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「人が好きな人」が人事に向かないわけ Part 2

前回は、人事組織全体像、人事部長、そしてHRBPをみてきた。今日は続きとして、「採用」をみていきたい。中途採用と新卒採用では「人が好き」なことがどう関係してくるのか。あくまで私の主観ではあるが、人事部長やHRBPよりかは「人が好き」がプラスに働く場面が多い、かもしれない・・・!

前回の記事はこちら。


採用

ここからは、Center of Excellence の中の機能を見ていきたいと思う。その中でも、ビジネスをドライブする上で特に重要性が高いもの、そして多くの企業が課題感をもっている「中途採用」にまずは焦点を当ててみよう。


◎ 中途採用

英語では Lateral Recruiting Team や Professional Recruiting Team などと呼ばれる。

個人的に中途採用チームは人事の中で別物だと感じている。優秀なリクルーターになればなるほど、いわゆる「人事」= 社内向けの労務やタレントマネジメント系の業務とはかけ離れていくイメージがある。

企業内採用担当(リクルーター、またはインハウスのリクルーターと呼ぶこともある)にはヘッドハンター出身の人も多く、一匹狼の個人事業主、または外回りの営業のようなイメージに近い。

難しい採用ポジションになればなるほど、一本釣り(ピンポイントで欲しい人に対してヘッドハンティングしにいくこと)が求められるようになり、社内を理解することよりも、人材マーケットの理解に目が向けられるようになる。

また外部エージェント(つまりヘッドハンター)を使うことも多いので、彼らの手の内をしった元ヘッドハンターの同僚は会社にとってもとても心強い。

もちろん、会社のビジネスや欲しい人物像を深く理解するに越したことはない。だが、候補者の母集団さえ確保できれば、どんな人が欲しいのかは現場の面接官が絞り込んでいくことができるので、一般的にリクルーターは外の世界の代弁者として重宝されることの方が多い気がする。

さて採用は「人が好き」が吉と出るか凶と出るか。これはもしかしたら「吉と出る」のかもしれない。とにかく外に出て人と会い、ネットワークを作り、自分の中でのタレントマーケットを構築する必要がある。

ただし私自身これまで何十人ものヘッドハンターと出会い、仕事をしてきたが、常に感じるのは、彼らはあくまで「営業」であるということだ。巧みな話術を駆使している。成功報酬型で働いている人も多いし、とても競争が激しい世界だと思う。

企業内の採用担当となると、もう少し丸くなった人が多いようにも思うが、それでも外や現場からのプレッシャーの中での数字主義の世界であることは変わらない。

それには「人が好き」という動機だけでは弱くて、ディールを決めたいという底知れぬアグレッシブさが必要だと感じる。

候補者の人生などあまり興味がなさそうなヘッドハンターにも幾度と出会った。「人が好き」なヘッドハンターもいるだろうが、業務的にそれは "nice to have" レベルだろうし、(第三者として見ていて)それだけで生き残れるような世界でもないように思う。

企業内採用担当としても、こういったヘッドハンターを相手に強気にネゴする場面も多発するし、ヘッドハンターから社内採用担当に転身した同僚と一緒に仕事をすることもある。

私自身、中途採用のアジア責任者をやっていた時は、ヘッドハンターを相手に正直疲れることも多かった。特に外資を担当するヘッドハンターは外国籍の方も多いので、文化的にもダイレクトで真っ正面から交渉してくることも多い。こちらもかなり強気に出ないと、すぐに揚げ足をとられるような感覚が常にあった(そういう時、アメリカで育った経験がとても役に立った)。

※これは良い悪いではなくあくまで文化の違いの話なので、文化を否定する意図は全くないこと、お含み置きください。

そういった理由からも、中途採用チームは人事全体の中でもドライな雰囲気が漂っていることが多い気がする。それは決して、悪いことではないと個人的には思う。

(当然、副作用として、チームビルディングが難しいとか、人事全体へのカルチャーの影響とか、色々別の課題が出てくるとは思うけれど。)

もし「人が好き!」なことと、上記のようなドライかつアグレッシブさが上手いバランスで共存できている人は、中途採用に向いているのかもしれない。また候補者側からしてもそういう採用担当・ヘッドハンターに出会えた人はラッキーかもしれない!


