僕らは未来で幽霊をつくるのか?【幽霊研究と複合現実がもたらす未来】
みなさんは、幽霊、信じますか?
今回は11月の科学系ポッドキャストの日に合わせまして、企画連動回となっています。
科学系ポッドキャストの日 とは?
毎月、科学系ポッドキャスターの方々が、共通テーマについて、それぞれのポッドキャスト番組の視点で解釈し、トークを配信する企画です。
今月のホスト番組は、サイエントーク さんです。
サイエントークさんでは、科学をエンタメっぽく、そして世界に溢れる科学の魅力を伝えるポッドキャストです。
日常の科学の疑問から科学史、そして人生史まで語っておられますので、ぜひお聞きください!
今回の共通テーマですが、未解決です。
本番組では、僕らは未来で幽霊を作る、と題しまして、幽霊研究と複合現実がもたらす未来、について、お話ししました。
この記事では、内容の補足や、引用元などを掲載した、補足回になります。
幽霊は、いる? いない?
みなさんは幽霊っていると思いますか?
僕自身、ホラーは結構好きでして、映画とか、ホラー系YouTubeのチャンネルを見たりします。
そんな自分の、今の所の「いる、いない問題」の結論は、いたとしてもおかしくないけど、ここまで騒がれるほど、この世に留まる幽霊の数は多くないだろうな、というものです。
実際のところ、絶対にいる、とも、絶対にいない、とも証明できてない、未解決問題のひとつ、として認知をしているところではあるんですが、いい機会なので、幽霊の研究について、少し調べてみることにしました。
幽霊の研究
幽霊がいるのか、という心霊現象の再現に関する研究や、人々の幽霊に対する価値観の変容を捉える研究は結構ありました。
科学的観点のものだと、
スイス工科大では、誰かが背後にいるような感覚を、感覚を混乱させることで生み出す研究がありました。
これは、自分が目隠しでレバーを動かして、背後にあるロボットが、その動きを0.5秒遅らせて、被験者の背中をタッチするというもので、これで背後の存在を感じさせるというものでした。
この研究チームでは、声が聞こえないのに、聞こえてしまうように錯覚させる研究もやっていたりして、科学的に心霊現象を解明しようとされているようです。
医学的な観点では、
目や脳の視覚認知の病気が原因で幽霊が見えてしまう症例なども見つかっています。
紹介されているものだと70代の方が、ある人突然、右側の視野に存在しない猫や座敷童子がみえるようになり、頭のCTを取ると、左の後頭葉に脳出血があった、などがあります。
一方で、民俗学の観点だと、
東日本大震災の被災地で、タクシー運転手の幽霊の目撃談を集めたフィールドワーク論文の中で、わずかではあるものの、本物の霊現象と言わざるを得ない例があったり、
ある土地の今と昔で、怪異現象が起こるエリア分布を重ねてみることで、出現位置や内容にどのような変化があったのかを研究する論文もありました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/15/1/15_55/_pdf/-char/ja
このように、幽霊についての研究は、現在も進められているようですが、そもそも日本で幽霊について考察された最初の書物は、今から200年前の江戸時代末期とのことで、人類の歴史からすると、比較的浅く、まだ「いない」と解決したことにするのは早そうな気もします。
他の例だと、柳田國男の遠野物語の中でも、震災の津波の幽霊の説話もありますが、これも100年前のお話です。
https://core.ac.uk/download/pdf/327691215.pdf
(p28, 日本幽霊学事始めのp124に記載がある)
ここまでの話をまとめると、科学的な側面から見た幽霊は、感覚のバグ、である可能性が高そうに思えてきます。
一方、この2023年でもなお、幽霊が視える人がいる、のもまた事実です。
これは、どういうことなんでしょうか?
もしかすると、まだ解明されていない、第六感、や、人間では認知のできない、発見されていない現象があるということなのかもしれません。
わかりやすい例か分かりませんが、我々は、スマホなしでは、通信の電波が圏外なのか、そうではないのか、を捉えることができないように、人間には見えない現象が、この世界には、まだまだたくさんあります。
そういった、第六感や、この世に存在するが、見えないものを、スマホと同様に、外付けの道具で見られるようになるとしたら、どうなるでしょうか?
MR(Mixed Reality)技術の進化
皆さんは、Mixed Reality 、略してMRと呼ばれる技術領域をご存知でしょうか?
