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膝関節 第10 《変形性膝関節症 前編》

今回は、note投稿10回という節目を記念して、変形性膝関節症についてお話したいと思います。

まずは、こちらのスライドから

日本理学療法士協会ガイドラインでも推奨グレードAと示されている膝OAと関節の運動力学的変化について,

外部膝関節内転モーメント(Knee Adduction Moment=KAM)と膝内反変形には相関があると多くの論文で示されていますが,

健常な膝アライメントを呈している人でも,上記のように関節肢位を変えれば,KAMが大きい姿勢を意図的に作ることができます.

私自身は,KAMに関与している要因として大腿骨頸部の捻転角が一つの要因ではないかと密かに思っています。

大腿骨頸部後捻は男性に,前捻は女性によく見られる”(Shirley A.Sahrmann (著):運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導,医歯薬出版,2005,p99より引用)

ワシントン大学名誉教授のSahrmann氏は上記のように述べられており,

普段の臨床でも,下記のように股関節の可動性を評価すると,男性は外旋可動域が大きく内旋が少なく,反対に女性は内旋可動域が大きく外旋が少ないことが多いです.

股関節の適合性を優先すれば、大腿骨頸部が

前捻していれば、内また姿勢に

後捻していると外また姿勢になります。

臨床でも前捻している女性は内また傾向がみられますし、

前捻しているにもかかわらず外また姿勢というような、不適切な股関節肢位を取られる方は少ないと思います。(そのような姿勢では、股関節を屈曲するたびにインピンジに陥るのではないかと思います)

私の仮説ですが、”女性の場合、ホルモンバランスの影響で靭帯は緩くなりやすい”(1)こともあり,

股関節内旋位にて、膝後方の靭帯が弛緩し反張膝を呈し、KAMを増強する姿勢になりやすいと思っています。(また内反を制動する外側側副靭帯も緩くなると思います)

膝OAは女性に多いというのも、これらが初期の内反変形に加担しているのではないでしょうか?

男性は大腿骨頸部が後捻している方が多いので,股関節外旋位=外また姿勢で女性とは異なる姿勢パターンでのKAMの増強が予想されます。

そして、女性で内また傾向の人でも、高齢になり脊柱の後弯と骨盤後傾位に姿勢が変化してくるにつれ、男性の骨盤後傾で股関節外旋位の姿勢を組み合わせた姿勢パターンになると仮説をたてました。

気持ち悪い写真になってしまいましたが、あくまで仮説です。

そして、加齢による姿勢パターンの変化は多種多様であるため、このように画一的な姿勢を想定することにも無理があるということも承知です

ただ上記の姿勢においてポイントとしたいのは、

《脛骨は外旋位で内捻している》

ということです。

このように脛骨の近位は外旋、遠位には内旋のストレスが加わり、脛骨の外捻が減少してくるのです。

脛骨の外捻が減少するということは、脛骨が内彎(O脚カーブ)してくるのではないのでしょうか?

臨床でも、膝OAで脛骨の外捻が少ない人を見かけます。

著名な臨床家である山田英司先生も著書で下記のように述べられています。

”脛骨には生理的な外捻があるが膝OAでは外捻が減少する.近位では膝関節内反により膝関節は外側に移動し,脛骨に対して外旋のストレスが加わる.しかし遠位では,足部は地面と適応するために外反扁平足となるため内旋のストレスが加わる.このため,近位は外旋,遠位は内旋のねじれのストレスが加わる. (山田英司:変形性膝関節症に対する保存的治療戦略,三輪書店,2012より引用)

以前の記事でも述べたように、

股関節からのKnee inでは下腿は外旋ストレスが、

足部からのKnee inでは下腿の内旋ストレスがかかります。

つまり、Knee inでの上方からの運動連鎖と、下方からの運動連鎖が脛骨骨幹部でぶつかり合って、脛骨の外捻が減少している可能性があるのではないでしょうか?

内容が複雑になってきたので言いたいことをまとめます。

膝OAには

①女性の大腿骨頸部の前捻による内また、反張膝姿勢がKAM増大につながり、初期の内反変形に関与している可能性がある

②股関節からのKnee inにより脛骨が外旋・外側偏移してくる=膝関節が内反してくる

③足部からのKnee inにより脛骨の外捻が減少してくる=脛骨がO脚カーブを描いてくる

このような、姿勢・動作不良が膝OAの関与因子として考えられるというこです。

膝OAのリスクファクターで有名なのは、加齢・女性・肥満といったものですが、日々の臨床で気づいたことをまとめたり、山田英司先生のような深い洞察力のある著書を読んだりして、膝OAを防ぐための道しるべを模索し続けることが大事だと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


引用

(1)”エストラジオールは直接的または間接的にインスリン様成長因子 1の減少を経て,運動誘発性のコラーゲ ン合成を抑制することが示された”Hansen, M., Koskinen, S.O., Petersen, S.G., et a1., 2008. Ethinyl oestradiol administration in women suppresses synthesis of collagen in tendon in response to exercise. J. Physio1.586 (Pt 12), 3005-3016.

Foroughi N, Smith R, Vanwanseele B, 2009: The association of external knee adduction moment with biomechanical variables in osteoarthritis: A systematic review. Knee 16: 303-309.

Gelberman RH et al,1987: Femoral anteversion: a clinical assessment of idiopathic intoeing gait in children, J Bone Joint Surg (Br) 698:75.

Shirley A.Sahrmann (著):運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導,医歯薬出版,2005,p99

山田英司:変形性膝関節症に対する保存的治療戦略,三輪書店,2012



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