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忘れられない恋愛

あなたには忘れられない過去の恋愛は
あるだろうか。

これまで色んな話題について
noteでは書いてきたつもりであるが、
実は唯一私が手を付けていなかった話題が
恋愛である。

正直書くかどうか悩んだのであるが、
自分を掘り下げるうえで恋愛の要素は
間違いなくウェイトを占めているのに
そこに触れないのはなんとなく
片手落ちな気がするのだ。

そこで、今回は私が過去に出会った
忘れられない恋愛について書こうと思う。

本題に移る前に断っておくが、
私は既婚者で子供もいる。

この話はあくまで今から15年以上前の話であることを
前提に読んで欲しい。

当時私は21歳であった。

大学4回生で就職活動も終わった頃、
私は日々研究とアルバイトに忙しい生活を送っていた。

本当に今から考えればよくやっていたなと
褒めてやりたいほど当時の私はアグレッシブで、
昼間に研究室で実験や論文の作成をしながら
夜勤でアルバイトをしたりしていた。

いつ寝ていたのか記憶にないが、
当時はそれも問題なくこなせるだけの
体力があったのであろう。

そんな毎日を送っていたとき、
友人からとある連絡がきた。

何かと思って見てみると合コンの誘いであった。

当時の私は2年半ほど付き合っていた彼女と
終わりを迎えて数か月が過ぎており、
友人が気を利かせて私を誘ってくれたのである。

とはいえ、私は合コンがあまり好きではない。

初めて会う人とキャッキャと盛り上がれるほど
話題が豊富なわけでもないからである。

内心あまり乗り気ではなかったのだが
友人の誘いを無下にもできない。

そこで単なる飲み会に女子がいるだけと割り切り
合コンに参加することにした。

会場は私が住む街から電車で40分ほどの場所で
正直かなりのアウェー。

落ち着かなさを感じながら待ち合わせをして
相手の女性たちとも合流し、合コンが始まった。

一緒にお酒を飲みながら話していると
確かに面白いのだが、
お互いに距離感を測りながら話す感じが
会話の中でどうしても感じられてしまい
私は盛り上がりきれずにいた。

結局その場の流れで相手の人たちとも
連絡先の交換をしたのだが(当時はメアドの交換)、
恐らく私からこのメアドにメールを送るのは
会が終わったあとの「お疲れさまでした」の
メールだけだろうと内心思っていた。

相手の方々と別れ、男性陣だけでグダグダ言いながら
駅までの道を歩き、一人遠方だった私は一人電車に乗り込んだ。

お酒を飲んだので多少の眠さを感じながら
電車に揺られていると私の携帯が震えた。

既に相手の方々にはお疲れ様メールのやり取りは
終わっていたので、何だろうと思いながら見てみると
今回の合コンとは全く別の友人からのメールであった。

内容は明日友達とケーキバイキングに行くのだけれど
一緒に行かないかというものであった。

私はスイーツが特別好きなわけでもないし
周りにスイーツを食べている姿を良く見せていた訳でもない。

なぜ彼が私をケーキバイキングなどという
縁遠いものに誘うのかとても不思議であった。

いつもの私ならあまりスイーツに興味がないことを
素直に言って断っていたであろうが、
何となくモヤモヤの残る合コンの帰りだったこともあり
新しいことにチャレンジしてみるのも悪くないと思い
参加することにしたのだ。

