となりの稲荷 2 感想続き 一番好きなのはウツセさん,etc.
となりの稲荷 やっぱり面白くて何度も読んでます.一度読み始めると気が付いたら最後まで読んでる.
前回の記事だけでは書ききれなかったので今回も感想など書きたいと思います.
ところで自分は作者さんの個人サイトで読んだのですが,パルシィや書籍版ではかなり省略されているのですね.
ということでもしパルシィor書籍版のみしか知らない方は是非上のリンクから完全版を読んでほしいです.伏線がほんと綺麗に回収されているので….
そして例えカットされてるとしても作者さんへのお礼の気持ちを込めてコミックスを買う予定です.本当にもる先生の作品には昔からお世話になっているのでいつかお手紙を書きたいくらい….
ここからネタバレありますよ~.
一番好きなのはウツセさん
主人公が頭のネジ外れてることもあってキャラクターに対して共感できるとか好きとかそういった感情をあんまり抱かなかったのですが(個人的にストーリーがよく出来すぎている話は逆にキャラクターに夢中になりにくい傾向があります),よく考えたら最初から産土神のウツセさんが好きだったな~ということに思い至りました.
ウツセさん好きです.神様らしい外見もウサギがモチーフなのも可愛い.
足継の稲荷が怖いというのも,祟ったり手を出したりは極力しない育ちの良さを感じます.
ちょっと脱線するけど,神様ってどうやって生まれたり教育うけたりするんだろうね?
ウツセさんが産土神になってから100年弱ってあたり意外と最近ですよね.宝塚歌劇団が今106期生までいるから,それより後ということになる.
産土神になる前のウツセさんはどこで生まれて,何をしていたんだろうか.
さくらちゃんや圭助くん恭平くんと雑談したり,開くんをたまに導いてくれたり,氏子と身近な距離感で接してくれるすごく面白い産土神だな~と思います.
でもウツセさんは人食いの化け物についてはどこまで知っているんだろう.咲さんが人食いとは知らないみたいだから,サキちゃんが人間を化け物に変えてしまうから「腕塚には人食いの化け物がいる」と言って人を遠ざけている,までの認識なのかな.
その土地の人間を食べる化け物だから産土神が対処する問題なのかと思いきや,ウツセさんはノータッチで稲荷数名と一部の人間だけが真相を知っているっていうのも,不思議というか,産土神といっても象徴の側面が強いのでしょうか.
でも
「うっさんは村を守るので精一杯だから祟ったりしねーけど(11話)」
「ここ(足継)は村というほど大きくもなくて 数軒の家からなる小さな集落だった それが今では立派な集落になっただろう(72話)」
「その後は妹が代わって(身探の)産土神になったようだが 姉ほど力が無く身探通はすぐに廃れていった(82話)」
とあるあたり,産土神の力が土地の繁栄に関わっているんだなぁと分かる.
だからウツセさんはウツセさんなりに氏子と土地を守っているんだな~と思うとまぁそれでもいいのかなと思います.
ヘタレとか引きこもりとか,お世話してくれてた鉄さんに愛想つかされたとか色々書かれてるけど,足継を守りつつ(人食いから住民を守れているかはアレですが)神社でうさぎと引きこもり生活して,たまにやってくる住民とお喋りするのもなんか良さそうだし,そんなウツセさんのお世話するのも穏やかで楽しそうな日々だな~なんて思ってしまう.
足継ってすごく忌まわしい場所に思えるけどどこもそんなに変わらない気もする
人食いの化け物がいて,その化け物の指を生かすために人を攫う稲荷がいて,山には人間を化け物に変えてしまう産土神がいる.
これだけ聞くと,こわ,近寄らんとこ,とか,どうしてそんなところに住めるんだろうとか思うけれど,
実際住んでいる人としては,ここで育ったから,家建てちゃったし,親戚がいるし,学校がここにあるから卒業までは,みたいな理由があって,この土地に留まっているんだろうなと思う.
そもそも「足継周辺に住んでるといつ死ぬかもわからず怖い」みたいなニュアンスで書いたけど,
海の近くなら津波の危険があるし,活火山がある地域なら噴火による災害もある.地震や豪雨だってどこでも起こる可能性がある.人攫いやストーカーなど,どの街にも悪意のある人はいる.
だから,どんな土地にいようといつ命を奪われるかわからない危険と隣り合わせなんだなと思う.
海沿いの街での津波が,足継では人食いの化け物に代わっただけ.
ここまで想像して考えたのですが,足継一帯って災害とかは起こるんでしょうか.
いつか読んだ書籍に書かれていた「アシナヅチとテナヅチは,ヤマタノオロチに娘を差し出す見返りに,農作物の豊作など何らかの利益を得ていたのではないか」という考察を思い出しました.
足継一帯も,化け物に人間を差し出す代わりに災害から守ってもらうなど何かしらの利益を得ているのかもしれないな,とふと思いました.
この作品は「結局何も解決してない」という感想を書かれる方が多かったのですが,解決すべきものがあるわけではなくて,ただ「この町に隠されている,神様さえも知らない禁忌に触れた一瞬」を描いているのかなあと思っています.
足継の稲荷はみんな祟るよ 特に咲ちゃん
人間を祟り殺す神様,人間を化け物に変えてしまう神様,人食いの化け物.
全部違うし,特に「”人間を”化け物に変えてしまう神様」は人間以外からは無害なわけだから,妖怪なんかでは感謝してる人も多い.
でも人間からすれば全部嫌だよねぇ.
それを思うと,咲さんが人食いであることは一部の人しか知らないけれど,既によく人を祟り殺すと知られているなら,人を食べると言われても他の人ほど衝撃はない気もする.だってどっちにしても人間殺すんだし….
鉛さんの「足継の稲荷はみんな祟るよ 特に咲ちゃん(11話)」を最初は文字通りに捉えていたけれど,鉛さんは咲さんの正体を知っている1人なんですよね.
後から読むと,あの「咲は人間に災いを招くよ」というニュアンスの発言に他の意味があったんじゃ…と考えてしまう.
鉛さんなかなか一筋縄ではいかない人に見えるのにどうしてウツセさんは怖がらないんだろう.昔助けてあげたとか,そういう貸しがあったりするのでしょうか.
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