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ヴィロンの森 第十一章 最後のダンス

ヴィロンの一族が、ローヌの森に移る三カ月の間、少女とその兄弟達とラルフは、お互いの元を出来るだけ行き来しました。そしてヴィロンの一族が、他の森に移る三日前、アリアンヌは舞踏会の日に一緒に月を眺めた、自分の城のバルコニーでラルフと落ち会いました。

二人は、わずかに虫の鳴き声が響く中、部屋のシャンデリアと月の光に照らされながら、手を取り合い、しばらくずっとお互い見つめあっていました。

「何を話したらいいのか……」
しばらくの沈黙の後、やっとラルフが口を開きました。
「早かったわ、後、三日後にあなたは行ってしまうのね」
アリアンヌは悲し気にそう、言いました。
「だけど、君の事はずっと忘れないよ」
悲しさを押し隠した笑顔で、少年は言いました。
「この三カ月、あなたと私達は、とても楽しい日々を過ごしたわ、何よりも楽しかった。まるで夢だったのではないかというほどに」
「僕もだよ……おばあ様が昔、言っていたよ、子ども時代の日々は夢の様に楽しい日々だったって。きっと僕たち、おばあ様と同じように、かけがえのない子ども時代を過ごせたんだね」
ラルフはそう言うと、少女をそばにあったベンチに座らせました。
そして、バルコニーの外に向かって口笛を吹くと、しばらくして、白い大フクロウが飛んできました。

「最初に君と出会った時に、吹いていた曲を覚えている?」 
少年は少女の方に向き直りながら、そう尋ねます。
「覚えているわ。とても綺麗な曲だった」 
大フクロウは二人のもとへやってくると、前と同じく、笛の入った木箱を少年の足元に置き、それから、バルコニーの手すりにとまりました。
「ありがとう!」
そう、少年がお礼を言うと、大フクロウは鳴き声をあげ、飛び去って行きました。

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