結局その日、帰宅できたのは深夜0時近くで
すぐに布団に入ったのだが、
ケーキバイキングの集合は10時である。

あまりゆっくりできないなと思いながら
私は眠りについた。

若い男は総じて良く寝るものである。
私が起きると時間は既に8時半頃であった。

集合場所は電車で20分ぐらいの場所であるが、
なんだかんだ準備をしていると時間があまりない。

とりあえず着る服を選ぼうとすると
合コンで小ぎれいな服は既に着てしまっていたので
いつも着るラフな服しかクローゼットに見当たらない。

とはいえ、気を遣う相手でもないので
いつもの服を選び、若干寝ぼけ眼で準備をして
私は家を出た。

その日はとても天気のいい日だったので
車窓からの景色を眺めながら
目的の駅まで向かった。

駅から待ち合わせ場所まで行くと
集合時刻の5分前、ドンピシャである。

繁華街のど真ん中での集合だったので
周りをきょろきょろしながら友人を探すと
10mほど先の場所に友人がいるのを発見した。

そしてその横になんと女性が立っていたのだ。

友人からその女性を紹介された。
名前はMさんというらしく、
友人のバイト先の後輩ということであった。

てっきり男だけでケーキバイキングに行くと
思い込んでいた私は驚いたのだが、
ある意味女性が一緒なら会場でも浮かないと思い
気持ちを切り替えることにした。

そこからMさんとも話をしながら
ケーキバイキングの会場に向かうと
Mさんが急に「ドラッグストアにちょっと寄っていい?」
と言い出した。

友人と二人で快諾して、近くの店に入ると
ニコニコしながら店内を物色するMさん。

何を探しているのか聞いてみると、
食べる前に飲むことで脂肪の吸収を抑える
サプリを探しているとのことであった。

私には全く浮かばなかった女子らしい発想に
何だか私は少し惹かれるものをその時感じた。

その後無事サプリを見つけたMさんと共に
ケーキバイキングの会場に着くと
既に開店を待つ長蛇の列ができていた。

当時の私は喫煙者だったので
内心タバコを吸いたいなと思っていたのだが、
当然列に並びながらタバコを吸うわけにはいかない。

ガマンをしながらMさんと話す中で
Mさんにタバコについてどう思うか聞いてみると
なんとMさんは嫌煙家であった。

それを聞いて「ちょっとタバコ吸ってくるわ」などと
言わなくてよかったと私はその時感じた。

そうして数分待っていると漸くケーキバイキングの店が開いた。

3人で店内に入ると、窓際の明るい席に通され
早速ケーキを取りに行くことにした。

普通よりもかなり小ぶりではあるが、
色とりどりのケーキが沢山並び、
それを嬉しそうな顔をして選ぶMさん。

そのMさんを見ながら、私は口直し用に
準備されたスパゲティとサラダを取り
まず腹ごしらえをすることにした。

Mさんはケーキバイキングを楽しみにしていたらしく
とても嬉しそうにケーキを食べ、
どのケーキが美味しいかを私たちに教えてくれた。

その顔を見ていると、
私は何だか恋をしているような気がしてきたのだ。

アニメで恋をしたキャラクターの頬が
赤くなるシーンがあるが、
まさにその時の私は自分の頬が温かくなるのを
感じていた。

その後もケーキを食べながら
無邪気に話すMさん。

私は甘いものを沢山食べられないタイプなので
Mさんがオススメしてくれたケーキを選んで
食べてみると、とても美味しかった。

そんな楽しい時間が終わり、
せっかく集まったからということで
3人でそのままカラオケに行くことにした。

歌は得意ではないと言いながらも
カラオケでも楽しそうに歌うMさんに
私は見とれていたせいで
私は自分が何を歌うのか全然決められなかった。

もしかすると、Mさんにいい印象を持ってもらえる
曲を選ぼうとしていたのかもしれない。

そんな楽しい時間が終わり、
帰路につくことになったのだが、
そこで私はMさんの連絡先を聞いていないことに
ふと気が付いた。

昨日は別に聞くつもりもなく流れで
連絡先を交換したにもかかわらず、
今日はとても聞きたいと思いながら
連絡先を交換できていなかった。

とは言え、別に私を紹介するために
友人はMさんを連れてきたわけでもない。

どう切り出そうか考えていたが、
私の心がこのチャンスを逃すなと
心を押してくれるのを感じ、
思い切って連絡先を交換しようとMさんに言った。

笑顔で快諾してくれるMさん。

内心舞い上がりそうな気持の私。

無事連絡先を得た私は、友人とMさんと別れた。

そこから、数か月経ち私は何度か
Mさんと2人で遊びに出かけた。

今となってはイタいカッコの付け方をしていたと感じるが、
当時の私にとってはベストなオシャレで毎回臨んだ。

そして次の会で私は彼女に告白しようと
考えていたのだが、
大学を卒業してから少々離れた場所に住むことが
決まっていた私は、
その準備や卒論発表の準備、また免許取得のための合宿など
そこからバタバタする日が続くようになった。

