【虚偽日記】水に流す

 彼氏に振られた。

「夢を追いたい」と一言。
「だからお前が邪魔」と二言。

 私は彼が大好きなのに。
 トボトボと彼の、いや、もう元彼の家からの帰路は1人じゃ凄く寂しくて。

 そしたら、タクシーに轢かれた。
 横から白い光がばっと現れ、気づいたらコンクリートに倒れていた。

 ぼーっとしていたら病院で、レントゲンを撮るからピアスを外してと看護師?さんに言われて、外した。

 私は耳たぶと、軟骨に2つピアスをつけていて、軟骨はニコちゃんマークの元彼から貰ったピアスが。

「君はいつも笑っていて素敵だから」なんて言われて貰ったピアス。

 私は今、全く笑えてないけど黄色いこいつは笑ってる。
 少しイラッとする。

 レントゲンを撮り終わって、問題なくて、怪我は無い。

 家に帰って、ポケットからピアスを取り出す。
「はは」
 私は憎たらしくてしょうがないニコちゃんピアスを付けようとした。
 その行動に気づいて笑ちゃった。
 涙が溢れた。
 クソ。死ねよ。
 バーカ。引きずって、ピアスつけてやる。
 
 ホールにピアスを刺そうとした瞬間。
 手から滑って洗面台に落ちていった。
「あ」
 腕を反射的に伸ばした。
 頭の中のイメージでは腕は洗面台に届いて、ピアスが排水溝に落ちて行かなかった。
 けど、体は動かなくて白い洗面台をクルクルッと回って、カランと軽い音がして排水溝に落ちていった。

 焦った。というより体が動かない。

 どうしよう。取り戻したい。
 ・・・。
 ・・・。
 ・・・。
 まぁ、いいかな。

 キュっと蛇口を捻って水を流す。  
 ジャー・・・。
 キュ。
 水が全部流れて行って、鈍くて低い音が響いた。

 落ちたピアスは流れて行った。

 そしたら心がスッと晴れて、重いかった心がとっても軽くなった。
「はは。はははは!」
 なんだが笑いが込み上げて、お腹が痛くて立てない。
「あ〜!」
 スッキリした。
 死ねよ、バーカ。あいつ。

 これが本当の水に流すってやつ。

END


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