そろそろ君の名は。見たほうがいい気がする その2 ロードラマとハイドラマ,ベタな感動じゃだめですか?

 まだ君の名は。を見ていないという記事があるのですが,その中で見ていない理由について以下のように書きました.

・流行っているものって「流行っているから」という理由だけで誰もが深く考えずに持ち上げてる感じが怖くて,だからこそ斜に構えてしまう.
・君の名は。の事をお涙頂戴の安い映画だと思っている気持ちがあって,あれで涙が止まりませんとか言っている人達を内心馬鹿にしてる(ごめんなさい).

 この「君の名は。を安い映画だと思っている」という点について,岡田斗司夫さんがとても面白い解説をされていたので是非紹介させて下さい.

 

ロードラマとハイドラマ

 岡田さんによると,感動にもいくつか種類があり,

ロードラマ
分かりやすく感動できるもの.クライマックスでは泣ける音楽とか泣ける演出を入れて,感動しやすく作られている.
例:世界の中心で愛を叫ぶ

ハイドラマ
感動というより何かしら心を動かす作品.単純に泣けない,泣けばいいのか笑えばいいのかわからない複雑な感情を呼び起こすもの.やりきれない気持ちにさせる.
例:E.T.のラスト,高畑勲作品

動画内ではこの2つに分類されています.
 これはどちらかの方が優れているというものではなく,より多くの人に理解されやすい(=敷居が低い)ものをロードラマ,人を選ぶものをハイドラマと称しているとのことでした.


君の名は。とは何だったのか

 岡田さんによると,これまでの新海誠作品はハイドラマの傾向がある中で,君の名は。は路線変更して多くの人に分かりやすいように作られているとのこと.

 実は,もう一度出会いたいと願う惑星ともう二度と会えない人にまた会いたいと願う人間が起こした奇跡「結ぶ」という全体テーマに沿って描いていて,新海誠のこれまでの宇宙モノの集大成ともいえる,らしいのですが,
そのあたりを敢えて説明せず,とにかく老若男女問わず泣ける映画になる方に力を注いでいる,との解説でした.


分かりやすい感動も人を選ぶ感動も,みんなちがって,みんないい

 このロードラマ・ハイドラマは本来どちらが優れているといったものはないのですが,

 ロードラマの分かりやすい感動は,素直に泣いてしまう人・ベタ過ぎて冷めてしまう人
 ハイドラマの人を選ぶ感動は,ピンとくる人・いまいち理解できない人

と見ている人を二極化させてしまうため,「こんな安っぽいのに泣くなんて」「これを理解できないやつは馬鹿」といった差別意識に繋がる可能性も指摘されています.

 前回の記事の「君の名は。の事をお涙頂戴の安い映画だと思っている気持ちがあって,あれで涙が止まりませんとか言っている人達を内心馬鹿にしてる」というのも,筆者の持つロードラマへの差別意識の表れですね.本当にごめんなさい……….


感動ポルノって言うけれど

 感動の種類に関連して,
2016年の24時間テレビの裏で,Eテレのバリバラが「笑いは地球を救う」と称して感動ポルノ特集をした件についても触れられていました(この解説動画は2016年9月のものです).

(ちなみに自分も以前記事の中で24時間テレビと感動ポルノについて書いたことがあります.)

 このバリバラの特集は,24時間テレビの「障碍者に挑戦させる」という安い感動の雰囲気に風穴を空けることが出来たけれど,
その結果なにができるかというと24時間テレビの募金額を減らせるだけな上に,
分かりやすいベタな感動しか理解できない大半の人を笑いものにしているようにも見える.
だから手放しに賞賛はできない.

 というのが岡田さんの解説でした.


 この解説で,自分がなんとなくバリバラが苦手な理由が分かってすごく納得しました.
 「バリアフリー」「みんなちがって,みんないい」といいながらも,マイノリティと縁が薄い人達にバリアを張っている感じがしてしまうんですよね.

 マイノリティへの差別をなくしたい番組の中にマジョリティへの差別意識があるっていうのも,難しい問題な気もするし,そんなもんなんだなという気もするし,よく考えたら当たり前か,という気もしてしまう.


まとめ

 君の名は。の感想は「めちゃくちゃ泣いた」か「あんなの安っぽい」に二分化されてたけど,なるほどそれは君の名は。がロードラマとして分かりやすく作られているからなのですね.

 これ書いてる今も相変わらず君の名は。未鑑賞ですが(めちゃくちゃネタバレ見たけど),監督がこだわりを持って作っていると知ることができたので,やっぱり自分で一次情報を得て,自分なりの感想を持ちたいですね.

 あと「ハイドラマを理解してロードラマごときで泣かない人間にならなければ」という思いに囚われているのを自覚しました.
 そういう意識は自分が辛くなるだけなので一つずつ手放していきたい.みんなに愛されるロードラマで感動できる素直さと難解なハイドラマの面白さに気付ける教養を身に着けたいですね.

 君の名は。も分かりやすい感動の裏に作品の大テーマとこれまでの新海お宇宙モノの集大成ともいえる壮大な設定があったとのことなので,ベタな感動だから作り手も適当に作ってる,なんてこと全然ないんですよね.だからこそロードラマもハイドラマもどっちも愛したいね!



 こういったオンラインサロンはあまり見ないのですが,岡田斗司夫さんはジブリ解説が面白いのと昔悩みのるつぼでお世話になっていた恩があるのとで応援しています.
 人生相談では悩みで八方塞がりの質問者に「こういう見方もあるんですよ」と視点を変えるようなアドバイスをしていて,それが本当に目から鱗なので信頼しています.

 アドベンチャー・タイム,すごい面白そうだから見よう.




ここまで読んでくれたあなたがだいすき!