最近だと、メタクエスト3というデバイスが発売しましたが、仮想現実(VR)と、拡張現実(AR)を混ぜ合わせ、仮想現実のものを現実の空間に投影する技術になります。
分かりやすい例だと、遊戯王のなかで、ソリッドビジョン、と呼ばれる、現実世界にモンスターが投影されて、モンスターが戦う技術があるじゃないですか。あれです。
ネットの動画で、ソードアートオンラインのようなゲームで、現実世界でモンスターと戦ったり、ピアノを音ゲーにしたり、現実世界から仮想空間へのゲートを作ったりと、現実と仮想空間の境目がなくなってきました。
幽霊を作り、見る未来
ここで、ひとつ思ったんですが、もし、こういったMRデバイスがスマートフォンや、メガネのような、誰でも持っているような形になれば、誰でも幽霊を見る未来が来るんじゃないか、と思いました。
これは、どういうことかというと、
幽霊を怖いと感じる理由が、存在しないものが存在することや、自分が自分が死んだ時に、存在が消えてしまうかもしれないという不安、現実世界に何も残らないということへの怖さであるならば、この世に幽霊を作ってしまえばいいんじゃないか、という発想です。
最近でも、AIで美空ひばりさんを復活させる取り組みや、新しい一万円札の渋沢栄一のアンドロイドといった、既に亡くなっている方を再現が話題になりました。
これらの方々は、有名人であったから、過去の動画や音声データが残っており、復活を実現できています。
一方で、我々一般人はどうでしょうか?
ほんの数十年前までは、データを残すということができなかったため、この世に爪痕を残す、ということができず、誰かの心の中で生き続けることしかできなかったのですが、最近では、さまざまなライフログセンシングができるようになりました。
すなわち、これから先の人類は、自分の幽霊を作るための十分なデータが残されるため、死んだ後に幽霊になりたい人が、幽霊になれる、作れる、見れるようになる、ということです。
幽霊が当たり前に"いる"未来は、何が変わるか?
では、仮に、MRで世界を見ることが日常になり、幽霊が当たり前に存在する世界がやってくるとどうなるでしょうか?
まず、幽霊という言葉の定義は変わりますよね。
未解決だったもの、というよりは、自分で作り出すもの、肉体の寿命のあと、精神として生き続けることを選んだ人、など、意味合いは変わってくると思います。
次に、幽霊への印象、これも変わりますよね。
よくわからないが、この世にとどまり続ける恐ろしいもの、という印象が、なくなった方の意志で、世界に記憶されることを望んだ人、という、その人の意志がわかることで、恐怖感は薄れるかもしれません。
あとは、葬式や墓、が持つ意味も、人によっては変わるかもしれません。
今後生まれてくるかもしれない、MRネイティブ世代は、葬式前に、バーチャル空間に意識を写す、生前葬があったり、そもそも、葬式という概念がなくなるかもしれません。
また、バーチャル空間で生きているなら、墓参りに行く必要あるの?という価値観ももしかしたら生まれてくるかもしれません。
みなさんはこの話を聞いて、バーチャルで再現された意識は本人と呼べるのか、という違和感を、持たれているかとと思いますが、これは、2023年の現代人の価値観でしかなくなる、可能性もあります。
そして、冒頭で話した、心霊ホラー映画やホラーゲーム
これは、未来では、どのような印象に変わってしまうのでしょうか?
得体の知れない恐怖があるから、現代人は怖いと感じるけれど、
仮に、誰もが仮想空間で幽霊になれる制度がある未来が来るとすると、未来人の観点では、
なんで仮想空間で幽霊になれば、喋れるし、自分の記憶も残るのに、あえて現実世界で、幽霊になっちゃたの?
とか、
せっかく制度があるのに、勿体無いなぁ
とか、
幽霊らしくないなぁ
と思ったりしているかもしれませんね。
現代人のみなさん、ここまでの話を聞いて、幽霊になりたい。自分の幽霊を作りたい、と思いましたか?
ぜひ、みなさんの感想、教えてください!
それが、皆さんの、2023年の価値観です。
まとめ
今回は、科学系ポッドキャストの日によせて、幽霊研究とMR技術がもたらす未来を妄想してみました。
幽霊が解明されるのが先か、発見されるのが先か、作り出すのが先か。未来に期待したいです。
科学系ポッドキャストの日の特設ホームページでは、参加番組のまとめ、プレイリストがあります! ぜひ覗いてみてください!
その他、参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mgkk/9/0/9_KJ00008993722/_pdf/-char/ja
https://opac.kokugakuin.ac.jp/webopac/shintokenkyusyuroku_032_005._?key=CVFQGY
https://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents.php?i=326
昔と現代であの世を信じるかの割合を調べたり、国ごとに神や魂が存在するかを答える人の割合を調査した研究
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