◎ 新卒採用

新卒採用においては、ついに、ついに、「人が好き」がプラスに働くかもしれない。しかしあえて言うならば、新卒採用は人事の中でも特に事務作業が多い仕事だと私は思っている。極端に言うと、半分イベント屋さんのような感じだ。これは私自身、過去に新卒採用の責任者を務めた経験から痛感している。

大学生向けのキャリアイベントなどにいくと、各企業の採用担当者が登壇している姿が華々しく見えることもあるかもしれないが、あれは業務のほんの一瞬で、その裏には膨大のプロジェクトマネジメントの事務作業=ロジが発生している。

そこを若手やアルバイトに任せられるような、それなりの立場の新卒担当者なら話は別だが、そうでなければ一瞬「あれ、私って人事だっけ、それともイベントコーディネーターだっけ?」と分からなくなるくらいかもしれない。

そして肝心の「採用判断」に至っては、外資では一般的に、現場が面接・合否決定をするので、人事担当者に権限はない。

唯一人事っぽい仕事と言えば、「今年の新卒採用戦略」みたいな話を策定し現場に提案する過程、そしてオファー周りの議論や手続き(今年の新卒は給与をいくらにするのか、配属はどうするか、などなど)が思いつく。

とはいえ、人事市場で新卒採用の仕事はそこそこ人気があるらしい。「外向きで華やか」だったり、「大学生と話せる(刺激を受けられる)」などがあるようだ。

前回の冒頭に書いた「人事をやりたい人からの相談が多い」というのも、実はこの新卒採用をやりたいという相談が一番多い。

これにはいくつか理由があると思っていて、主には、

① 人事への転身(というか職種の大幅変更)を考える人は比較的まだ若い人が多い。そうすると、「就職活動」や「大学生」が身近なものなので、新卒採用に興味を持ちやすい。逆にHRBPなど経営戦略に関係する職種は、まだ遠い話に感じやすい。

というような転職希望者側の理由の他に、

② 新卒採用以外は、未経験での転職が難しいので、他職種から人事への転身を考えると、必然的に新卒採用が挙がりやすい(ジュニアなポジションであれば求人票にも「未経験者歓迎」とあることが多い)。

③ 前述の通り、事務作業が膨大なので、ジュニアなリソースを使える場面が多く、ヘッドカウント的にジュニアポジションを用意しやすくなり、求人も増える。よって、職探しをする方にも目にとまりやすい。

という環境的要因もあると思う。

いずれにせよ馴染みやすい職種だと思うし、私自身も一時期実務に関わってみて、大学生と日々交流できるのはとても刺激的で面白いなと思った。やはり若い方と話すのは、こちらの活力にもつながる。

特に今のソーシャルネイティブ世代 = Z 世代の考え方は、デジタルネイティブ世代 = Y 世代(またはミレニアル)である私と異なることも多く、自分自身の勉強になることも多い。

またキャリアイベントなどで、現場の既存社員をスピーカーとして招いたりすることも多いため、現場との交流も多いしビジネスを理解する機会もたくさんある。

そして内定が出た学生さんに対しては、「内定辞退」を防ぐための内定者フォローなど、一対一の関係性を築いていくことも重要な任務だ。

こういったことも含め、「人が好き」な動機は大いに役立つような気がするし、人との交流が自分の活力になるのであれば、Win-Winの環境になるのではと思う。

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ここまで書いてきて、あえて明文化しておきたいことが一つある。

上記は全て、私がみてきた「現状」である。つまり、単に「今はこうである」という状態の説明であって、「こうあるべき」という私自身が思う「あるべき姿」ではない。

例えば中途採用については、外向きだけではなく内向きにももっと活躍の場はあるはずだ。HRBPと連携して企業戦略の観点からのタレントマネジメント提案を人事から発信していったり、(後に言及する)研修チームと連携してオンボーディングに深く踏み込んでもいいわけだ。

新卒採用であれば、例えば今の学生タレントプールを分析した上で、会社が取るべき新世代向けダイバーシティ指針を提案することもできるし、大学の現場で何が起きているのかを代弁し、教育現場でのCSRプロジェクトの新企画だってできるわけだ。

前述の人事部長とかHRBPとかも、同様にもっとプロアクティブにビジネス(経営)に直結した動きを、もっと提案することはできるのだと思う。

ただ現状は何らかの理由で、それらをやっていない会社の方が圧倒的に多い。これは自戒の念を込めて。大概が、忙しくてそこまで手が回らないという理由だからだとは思う。

今戦略的人事が騒がれる中で、人事全般がそうなっていかなくてはいけないし、私自身もそれを忘れずに人事職を全うしたいと思う。

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長くなるので今日はここまでにし、次回はTalent Development (研修)、労務、制度設計、人事に求められる要素、などをみていきたいと思う。


※同じテーマで長くなってきたので、もしかしたら次回は違うテーマを一回挟むかもしれません(気分によって ^^;)。ご了承ください!


🌷ここまで読んでくださりありがとうございました!🌷


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