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啓志郎はこんな人(だと思う)

【あわせて読みたい:これは短編「愛を犯す人々 番外 啓志郎」の付録です。読むと二度美味しくなる裏設定を、全部載せでお届け。人生をかけて愛し抜いてもいいんだよ、やっぱり西田とめっちゃ仲いいんじゃん、性愛この精神力と体力の耐久テスト、頑張れ啓志郎、啓志郎の好きなもの。他】

 性豪の星の下に生まれついた人、啓志郎。若い。若いです。若すぎて、読んでるだけで全身が痒い。学生はともかく未婚ですので号外にしましたが、私としては、「本妻」との結婚後も、山あり谷あり凪とは続いていて欲しい、というかそんな展開になるくらい、要所要所で凪に新たに恋に落ち続けるような仕方で、凪を愛し抜いて欲しいです。凪が老衰死するときに隣で手を握ってる、くらいの味方感でいて欲しいのですが…まあ、それはそれ、彼が今から切り拓く自分の人生ですから、外野がああだこうだ言うのは筋違いかもしれませんね。

 さて、啓志郎ですが、総合ムニャムニャ学部的な得体の知れない学部に進学し、ぱっと見では何の勉強してるのかサッパリわからない理系の勉強をする予定の、大学二年生です。教養時代は文理科類別・語学別クラス制。西田は文系なので当然、別の道を歩めるはずなのですが、寂しがりやの西田が文系単位を絶対に同じ授業で取りたがるので、西田と一緒にいることが意に反して多いです。なんだかんだ仲良いのね、よかった。西田が凪・真奈美とは類同じ・選択言語同じ・クラス隣。啓志郎が真奈美と出会ったのも滝本の存在を認知しているのも、ひとえに西田あってこそ。おお、使える子じゃないですか、西田。バカバカ言われて可哀想なので一応弁護しておくと、高3当時の西田の河合模試偏差値はマックス73です(啓志郎は78。点数じゃないですよ、偏差値です)。二人の地元は島根。西田の実家は農家で、敬愛する長兄は同じ大学の情報系出身・六本木勤務。ちょっとソリの合わないひとつ上の次兄は1浪し西田と同学年になるも、KO大学の経営系。あらま、西田の実家、豪農だったんですね。ちなみに啓志郎は会社員家庭の一人っ子で、家族仲はさほどよくないです。

 西田は西田なりに努力した末にこうなってるわけで、ちゃんと大学デビューできたのも、過去2年分のsmartを大学過去問のごとくに熟考熟読した結果。人間性についてもその調子で勉強して、ボロボロになるまで読む参考書と同じノリで100冊くらい恋愛指南書を読んで数人と実地訓練すれば、まあまあいい感じになるのではないでしょうか。西田はあんまりこじらせずに、そこそこの規模の上場企業に就職して、仕事が大変な時に支えてくれた女性と結婚して子どもできて清澄白河あたりにマンションを購入し、夏休みは毎年実家に帰って子どもと農作業して楽しみそうです。確実に紆余曲折して屈曲して入り組んだ人生を歩みそうな啓志郎とはキレイに対照的なイメージがあります。西田ジュニアの誕生くらいのタイミングで、余程のことがなければ交流がなくなる気がする…というのもまた未来の話なので、本人たちにはちょっと失礼ですかね。(だから学生書くの苦手なんです…やはりこちらとしては、未来への扉は彼ら自身が開けるためにある扉として、私の手では開けずにいたいのです。)

 啓志郎の外見は無味無臭無味乾燥、身長も普通よりは高いけど目立つほどじゃなくて、筋肉なんかも特にはなさそうで、やや塩顔、ちょっと小賢しくいきがってる感じが滅法、鼻に付く。ものの、一緒にいる限り大都会東京でも道に迷うことは決してなく、探し物は必ず見つかり、電車を降りると毎回出口付近、「ごめん、ちょっと待って」と啓志郎が言うのを聞くことは絶対にありません。性格を見ずに行動だけ見ると、全般、すごく優秀に擬人化されたスマホアプリみたいな感じですね。愚痴を聞いてやる時も、毒を吐きつつ絶対に相手を貶めるようなことは言わず、相手が考える力を取り戻す最後の最後まできっちり聞いてやり、次に会うときまでにはなんらかの気休めや気分転換をこっそり仕込む、このマメさ。西田が足蹴にされながらも友達の地位にしがみつくの、わからないではないです。

