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「部下と何話せばいいの!?」 ”攻め”の1on1推進プロジェクト【前編】

こんにちは。三菱電機変革プロジェクトnote編集部です。
 
1on1ミーティング(以下、1on1)。月イチなど定期的に上司と部下とで面談し、対話を通してお互いを知り、次のステップにつなげるコミュニケーション手法です。
近年は多くの企業で導入が進んでいるので、経験したことがある方も多いかと思います。
 
自身の組織で既に導入されている方は、どのような1on1を行っていますか?
業務の進捗確認?査定のための面談?親睦のための雑談?
 
三菱電機では現在、1on1をシンプルなコミュニケーションの場としてだけではなく、「組織を強くするための一人ひとりの成長の場」として捉え、社内への導入・普及に努めています。
 
今回はそうした「攻め」の1on1推進に取り組むメンバーにお話を伺いました。

メンバープロフィール

――1on1推進活動の背景を教えてください。
 
原田:私の実体験がきっかけになります。私は17年所属した静岡製作所営業部で課長となりました。するとそれまでフランクに会話していた課員との間に、急に「上司と部下」という壁を感じました。「これはマズい、何とか壁をなくしたい」と思ったのが一つの大きなきっかけです。
 
また、課長になった当時、周囲のモチベーションに課題を感じていました。みんな何か思うところがあるようなのに、それを言葉にする雰囲気がなく、何かに遠慮している感じ。その状況を変えようとコーチングやカウンセリングの手法などを学んで試して・・。その過程で1on1に出会って、ひたすら学びました。
 
最初はうまくいきませんでしたが、そうして対話を続けたところ、みんな段々と抱えている想いを話してくれるようになりました。これが主体的な行動につながり、結果として売上の伸びにもつながったと確信しています。
 
これを全社に広められたら会社としてとても大きな波を起こせる、と思っていたところで今回の「変革プロジェクト」が始まり、提案したのが始まりです。

――原田さんの1on1案を聞いて、チームの反応はいかがでしたか?
 
藤井:私が所属する生産システム本部では2021年度から1on1を導入していました。私も受けてみたところ、もう本音で話し合えると思っていた課長とも「あ、実はそんなこと考えてたんだ」とお互いに新しい気付きが得られましたし、周囲でも2-3年目の若手が課長とフランクに話せるようになるなどの変化が見られました。なので、コミュニケーションの質を高める良いツールだと実感していて、全社への展開も賛成でした。
 
井出:実は私は最初1on1懐疑派でした。「1on1って要は面談でしょ?」と思ってて。上司との進捗・成果の確認面談とか好きじゃなかったので・・。原田さんに「1on1やると組織が活性化するんだよ」と言われても「ふ~ん」と生返事な感じでしたね。

――井出さんが推進派に切り替わったきっかけは?
 
井出:社内の研修で1on1の講演会があり、そこで「1on1は部下の背中を押して成長を促し、組織を良くするためのもの」「強い組織を作るためのもの」という話を聞いたことですね。元々「組織風土改革は強い組織・競争力ある組織を作るためのもの」と考えていたので、そこにはまって。
 
ただ、それでもまだ半信半疑程度だったんですが、その後も1on1に関する研修で管理職の方々とお話したら、「どうしたら部下が本心を話してくれるか」「部下のために自分は何をしたらいいか」と管理職の方は管理職としてすごい悩んで一生懸命考えていると知って・・。上司と部下、双方の理解や成長を促す1on1の重要性を改めて感じました。

――1on1を全社に展開する案に対して、社内の反応はいかがでしたか?
 
原田:同じタイミングで人事部も1on1の全社展開を検討していましたし、考え方自体は合致していました。一点、人事部はその立場上、全社に対して広く認知・普及させる必要がありましたが、私たちのチームは「自分たちから変わる」をコンセプトにしていたため、より積極的な部門から、より深い部分まで踏み込んだ1on1を展開することとし、お互いに役割分担・調整しながら社内に導入していきました。
 
――実働することになる管理職の方々の反応はいかがでしたか?
 
