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尾道日記

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ライターズインレジデンス尾道2019。1月後半の滞在中の日記と、帰ってきてから振り返って思うこと。
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「尾道ライターズ・イン・レジデンス」のこと。

「尾道ライターズ・イン・レジデンス」のこと。

「尾道日記」のシメは、「尾道ライターズ・イン・レジデンス2019」のこと。一緒に暮らした、ひとクセもふたクセも、無くてななクセもあったレジデンスの人たちのことを綴っておきたい。

「尾道ライターズインレジデンス」とは?
「尾道ライターズ・イン・レジデンス2019(以下、OWIR)」は、ひらたく言うと「真冬(オフシーズン)のゲストハウス「みはらし亭」の部屋をリーズナブルにお借りして滞在する、物書きの

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山の道であり、海の道でもある。

山の道であり、海の道でもある。

尾道のまちは、線路を挟んで海側と山側に分かれていて、山側の斜面には階段と坂道がうねうねと走っている。線路を渡るルートは、歩道橋とトンネル、そして踏み切りのいずれかでつくられていた。

「なぜ、ここは歩道橋でこっちはトンネルになったんだろ?」と思うけれど理由はわからない。地形や地質、あるいは高低差、それとも土地所有者の好み? それぞれの道ができた時代のやりとりを想像しながら歩いた。

尾道の人と話し

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旅先で、レコードショップに。

旅先で、レコードショップに。

20歳のとき、初めてひとり旅をした。

バイト先で知り合った北海道の友達の家を訪ねて、そのまま電車で南下して京都まで帰ってくる数日間の旅。大学の先輩に時刻表の見方を教わって感動し、切符に印字された「途中下車無効」の文字が「途中下車有効」になる長距離切符の存在を知ってときめいた。

千歳、小樽、函館、青森から仙台、そこからは新幹線で横浜、鎌倉へ。
電車を降りて街を歩き始めると、いつも最初にレコードシ

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〆切のない原稿のために余白を残す

〆切のない原稿のために余白を残す

滞在している和室は、窓からの光を遮るのは障子だけ。夜が明けると自然に目が覚める。天気がよければ朝焼けがはじまり、やがて向島から朝日がのぼる。夜には、竪額障子のガラス越しに月を眺めながら眠ったこともある。自然に身体に添わせて寝起きすることに、静かなしあわせを感じている。

滞在4日目は、はじめて予定のある日だった。

初日に荷物を置いた後、坂を降りて行くと美容室を見つけた。尾道の山手でよく見かける3

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人の話だけをたよりに知らない町を歩く

人の話だけをたよりに知らない町を歩く

火曜日から毎日、階段を1000段くらい上り下りしている。

真冬だというのに、尾道の日差しは明るくあたたかく、100段目くらいでうっすら汗ばむ。息がきれると振り返って見る、きらきらした海を小さな船が行ったりきたりする風景――。

カンカンカンと踏み切りの音が響いて、黄色い電車ががぁーっと横切っていく。この景色を見ていると、張りつめた気持ちがゆるむ。きげんを直してまた階段をあがる。突き当たりを右に曲

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