Mさんも大学やバイト意外にも色んな活動をしており
なかなか時間を取ることができなくなり、
時々メールで近況報告はしながらも
そこから数か月経ってしまった。

その頃私は新卒で前職の会社に入社したばかり。

日々研修などで精神をすり減らしながら
同期達と毎日楽しく過ごしていた。

同期達との話では当然のように
恋愛の話がでてくるのだが、私には彼女はいない。

「誰か紹介してやろうか?」などと提案してくれる
同期もいたのだが、
私の中にはMさんがいたので、その提案も軽くかわしていた。

そんなとき、会社で海外でのプロジェクトが進行して
将来海外で働ける候補の社員を研修として
参加させる話が上がってきた。

そして、ありがたいことに私がそれに抜擢されたのだ。

今となっては”ありがたい”と書いているが、
当時の私からすれば「どうして私が」という気分であった。

なぜなら私は英語が話せたわけでもなければ
海外勤務に対して前向きでもなかったからである。

しかし、会社からアサインされたからには
それに従わざるを得ないと当時の私は思っていたので
ありがたくその提案を受けることにした。

研修期間は3か月。

もともと会っていなかったとはいえ
Mさんにも連絡を入れると、
「おめでとう!〇〇くん(私の本名)、すごいね!」
と明るいメールが来た。

Mさんが内心どう思っていたのかはわからないが
私はこのメールで背中を押された。
というか、押されたと思いたかった。

私は人生で初めての海外に赴き
右も左もわからないなか、全力で現場に向き合った。

研修と言いながらも現地の社員からすれば
親会社から来た社員である。

内容によっては指導をすることも求められる。
「私はまだ新入社員なので」などという
甘えは許されないのだ。

そのためにも私は一刻も早く現場を知り
自分にできる事をしっかりとやらねばならない。

そうして全力で臨んだ結果、
3か月の期間が終了して帰るころには
現地のスタッフから私に残ってほしいと
言ってもらえるほどになった。

空港でMさんへのお土産を買い、
私は日本へ帰国した。

帰国した翌週、久々にMさんを誘い
私たちは一緒に食事をすることになった。

久々に会ったMさんは就職活動中で
スーツ姿である。

久々に会うだけでも嬉しかったのに
スーツ姿のMさんはとても可愛かった。

少しだけ高めの大人な雰囲気の店を選び
食事をしながらMさんと話す。

ケーキバイキングの時と同じように
嬉しそうに食事をするMさんに癒されながら
私は研修期間中にあった色んなことを話した。

食事をしながら長々と話したが、
実家住まいのMさんを遅くまで引き留めるわけにもいかない。

その日は解散することになり
駅でサヨナラを言おうとしたのだが、
ターミナル駅で沢山人が行きかう中で
Mさんと向き合っていると感情を抑えられなくなり
私は思わずその場でMさんに告白をしてしまった。

