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自己アピールすることはウザいのか

昨日朝活をしているとガタガタと音が鳴り
部屋に娘が入ってきた。

時間はまだ5時半である。

前日の夜に早く寝落ちしてしまったので
朝も早く起きてしまったらしい。

とは言え、私はまだ少し作業が残っている。

娘に「工作でもする?」と言って
折り紙とペン、ハサミなど一式を渡すと
私の横で何やら黙々と作り始めた。

作業をしながら娘の様子を横目で見ていたが
何を作ろうとしているのか、
折り紙に引いた線をハサミで器用に切り取って
それらをテープで貼り合わせている。

そして、驚いたことに娘が切り取っているパーツは
とても小さく、複雑な形状をしていたのである。

娘がそれらを器用に切り取っている様子を見て
私は感心してしまった。

そこで私が彼女に
「〇〇(娘の名前)、すごい切るの上手なんやな」
と言うと、娘は少し嬉しそうにしながら
「保育園でも先生に褒められるねん」
と言っていた。

これは単なる親ばかではないらしい。

保育園でもこのハサミ使いは感心されるのであろう。

そう思っていると、娘がこんなことを話し始めた。

「でもな、Aちゃん(同級生)は自分から
『私、切るんめっちゃ上手いで』っていうねん」

Aちゃんは赤ちゃんの頃から知っているが
あまりガンガン自己アピールするようなタイプには
見えないので意外だと思いながら、
「〇〇(娘の名前)もアピールしたらええやん」と私が言うと、

「嫌や。だって自分からアピールするのって
何かウザいもん」

と娘は答えた。

私はこの会話でとても驚いてしまった。

なぜなら娘はまだ6歳にもかかわらず、
何かをアピールすることにウザいなどという
感情を持っていたからである。

私が同じような感情を持ち始めたのは
一体いつからだっただろうか。

今から30年以上前のことなので
正直記憶は曖昧になっているが、
少なくとも小学校に入るまでそんな気持ちには
なったことがないような気もする。

だが、うちの娘が特別というわけでもなさそうなので
恐らく保育園の中でもそのように感じる人が
何人もいるのであろう。

そう考えると、一つの疑問が出てくる。

では子供たちはなぜ発表会などであんなにも
自己アピールをするのだろうか。

保育園では年に2度ほど参観日のような
イベントが開催される。

参観日では日常彼らがしている授業の様子を
見させてもらえるのだが、
その場ではいつも子供たちはしっかりと
先生に対して自己アピールをしているように
見えていたし、
何ならその様子を私は目を細めて見ていた。

周りのことを気にせず自己アピールすることが
一つの子供らしさの証のような気が
していたからである。

だが、娘が言うには自分ができることを
堂々とアピールすることはウザいことである。

そうなると、発表会で自分はできる、自分はわかると
アピールすることと矛盾してしまう気がするのだ。

恐らく、ここには子供たちが成長していく過程で
自己アピールしたいという気持ちと
それをしすぎることはウザいと思われるという
葛藤があるのではないだろうか。

小学校の授業参観では
確かに「俺が俺が」と前に出てアピールする子は
ほとんどいない。

まさに、今の娘の歳が自己アピールに対して
肯定と否定のバランスが微妙な時期なのだ。

私達日本人は自己アピールをあまりしない国民性だと
一般的に言われている。

以前に何かで見たことがあるが、
英語圏でない国で
”Can you speak English?”と聞くと
日本人の”Yes”と答える人の割合は
他の国に比べて圧倒的に低かったそうである。

これはもちろん英語力そのものの
問題という面もあるのだろうが、
この質問に”Yes”と答えた他の国の人は
決して流ちょうに話せるわけでなく
単語が言えるだけのレベルの人もいたそうである。

逆に私達日本人はそこそこ英語を話せるにも
関わらず、そこで”Yes”と答えることに
躊躇してしまう人が多い。

この一つの原因はムラ社会から来る
”出る杭は打たれる”思考であるとは思う。

核家族化が進み、盛んにダイバーシティなどという言葉が
叫ばれている今でもこの思考は私達日本人にとって
根強いものがある。

それ故に私達は成長の過程で、
”自己アピールすること=良くないこと”と
思うようになってしまうのであろう。

だが、これは実にもったいないことだと
私は思うのだ。

なぜなら、この質問で”Yes”と答えていたなら
そこにチャンスがあるかもしれないからである。

自己アピールするのは嫌だという理由で
”No”と答えることで
そのチャンスを逃してしまえば、
仮に自分でクリアできるスキルがあったとしても
まったく無駄になってしまうからである。

私は自分の子供たちにはそうなってほしくないと
思っている。

自分ができる事に自信をもち、
そして自分が今できないことに対しても
いつかできるようになるという前向きな気持ちで
チャンスを手にしていってほしい。

娘はせっかくハサミを上手に使うことができて
その技術をアピールすれば、
保育園の制作で大きなものの裁断を
任せてもらえるかもしれない。

”能ある鷹は爪を隠す”は獲物を追いかけるからこそ
活きてくる言葉なのである。

自らアピールしないことで、自分が獲物を追いかける姿勢を
そもそも失ってしまっては意味がないのだ。

だが、このことを娘にストレートに言っても
なかなかピンとは来ないだろう。

私にできる事は、娘が作った制作物を褒め
こんなにきれいに作れるなら、
先生や友達にもアピールしてみたら?ということだけである。

どう伝えればこれが上手く娘に伝わるだろうか。

こんなことを考えていたら、娘は制作が終わったらしい。

出来上がった作品をママが起きてきたら
見せて驚かせるんだと笑う娘を見ていると、
なんだか小難しいことを考えていた自分が
マヌケに思えてきた。

しかし、出来上がった作品を見て、
私が全力でそれを褒めたのは言うまでもない。

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