マガジンのカバー画像

福田花が書いたもの

20
運営しているクリエイター

#喫茶店

本読みー福田花

本読みー福田花

最近の私はめっぽう読書にハマっている。
小さい頃はよく本を読んでいた気がする。図書室にもよく行っていた。中学生になり、本から離れてしまい、高校は映画を見るために図書室に行くだけで本を借りたことはないのではないか。
しかし、本を読み出すと、そういえば読書って楽しいんだったと思い出す。

店番をしながら、いそいそと本を読む。
この店は図書館みたいな色だと思う。
静かで薄暗い。植物はあるけれど生き生きし

もっとみる
別れ際ー福田花

別れ際ー福田花

別れ際の挨拶がどうにもうまくいかない。

すぐに会える人ならば簡単に「またね」と言うべきか。いやしかし、近所に住めどすぐに会えるとは限らないとなると丁寧に言うべきか。
いつだって挨拶は丁寧にしたほうが互いの気持ちがいいのは間違いないが、仰々しくなってしまうのも避けたいところだ。

特に遠方から足を伸ばして会いに来てくれた友人に対しての挨拶の正解がわからない。
別れを惜しみ、できることならもっと一緒

もっとみる

夏-vol.1 福田花

雷都
水平線の見えない街にも
夏はくる
湿度が溶けた空気に体がほどけ
木陰に避暑を望むばかり

暮れなずむ空は
雷光に阻まれ
瞬く間に大きな水溜まりを作る
夏がくる
ここはこうして海がなくとも暑さにかまけた湖が光る

トカゲ
アスファルトには動きの鈍いトカゲがひとり
路頭に迷っているようだ
焼けた地面に漕ぎ出す二歩目を
踏み出せないでいるようだ

風そよぐ中
影はどこか いそいそと走る私の自転車

もっとみる

夏-vol.3 福田花

サンバレー

逃げるようにサンバレーへ
風は縫うように近づいてくる
氷は黒い池にぽしゃりと落ちて
私も足を滑らせる
心だけ はやらないように
ゆっくりと腰を下ろして

夏でもここは私を冷やす小さな山

花の喫茶日記
宇都宮市 「サンバレー」

 東武宇都宮駅の東口を出て、東武馬車道通り(通称一番通り)を駅を背に步く。1つ目の路地を右に曲がると、雰囲気が一変して朝でも昼でも毎度なんとも言えない緊張感

もっとみる
夏-vol.7 福田花

夏-vol.7 福田花

花の喫茶日記
釜川沿い 「朴花」

 ひと昔前は街のホットスポットだったオリオン通りはいつのまにか居酒屋だらけの商店街になってしまった。昔ながらのお店もちらほら見かけるが、目に飛び込むのはシャッターが閉まった店と派手な入り口のチェーン店ばかり。私より10年以上も早く歳を重ねている人は皆、昔はすごかったんだと口を揃える。

 そんなオリオン通りが一年に一度、一気に華やぐ日がある。それが毎年8月に開催

もっとみる