香侵入!
FloatingBits役員3名連絡先特定!システムスキャン!」
「…完了。
3人とも最新のセキュリティアップデートしてないですね…
うわ、1名2年前からやってないです」
「侵入ターゲット確定!
プロキシ経由で『穴』にウィルス注入!
バックドア確保!」
「ログ削除バッチ起動しました。対象は現在会議で寝てますw
状態に変化なしです」
一時の沈黙。
「OK、秘密鍵断片確保!
他の2人の連絡先も分かったわ。
直ぐに2人同時にコンタクト」
「コール開始…」
神代と雪華がハッキングをかけている最中手持ち無沙汰の舞蝶は自分のエモノでウォーミングアップをし始めた。
舞蝶は物理攻撃とスピードにパラメータをほぼ全振りしており、高性能演算処理は電脳ではなく超高速移動時の攻撃や姿勢制御、回避行動に使用される。
彼女のエモノはバイブロ・プラズマブレイド(V.P.ブレイド)と言って、超振動とプラズマを発生させ焼き切るシロモノだ。ブレード部分に触れただけで大怪我をする可能性がある。
発生タイミングは彼女自身が自在に操れる。刃渡はおよそ70センチ程度。
ツカの部分に穴があり、それを利用して二つの刀をクルクルと回転させながらまるで舞っている。
しなやかで流れるような可憐な動き。先日のような、戦車から放たれた大砲のような破滅的な攻撃力は想像できない。
「綺麗…」
思わず口をついて出た言葉に舞蝶は照れたような笑顔を作るとするりと舞をやめた。
「はーい、秘密鍵ゲットぉ〜!」
神代が声を上げる。
「神代ちゃん、叶香ちゃんお疲れ様!」
「雪華もね〜!」
二人の少女はベッドから降りながら片手で軽くハイタッチを交わした。
「ここから地下の施設に移動するわよ」
「神代、ご苦労さん」
舞蝶の言葉にヒラヒラと手を振りながら神代は答えた。
「これからFBチェーンに攻撃を仕掛けるわ。
ただね〜、コンソーシアムチェーンだから既存のバリデータを乗っ取るしかないんだけど、51%攻撃を仕掛ければ確実にバレるわ。
ここも多分特定される。」
移動しながら神代が説明する。
「ここの地下にサイバー戦用のアクセラレータがあるのよ。
この施設を放棄した時に会社管理から外れたやつ。
今回の相手は世界最大大手取引所FloatingBits社相手だからね。
流石にそれがないとキッツイわ。
あとサイバー攻撃中動けない連中は地下にいる方が安全でしょ?
…ちょっとあと思うところがあって叶香も地下がいいと思う。
一石二鳥よ。」
床に設置された分厚い鉄板の扉をこじ開けると、舞蝶を残し神代、雪華、叶香の三人は地下に降りていった。
「舞蝶は唯一あるこの扉から敵を入れないこと!
琴葉を取り戻したかったら死守!」
「…わかったわ!」
降りる途中、叶香はふと舞蝶の方を見た。
舞蝶はそれに気づいてぎこちない笑顔を見せると控えめに手をふった。
思わず叶香も手を振ってしまう。
「…」
気恥ずかしくなって急いで神代達の後を追った。
後ろで重苦しい鉄板の扉が閉まる音がした。
暫く螺旋階段を降ると地下施設に到着。
冷たい白いネオンの光が辺りをぼんやりと照らしている。
殺風景なコンクリートの壁にはサーバーがびっしりと詰め込まれておりチカチカと光っている。
先ほどと同様のベッドが5つほど設置されてる。
上と比べるとかなり狭い。手榴弾を2つ3つ投げ込まれたら終わるだろう。
「うわぁ…カビ臭い…」
雪華が鼻を抑える。
「文句言わないの」
神代はそう言ってベッドに腰を下ろすと早速スクリーンを表示させポチポチと操作をし始めた。
天井からヘッドギアが2つ下がってくる。
1つはヘルメットのように被り視界まで覆う作りになっている。2つのアームで天井から固定されており装着すると身動きができない。頭全体に無数のケーブルが刺さっていた。
こちらは神代のベッドの方に吊り下げられた。
もう一つはサングラスのようになっており、接続されているケーブルは細い2本のケーブルだけ。
こちらは雪華のベッドの方へ。
「ブロック生成後、15コンファメーションでチェーンがファイナライズされる…大体15分位ね。」
「15分…
コンソーシアムをのっとって、セルフィッシュマイニングでブロックを取り込んだ後、15分間ブロック生成を成功させないといけないわけですね…」
雪華はウヒーと苦笑しながらサングラスを装着した。
「15分耐えれば私達の勝ち!
