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楽器の練習ができそうな場所=肉食獣に襲われにくい場所 山中りんたそ

 1ヶ月ほど前の天気の良い日曜日の午後、その日ずっと家にこもって本を読んでいた罪悪感を紛らわすために散歩にでかけた。我が家の近くは川が流れているので、その周りを橋を渡ってぐるりと1周するコースを歩いた。

 普段見ている風景のはずなのに、歩いてみると自動車に乗っている時とは景色がゆっくり流れるからだろうか、今まで知らなかった面白い場所がたくさんあった。「豆もやし製造・バナナ加工」と書いてある看板(なぜこの2つなのかは不明)や、立派な山門を構えているお寺、車1台分ギリギリなのに一通でもなんでもない路地裏など、家から半径1kmも無い範囲に魅力的な場所いっぱいである。そこで歩きながら、自分に刺さるお気に入りのスポットを探してみることにした。

 厳正な審査の結果、優勝したのは線路の高架下にある歩行者用のトンネル。というのも、私は子どもの頃から高速道路や線路の下の空間が好きなのだ。おそらく、お猿さん時代の本能が洞窟っぽい場所を求めた結果であるとは思う(子どもの頃からずっとあだ名はサルである)が、今まで見てきた中でも近所にあるその高架下は素晴らしい。トンネルを抜けた先が丁字路になっていて、手前から覗くと向こうに広がる景色がよくわからないのがそそる。

 ふと「ここで楽器の練習してえなあ。」と思った。もちろん、リコーダーや鍵盤ハーモニカなどではなく、サックスやトランペットなどの楽器である。小学生の頃、1回だけ高架下でトランペットの練習をしている人を見たことがあり、密かに憧れをもっていた。秘密特訓。みたいな。みんなの前で堂々と努力するのは恥ずかしいけど、その影の努力している姿が誰かに見られる場所。的な。

 そこからは妄想がどんどん捗る。楽器を持っていたらどこで練習するか。秘密特訓感は欲しいけど、全く人目につかないのは気に入らない。難しい性格である。色々考えたのだが、家から少し離れた場所を流れている大きな川の河川敷が第二候補地にでてきた。だだっぴろい場所なので、サイクリングロードや広場からは距離がある場所。でも、なんとなーく人目にはつく場所。

 今、候補地として出している場所、バリバリお猿さん時代の本能丸出しである。だって、洞窟っぽいトンネル。そして川を背後にした眺望のいい河川敷。どちらも、肉食獣に襲われにくい場所。それならと、樹上とかどうだろうかと考えた。うーん、いいわ。てな理由で、楽器の練習ができそうな場所=肉食獣に襲われにくい場所というアホな結論に至ったわけである。

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