 啓志郎のキーワードは、「一回やったら、誰もが虜」。というわけで、多少いきがってるくらいでは、誰も彼を責めません。

 啓志郎はやり込むタイプで、経験人数はあんまりないようです。高校の時に3人。大学に入ってからは真奈美ちゃんと、凪ちゃんと、あとバイト先の居酒屋の隣のショットバーの常連で画家の琴子さん(28)だけです。この琴子さんね…啓志郎を溺愛しています。啓志郎は大学1年の夏以降、自腹で服を買ったことがほとんどないです。琴子さんは、自分のアトリエの壁面鏡に映ってる、バックからガンガンにやられてる自分の姿と、その最後に鏡から目を逸らして射精する啓志郎の顔を、心底愛でています。が、完全に遊びです。

 本篇でチラっと出てきた「本妻」というのは、高校時代の2人目、塾で知り合ったササショー(京都大)。大学時代はお互い自由恋愛、会えば熱烈に愛し合い、ただしササショー社会人・啓志郎院生からはできれば東京で合流、ワンオンワンで支え合ってやっていくと固い約束をしています。こういうひとたちのこういうのは、はたから見ていると謎極まりないのですが、とにかく啓志郎、今のところ、固く誓い、この煉獄を堪能して生きているようです。啓志郎にはササショーがいるから、凪とは捧げ切った付き合いはできないんですね。ササショーが人生からいなくなるという選択肢は、啓志郎にはないんです。凪のこと、狂おしいほど大切に思ってる癖に…凪のことも、絶対に手放したくない癖に…人生って、絡まってます、ね。

 真奈美ちゃんですか。真奈美は真奈美で味のある人です。啓志郎と同じく外見は、無味乾燥気味。強いて言えばややぽちゃです。啓志郎が彼女に白羽の矢を立てたのは、彼女が放任主義で、自分のこと(ベンチャー)で忙しく、基本溜めてから会うので性欲の面でバランスが取れるから、というのがいちばんの理由、つまり非常に実際的な理由です。真奈美は実家住まいなのですが、ホテル代をいつも真奈美が払うため、掃除の面倒やお金がかからないのも加点要素。性豪ってなんか羨ましいイメージあるけど、性欲処理問題、深刻なんですね。

啓:気持ち悪い言い方しないでほしい。そんなに性欲ないですよ。ドライな関係が性格に合ってて、やり切った感じが好きなんです。真奈美ともそこがぴったり合っただけです。そもそも、みんながブレーキかけすぎなんだと思う。性格です。

 いま性豪は、謙遜のあと、「ドライな…」以降の部分で、性欲と言うべきところを2ヶ所、性格と言い間違えました。

啓:…ふざけるのは構いませんが、「啓志郎は作者の発言に強い嫌悪感を示した」と、どこかに必ず明記しておいてください。

 はい。悪ふざけが過ぎました。すみません。

 真奈美とのデートは基本、大学のお昼休み(これは毎日。少しだけでも会えると付き合ってる感じがして安心できるから、と啓志郎は言いますが、明らかに、凪に会えるからですね。この辺が啓志郎のマメさのあらわれ)、夜に会うのは週一、夜は生理だと会いません。啓志郎が真奈美のクラスに日参するだけで凪と裏交流できるようになったのは、啓志郎が凪の目の前で真奈美といちゃいちゃしてみせたというただそれだけのテクニックによるもの。凪は隣の芝生が青かったのを、持ち前のわがままを使ってただ一言「椅子が置ける面積だけでいいの、でも、欲しい」と芝生にこっそり囁いただけです。たちまちこの隣の青い芝生は所有者を変えないまま実質上、全面的に彼女のものになるのですね。椅子を置く面積しか使われないのに。これを実効支配と言います。そして、この芝生がなければご機嫌にアフタヌーンティーできないわ、と最終的には言わせようと日夜努力してるのが「この芝生」、啓志郎です。その辺りの必死な様子は、本篇をご参考ください。

 以上をまとめますと「頑張れ啓志郎」のひとことに尽きますね。頑張れ、啓志郎。

 あ。今回はインタビュアーの花野さんがお休みになってしまった。まあ、番外ですし、たまにはよいですかね。花野さん、いつもありがとう。

 啓志郎の好きなもの。ササショーが空港で待っているのを、本人が気づいてないところからこっそり眺める数分間。ササショーがたまに送りつけてくる、照れ照れのビデオレター。ササショーの下宿の枕元に置いてある、なんとも言えない渋い色の砂が入った、3分計測用の砂時計。自分には絶対向けられないんだけど、ときめきでぱっと明るくなる時の凪の笑顔。絶頂を迎える直前に滲み出る凪の汗の味。凪とのセックス。真奈美とのセックス。琴子とのセックス。ササショーとのセックス。ササショー。凪。残り、全部勉強。

以上です。

本篇は、こちら:

凪は、ここにいます。:


今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。