失敗したら…舞蝶が退路を作ってくれていることに賭けるしかないわね…」
叶香にもベッドに座るように指示。
「さて…と。
準備始めましょうかね」
神代は両手を組んで前に突き出し指を鳴らした。
「仮想『神代ちゃんver1.05』5000体導入するけど雪華も同程度用意しておいて。
インスタンス共有したから同期お願い」
「んご!
5000!?
ひ〜!わかりました〜!」
ぼやきながら雪華は言われた通りVMを構築し始めた。
一方舞蝶は、一階の施設を詳しく確認していた。
今回は会社の案件では無い。
通常通りの支援や援護は全く期待できない。
舞蝶の苦手とするサイバー戦は通常通り神代か雪華がサポートしてくれるはずだから問題ないとして、物理的な攻撃は全て自身で対応しなければならない。
施設の作りを把握しておく必要がある。
基本的にサイボーグのメンテナンス施設という事もあり色々な機械があり、遮蔽物になるので弾丸を避けるには都合は良さそうだ。
コンクリート作りで意外と壁も分厚い。
ただし天井は低く通路が多い為飛んだり跳ねたりといった事は難しそうだ。範囲攻撃を多様されると部が悪い。
施設の外は街中に設置されていて、広めの駐車場が東西南に広がっている。北だけ植木がありその背後はすぐ別のビルが立っている。
「さぁて、どう守ろうかしらね」
「一番セキュリティの甘いバリデータを特定!
Fiatz社!
うわぁ…ハッシュパワー15%位しかないです。」
雪華がぼやく。
「構わないわ。
今回の事件が明るみに出た時、FloatingBits社がスケープゴートに仕立て上げるのに丁度いいかも。逃げ道も作っておいてあげなきゃね。」
「了解。
…ネットワーク構成把握するのにちょっとかかります。」
「OK、済んだら一気に行くわよ!
記憶返却のトランザクションを取り込んだブロック作成!
仮想『神代ちゃんver1.05』5000体稼働!
ハッシュパワー合計60%位になる見込み。
セルフィッシュマイニング開始!」
神代の処理速度が一気に増した。
彼女のヘッドギアが火花を散らし始める。
凄まじい計算速度に部屋の機械が一斉に唸り声を上げ始めた。
「同じくVM5000体稼働!
ハッシュパワー69%!
え〜ん、10%行かなくてごめんなさい!」
「69%あればとりま大丈夫かな。
雪華あとでお仕置きね!(嬉)」
「神代ちゃんひどい!(泣)
Fiatz社ネットワーク構成把握しました!
詳細共有します」
「叶香へ接続。
プロキシ経由してFiatz社のネットワーク侵入!
ウィルス注入!
バックドア確保!
叶香への接続切断!
直結!」
矢継ぎ早に神代が状況を伝える。
雪華のスクリーンに赤文字のログが滝のように流れ始めた。
「アラートでました!
気づかれます!」
「構わずセルフィッシュマイニングしたチェーンをリオーグ!」
「オンチェーンにて確認!」
「舞蝶に連絡!
ここから15分耐えれば私達の勝ちよ!」
「…了解」
1階入り口付近。
雪華からの連絡に舞蝶は短く答えた。
程なくしてヘリとスピナーのエンジンの唸り声が夜空に響き渡り始めた。
舞蝶は両手に持っているV.P.ブレイドを強く握りしめた。
白く輝き始めたそれはバチバチと火花をちらし始める。
10台ほどの装甲スピナー、3台のヘリがビルの合間や首都高の立体分離帯を掻い潜りながら猛スピードでこちらに向かってくるのが見えた。
ヘリはホバリングしながらサーチライトで施設と舞蝶を照らし始めた。
施設に隣接している駐車場にワゴン型の装甲スピナーが到着。
FloatingBits社のロゴが見えた。
回転灯が周りを青と赤に染め上げる。
中からサイボーグ達約50人程が訓練された動きで整列し、舞蝶に銃を向ける。
近距離武装したサイボーグもいるようだ。
舞蝶のモニターにチカリと赤い光が灯ったと同時に舞蝶は首を傾けた。
ふわりとゆらめいた髪の毛を弾丸が掠めていった。
それを機に一斉射撃が行われる。
「警告無しですか…
全く怖い連中ね!」
ぼやきながら身を低くして銃弾を避けるように横に駆け抜ける。
エモノを地面に突き立てて物理法則無視の直角移動。
スピードを落とさず装甲スピナーの真正面に武器を叩きつけた。
まさに大砲。
分厚いはずの装甲車の正面がまるで薄いアルミ板を殴ったようにへしゃげる。
舞蝶が飛び去った一瞬置いて車両は大爆発を起こした。
爆風で数人が吹き飛び部隊の体勢が乱れる。
「MoonBitsの舞蝶だ!