突然の告白に驚いた顔のMさん。

「こんな場所で告白されたのは初めてやけど、
めっちゃ嬉しいよ」とMさんは言った。

そしてその日は結局YesなのかNoなのか
わからないまま帰路についた。

あの場所で告白してしまったことに
少しの後悔をしつつも、
私は気持ちを伝えられたことにスッキリしていた。

そうして、Mさんからの回答を待ちながら
数日過ごしていると、
ふと上司から呼び止められた。

「ちょっと話があるんやけど、今いいか?」

この言葉で私の中にピンとくるものがあった。

話を聞いてみると、その話は私の予想通り
先日行った現地に正式に赴任してくれないかとの
打診であった。

期間は3年間。

正直自分にはまだ早いという気持ちと、
思い切って海外での仕事にチャレンジしてみたい気持ちが
私の中で大きな葛藤となった。

しかし、会社から打診が出たということは
実質それにNoという権利は私にはないことを
上司は暗に私に伝えた。

一瞬悩みはしたものの私はその提案に快諾し、
2か月後から3年の海外赴任が決定した。

赴任先は前回同様の工場であるが、
いかんせんへき地なのである。

何の娯楽施設もなければ、日本食も食べられない。

Mさんを招こうにも何もない場所である。

そんな場所への赴任が目前に迫り、
私は急遽一人暮らしの部屋を解約したり、
諸々の準備をし始めた。

それまでしてきた仕事の引継ぎもあるので
バタバタした毎日を送りながらも
私はMさんにこのことをどう伝えようか
悩んでいた。

彼女からは相変わらず正式な答えを
もらっていたわけではないが、
仮にYesだっとしたなら、3年間待たせることになる。

勿論行ったっきりということはなく、
半年に一度の頻度で休暇はもらえるのだが、
それでも半年に一度である。

そして、その間にMさんは就職してしまう。

どうなるのか私自身全く想像ができない。

そんな不安のなか、私はMさんに連絡して
会うことにした。

前回告白した後ではあるが、
変わらず接してくれるMさんにホッとしながらも
私は海外赴任のことをMさんに話した。

Mさんは驚きながらも
「〇〇くん、すごいやん!昇進街道まっしぐらやね」
などといって笑ってくれた。

私が現地に行ったら定期的に休暇がもらえること、
少し遠いが、現地から少し離れた場所にある
素敵なリゾートにも連れて行ってあげられることを
Mさんに伝えると「楽しみ」など言っていた。

この時、私のなかでMさんの答えは「Yes」だと思っていた。

そしてそれから数日たち、相変わらずバタバタと
出発の準備をしていると私の携帯が震えた。

送信者はMさん。

内容は色々考えたけれど、
私と付き合って3年間待つことはできないと
いうものであった。

正直この答えが返ってくることを
薄々感じていた私は
ショックを受けなかったと言えばうそになる。

しかし、彼女を置いて海外に行くことに
抵抗があった私はその答えを彼女の優しさだと
受け入れることにした。

そこから私は海外に出発し、月日が流れた。

3年間の任期を終えて、帰任してからも
出張ベースで違う海外工場に行ったりと
相変わらずバタバタする日々が続いたが、
私の中でMさんは心の片隅にずっといた。

そこで私はケーキバイキングに行った友人に
連絡してみてMさんの近況を聞いてみることにした。

友人も今は直接Mさんと連絡を取っていないようであったが
Mさんとの共通の友人がいるらしく
そこから情報を聞いてもらうことになった。

そして数日経ち、彼から来た連絡は
既にMさんには別の彼氏がいて、
日々忙しいながらも楽しく過ごしていると
いうものであった。

いつまでもMさんに囚われている限り
私の中で新しい恋愛はできない。

そう思い、私はMさんのことを忘れようとした。

人は忘れようと思って簡単に忘れられるほど
単純な生き物ではない。

しばらくは忘れられなくて辛い気分が
なかったと言えばうそになる。

しかし、ありがたいことに私を取り巻く
忙しい日々がそれを忘れさせてくれた。

そして、色んな経緯があり私は今の妻に出会い
結婚をした。

今は家族4人で素敵な生活を送っている。

それ以降Mさんがどうなったのかは
私は全く知らないし、知ろうともしていない。

私の中で綺麗な思い出として残っていれば
それでいいと思う。

今回思い付きで過去の忘れられない恋愛を
書いてみると、
なんと6000文字の大作になってしまった。

もちろん妻にもこんな話はしたことがないので
私にとってこの話を初めて言語化したのだが
心の中でずっと言語化したいと思っていたのかもしれない。

書きながら勝手に手が動くという
奇妙な現象を目の当たりにできたのは
きっと私の心が書かせていたからなのであろう。

あなたには忘れられない恋愛があるだろうか。

もしあるなら、一度言語化してみてはどうだろうか。



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