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ヒロセはこんな人(だと思う)

【あわせて読みたい:これは短編「愛を犯す人々①フェン」の付録です。読むと二度美味しくなる裏設定を、全部載せでお届け。ヒロセ嫁バレを完全にブロック、ヒロセの好きなもの。他】

 のっけから、私の心のアシスタント花野さんにインタビューに行ってもらいます。

花:なんか…意外というか、意外としか言いようがないというか、本当に意外にフツメンなんですね。フェンと比べると失礼ですが、その…
ヒ:そうですか。
花:背もそんなに高くないですよね。170切ってますよね。けしてブサメンではないですし、清潔感もかなりありますが、イケメン!て感じのフェンの旦那さんから想像されるフェン好みの男性像とはかけ離れて違います。
ヒ:そうですか。
花:いい加減怒ってもいいですよ。
ヒ:怒ってほしければ怒りましょうか。でも怒ってはいないからな。怒れないな。
花:はあ。この笑顔が曲者なんですね。なんかキュンと来た。
ヒ:そうですか。
花:女性、好きなんですね。
ヒ:はい。
花:性的な面でですか。
ヒ:僕はもちろんですが、大事なのは女性の感覚じゃないかな。その意味では、喜んでもらえてますよ。僕のことを性的な意味で好きな人も多いと思う。僕は、彼女たちが僕で感じてくれてると、すごく感じるんですよ。そういう意味で女性が好きだし、性的に好きです。
花:わわわ、きゅうに、はなしだしました。
ヒ:そうですか。
花:あ、戻った。多いと思うとは恐れ入ります。私も好きですか。
ヒ:あなたが僕のことを好きならね。でも、好きじゃないでしょう。
花:好きになりつつありますが。
ヒ:そうですか。
花:埒があかないので帰りますが、LINEいいですか?
ヒ:そういうのは親しくなってからしかしないんです。
花:親しくなる時間がないのが残念でした。
ヒ:そうですか。

 花野さんありがとうございました。ディスる割に落ちかかってましたね。一応、助言しておくと、ヒロセは連絡を全て、シークレットモード下のグーグルで行っていて、フェンの電話番号は「高山祐樹」で会社のフォルダに入れられ、住所が大阪事務所です。実在の社員な上、06ナンバーもちゃんと入ってます。着信やメッセージがあっても音一つ鳴らず画面一つ変わりません。履歴は即消しです。LINEは彼女とは当然しませんので。騙されましたね。

 ヒロセには妙な色気があるんですよね。わかります。目か手か声でしょうね。派手なところはないんですけど、ものすごく落ち着いてて、クッション専用みたいな外見の割に媚びない。俺が一番とか言わないけど、ずっと、一番でいたいのにな、って言ってるタイプ。実は一番じゃなくてもやれれば気にしませんが、床上手で精神的に安定しているうえ、会わない時は塩対応なので、そのうち主にメンヘラ女子が離れられなくなり、お弁当作ってもらったり、体洗ってもらったり、アクセサリーや最新のガジェット買ってもらったりします。別に欲しくないんですがもらっておきます。困ったなって言うけど、なんの興味もないので全く困ってません。修羅場結構多いです。公共の場で泣かれたり平気でしてます。ここで、人生返してよとか言われてマジウゼーと思わないところがヒロセの神ポイントです。何も考えずに、黙って泣き止むのを待ちます。神対応。こうして数々の修羅場を28くらいまでに経験し、随分落ち着いてしまいました。くどくない女性とわかるまで待ってから、くどくない女性と付き合うようになり、そこに一人だけ残ったメンヘラちゃんがいまの奥さんですね。やっぱりそういうの好きなんだ。

ヒ:彼女には僕がいなきゃね。

 思い切り共依存してます。奥さんは大手広告代理店事務でいま、育休中。一歳の娘を育てながらの妊娠生活が意外にしんどくて、仕事辞めて子育てに専念したいなって思わなくもない。ですが、育休とっちゃったし、会社が大きくてなにかと福利厚生がいいので、押しの弱い上司に相談して時短で仕事は続ける予定です。

 フェンに会った頃のヒロセも30前後。ただし年収ベースで比較すると、出世レースではフェンのほうがまあまあリードしてましたし、今もヒロセは3周回は遅れてます。ヒロセはそういう意味でもフェンがあまり付き合わないタイプで、これに関してはフェンも、未だに腑に落ちてません。まあ恋愛偏差値的ななにかが釣り合ったか、そうでなければもともと、フェンが頭で恋愛しがちでで、本人は気づいてないけど本当は釣り合い悪い方が好みか、でしょうね。

 ヒロセにも、フェンはいつもとはちょっと違ったタイプ。良くも悪くもフェミニンな女性、全体的にスイーツ女子比率が高いなか、「食べ物に喩えるなら?」と訊かれているのに「終電前最後にオーダーするショートカクテル」と答えたくさせる? フェンみたいなのは異色です。インテリなのに、時々単純な理由で子供みたいに照れたりするのが、可愛くて仕方ないなぁと思ってます。やりとりが知的なのもいいなと思ってて、それでもフェンの話はたぶん2割くらいしか理解できていませんが、フェンが好きなこと嫌いなことは全部、暗記してます。毎日毎日、時差出勤で早起きなフェンと同じ電車に乗ってたくらいですから、真面目なのかと思いきや、主な理由は「フレックスなので前倒しに出ると夜遊べるから」でした。あと朝は上司がいないからサボれる。もちろん、当時の婚約者である今の奥さんは、ヒロセがフレックスだったのを知りません。お弁当作れない日があったのは、ヒロセが早起きだったからですが、それでも頑張りました、とにかく結婚して、妻の座を得たかったから。そしたら、いざという時にも訴えられますからね。来ないんだけどね、いざという時。ヒロセもヒロセで、ピンのように自分を留めておいてくれる女性を求めてはいて、それがむしろ安心感になってる節があります。必死で隠します。しんどそうだけど、敢えてそう行くんですね、ヒロセよ。

 フェンと会った頃は中国語のビジネス翻訳スタッフ、いまは漢方の通販会社で総務してます。うーん、怪しいの、堅いの?フェンとはそろそろ終わりかなって思ってますが、フェンと会えるうちはフェンが会いたいと思ってるわけなので、拒む理由はないです。当然のように妊婦とも全然OK。しても孕ませられないことを考えると、雄としての本能に性欲が勝ってるタイプですかね。漢だね。

 ヒロセの好きなもの。俳優になった中学の同級生が出ているドラマのチェック。甘くないほうのだし巻き卵。と言いつつ、スタバで季節の変わり目に出る新しい甘いやつ。奥さんと娘が同じ姿勢で寝ている姿をみて、こっそり布団を掛け直してあげる時間。早く帰宅した日に行く近所のジム、でゆっくりチェックする彼女(たち)のメール。彼女(たち)。スポ根少年漫画。電車で席を譲ってあげる時。季節の変わり目に高島屋に行ってする、スーツのセミオーダー。頑張ってもどうしても思い出せないんだけど抱きしめるとすぐに思い出す、フェンの香水、に混じったフェンの匂い。を、またすぐに忘れてしまう、ちょっと寂しい感じ。

以上です。

本篇は、こちら:

フェンは、ここにいます:


今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。