接近戦に注意!
撃ち落とせ!」
誰かがそう叫んだ。
一斉に爆発した車両の方角に目掛けて射撃が始まる。
「はっ!」
掛け声と同時に火だるまとなった車両がFloatingBits社のサイボーグたちの左翼に吹っ飛んで行った。避け損ねた4人巻き込まれた模様。
舞蝶から20メートルほど離れた所でボシュっと筒が抜けるような音がした。
当たらずともターゲット付近で高温の爆発を起こしその火力で装甲を融解させる対戦車砲だ。
舞蝶のスクリーンにぽっと赤い点滅が表示される。
緩やかな曲線美を描いていた彼女の太ももの筋肉がビキビキと盛り上がった。
さっきの跳躍よりも更に速くロケット目掛けて舞蝶は地面を蹴った。
すれ違いざま、弾丸が爆発するよりも早く真っ二つに叩き割る。
ロケット弾を発射したサイボーグに体当たりを喰らわせ急停止。V.P.ブレイドで近くにいたサイボーグ達3人を瞬く間に戦闘不能にしてしまった。
直後先ほどのロケットが付近に着弾し爆発。あたりを火の海にした。
ものの数十秒で7名以上のサイボーグが戦闘不能。
辺りがざわめく。
これが業界トップクラス。
「ついてこれるかしら?」
燃え盛る炎を背景に鋭い目つきのまま舞蝶はそう微笑んだ。
「舞蝶ちゃんがFloatingBits社のサイボーグと交戦状態に突入しました!」
「OK!
あっちは花火が楽しそうね!w」
「…あの」
雪華が続けようとして一瞬躊躇する。
「どしたの?」
「…えと、FB社が他の協力会社に共有した作戦目標も入手したんですが…」
叶香の方をチラッと見た後視線を落とした。
「叶香の頭部破壊、と出てます…」
「!!」
叶香は驚きのあまり無言で瞬間的にベッドから立ち上がった。
一方の神代は冷静だった。
「…知ってるわ。
まぁ、あなたの義体から出る信号と位置情報を照合した結果でしょうね。」
神代がスクリーンを忙しく操作しながら早口でそう言った。
「そ…んな」
「上で鍵を盗んだ時、FloatingBitsの役員会の情報も入手したのよ。
それには人身売買NFTから復帰させた社員がもしも逃げた際は殺処分するようにと記載されていたわ。
あなたに侵入した際、FloatingBitsからの信号は全部拒否るように設定弄っておいたから緊急停止されることはないわ」
感謝しなさい、と端的に神代は言い放った。
叶香はよろよろとベッドに寄るとどさっと腰を下ろして両手で顔を覆った。
たったの1年ではあったが、FloatingBitsは必死に縋ってきた自分の居場所だった。
それが今音を立てて崩壊した。
居場所どころではない。会社は排除命令を出している。
彼らは叶香の生身の身体をNFTとして売り払い資金調達した。
彼女の記憶も奪いブロックチェーン上にロックした。
今度は命までも奪おうと言うのか。
叶香は覆っていた両手を解いて虚ろな目のまま神代と雪華の方を見た。
今、舞蝶達は赤の他人の為に命を賭けて戦っている。
たった3人で世界第1位の企業に挑んでいる。
勝ち目があるはずもない。
(私が破壊された方がむしろ3人の為)
せめて何人かFloatingBits社員を道連れにして逝こう。
叶香はフラフラと立ち上がったーー
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