見出し画像

秋とバルタン星人

土曜日から家族で実家に帰省していた。

今回はものすごく久々に泊まりで
訪問したこともあって
子供たちはゆっくりとばあばと接することができて
満足そうだったのだが、
いかんせん私の実家はWi-Fiもつながっていなければ
娯楽的なものが何もない。

どうしても子供たちは何かしたいと
退屈してしまうのだ。

だが、先日引っ越した新しい母のマンションは
すぐ目の前に公園がある。

私が子供の頃”自転車公園”と呼んでいた公園である。

なぜ”自転車公園”なのかというと、
この公園には周回できるようなコースがあり、
ここでよく自転車レースをしていたからである。

今から思えばヘルメットも肘あても
何もつけずになんと危険なことをしていたのかと
我ながらあきれてしまうが、
当時の私はそれが楽しくて仕方なかった。

そんな自転車公園に昨日は朝9時から
子供たちを連れてきて遊ぶことにした。

息子は家から持ってきたサッカーボールで
サッカーの練習、娘は遊具で遊んでおり
私は危険がないようにそれを見ていた。

すると、ふと公園にある木が妙な感じに
なっていることに気が付いた。

恐らくプラタナスの木だと思うのだが、
あまり見たことのない葉のような
塊が木のあちこちについていたのである。

こういうことに気が付くと
検証せずにいられない性分なので、
息子にサッカーボールを借りて
その塊部分にボール軽く当てて落とすことにした。

いい大人がサッカーボールを手に持って
木に向かって投げるという何ともシュールな
絵面になりながらも
何とか1投目で狙った場所にヒットさせると、
葉っぱのようなそれが落ちてきた。


落ちてきた葉のようなもの

その葉のようなものは片方に種のような
ものがついており、
独特の湾曲がついているので
落ちるときにくるくると回りながら
落下する様子がとても面白い。

これは子供たちにも教えてやりたいと思い
早速子供たちを呼んで
先ほど落とした葉のようなものを上に放り投げて
くるくる回りながら落ちる様子を見せる。

すると、娘は自分もそれをしたいと言い出して
滑り台の上から落としてみたり、
肩車をしながらそこから落としたりという
試行錯誤をし始めた。

何度か試したあと、娘がふとその葉のようなものを
手にしてこう言った。

「パパ、見て。なんか顔みたいやで」


再びこの写真

言われてみればそうである。

二つの実のようなものが付いていて
何だか顔の様に見えなくもない。

エビのような、ザリガニのような、虫のような
そのフォルムが何かを思い出させる気がする。

すると私の心の中にあるものが浮かんできた。

バルタン星人である。

もはやオリジナルのバルタン星人がどんなものか
記憶があいまいになりながらも
何となくこのフォルムはバルタン星人に
似ている気がしてきた。

子供たちに「これ、バルタン星人に似てない?」というと
キョトンとした反応の子供たち。

そりゃそうだ。息子がウルトラマンにハマっていたのは
今から5~6年前。
言うまでもなくバルタン星人はメジャーなウルトラ怪獣では
あるが、
子供にとっての5~6年前は記憶のはるかかなたであろう。

娘に至ってはそもそもバルタン星人自体知らないかもしれない。

そんなことを思っていると、
ふと目の前にイチョウの葉が落ちていることに気付いた。

この葉っぱを使えばもっとバルタン星人っぽく
することができるのではないか。

そんなことを思い、さっそく葉を加工して
先ほどの葉のようなものの横に置くと
一気にバルタン星人感が高まってきた。

だが、何かが足りない。

バルタン星人と言えば何が特徴だっただろうか。

頭の中にある曖昧な記憶を掘り返してみると
セミのような口が特徴的だったことを思いだした。

そこで手ちょうどいい細い枝を見つけて
バルタンの葉の上に乗せると、
まさにバルタン星人の様になったではないか。


完成したバルタン星人

子供たちに見せると、娘も面白くなってきたらしく
私が作ったバルタン星人と同じものを
その周りにいくつも作り始めた。

黙々とリフティングの練習をする息子と
せっせと葉を集めて何か作る娘と私。

傍から見れば何とも言えない奇妙な光景であろう。

結局大量のバルタン星人をそこに作ったところで
でかける準備をする時間になったので
家に引き上げることにしたのだが、
子供の頃に自分が遊んだ公園で意外な発見があり
私自身とても楽しい時間となった。

部屋に入り、子供たちが公園での出来事を
ばあばや妻に話しているのを聞いていると
リフティング練習をしていた息子までもが
バルタン星人の話をしており、
何だか私としても嬉しくなった。

そこでふと私の頭の中にとある衝動が起こった。

「本物のバルタン星人ってどんなんだっただろうか」

スマホをそっと操作し、調べてみる。


ん?

間違いなく私が知っているバルタン星人だが、
何だか先ほど作ったものとは違う。

公園にいた時には間違いなく
バルタン星人にソックリだと思っていたのに
こうして画像を見てみると、
途端にあまりに似ていないような気がし始めた。

では私達が作ったあれは一体何だったのか。

頭の中の検索エンジンを回してみると
こいつに行き当たった。


目の位置といい、頭の形といい、
まさに先ほど私達が作っていたのは
アメリカザリガニだったのである。

我が家では6年ほど前に息子が欲しいと言って
飼い始めたアメリカザリガニがいまだに家にいるが(2代目)、
長年コイツを見てきた結果、
頭の中でバルタン星人のイメージに勝手に
重なっていたらしい。

人のイメージとは何ともいい加減なものである。

このことを子供たちにも教えてやろうかと
思った私であったが、
バルタン星人を作って楽しかったと
ばあばに話をしている娘を見ていると
何だかそれも野暮なことのような気がして
結局言わないことにした。

まさかバルタン星人というワードを
こんなに出すことになるとは予想していなかったが
子供たちにとっても私にとっても
とても印象深い週末となった。


この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,563件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?