原田:1on1について何となく知っている人はいても、実際に理解して実践したことのある人は多くなかったので、やっぱり最初は「コミュニケーションね」「今の面談と何が違うの?」と、あまり「ピン」と来てなかったのではないかと思います。

――それを今のように積極的な推進策に舵を切らせるに至ったきっかけや工夫は?

原田:私の説明だけでは井出さん一人を説得するのもままならなかったので、社外の第一人者の力を借りて実際に体験してもらうのが一番だろうと思い、『ヤフーの1on1』の著者である本間浩輔さん(現・Zホールディングス(株) シニアアドバイザー)を講師に招いて1on1を体験する講習会を開催しました。
 
その際に本間先生から「経営的にこれが必要だという理解が無いと全社的に広げるのは難しい」とアドバイスがあり、まずは役員級の方々に体験してもらうことにしました。

講習会で本間先生から「今までの面談でよく見られる、上司が部下に自分の意見を伝える/押し付けるやり方では管理職の劣化コピーを増やしてしまう。それで会社に未来はあるのか?」「真の成長を促し組織を強くする1on1が必要」と力強く説いていただいて、その理念が多くの役員に刺さったんだと思います。「1on1はコミュニケーションのためだけじゃない」「部下自身が考える機会を設けることで成長を促す」「その先に勝てる組織を作るという目標がある」という言葉でみなさんの目が変わり、火が付いたのを感じました。

本間浩輔 先生

原田:正直、私自身、当初は「部下の想いを解き放つサポート」が主と考えていて、そうすることで楽しく働ける、結果もついてくる、という説明の仕方でした。でもそれは経営者視点からだとちょっと視座が低かったんですね。本間先生の言葉で役員層に火が付くのを目の当たりにして、自分の中でも捉え方・考え方が変わりました。
 
その後は、モデル部門を選定して徐々に研修を広げていくつもりだったんですが、上記の研修に参加した役員があちこちでオススメしてくれたこともあって多くの拠点から「うちでもやって欲しい」と希望が上がりまして。23年度末までに各地で約3,000人が研修を受けるに至りました。

――各地での1on1研修を進めるにあたり、工夫していることはありますか?
 
原田:体験と深掘りを並行して進めています。まずは管理職に何のために1on1をするのか理解してもらう。ここで参加者同士で1on1を実践・練習してもらっています。そして、大事なのはその場でフィードバックを受けること。「今のは、こう感じたのですが、どうですか?」と振り返る。理想は部下から上司に対してコメントすることなんですが、管理職向けの研修なので参加者同士でフィードバックしてもらっています。
 
また、1on1の学習機会を増やしてたくさんフィードバックを得られるよう、研修をサポートしてくれるファシリテーターを増やすための研修も並行して展開しています。
 
井出:その他にも、管理職ごと、拠点ごとに置かれている環境が異なるので、それぞれの課題感に合わせて研修のカリキュラムや当日のゴールをカスタマイズするなどして研修会の満足度が高まるよう工夫しています。 

藤井:何より原田さんと井出さんが本気で取り組んでいることも推したいですね。この1年半で何十回と各地を行脚して、その拠点、参加者に合わせてカスタマイズしたり、その場でフィードバックを伝えたり。ただ「1on1が大事ですよ~」と言うだけじゃなくて、自分たちで足を運んで熱意を伝えて伝播させているのは大きいと思います。
 
原田:社外セミナーで当社の取り組みを紹介した時に、その点は他社の方々に驚かれましたね。「えっ、そこまでしてるの!?」って(笑) 研修して終わりじゃなくて、当日の様子をアーカイブに残して、アンケート取って、何が課題として残っているのかを確認して次につなげて。このアフターケアが大事だと思うんですが、驚かれました(笑)
 
 (後編に続きます)