男ですが裁縫や編み物や料理が好きです。(『おはなし仙人の勝手に人生相談』その9)

相談者(自称 男子中学生):ぼくは小学校の頃から裁縫や編み物や料理が好きなのですが、男がこういうのをしていると学校でバカにされそうで、友だちにも言わずに家でこっそりやっています。このまま秘密にしておいたほうがいいのでしょうか?

おはなし仙人:裁縫に編み物に料理、いいねぇ! わしも世間では男ということになっておるが、裁縫も料理もやるよ。自分の破れた服くらい自分で繕わずに仙人は名乗れまい。料理だって毎日やるしね。自分で料理をしない仙人はだいたい堕落するね。自分の命を支える食事に自分で責任をもたずにどうする。

これは男がするもの、これは女がするもの、という考えがそもそもおかしいのじゃ。男と女の境界線というのが、そもそも曖昧なものじゃ。身体は男で心は女だったり、その逆だったり、いろいろな人間がいるもので、男と女の区別なんて、結局は人間がわかりやすく勝手に決めたもんじゃろう。そんなことに煩わされるのは損ってもんだ。性別なんてものにとらわれず、自分が好きなことをすればいいのじゃ。それで世間はああだこうだと言ってくるもんじゃが、気にしない、気にしない。気にしないと思っても気になるもんじゃが、他人や世間に何を言われようが気にしない訓練は必要じゃな。

他人の言行をコントロールするわけにはいかない。世間のバカげた価値観や固定観念によって、煩わされることは多々あるもんじゃが、自分をどれだけ打ち出していくかは、自分の訓練次第、とも言えよう。学校でバカにされたら、自分の好きなことを楽しめなくなったり嫌な気持ちになるのを避けたければ、今のままこっそり楽しんでいればいいさ。秘密にしているのもバカバカしくなって、誰に何を言われようが構わない、という状態になったら隠している必要もないしな。どっちのほうがいい、ということはない。それは、あなた次第じゃ。

そういえば、ワシの近所の山でも、「林業女子」といって、世間のいわゆる「女」たちがグループをつくって、チェンソーを振り回しておる。固定観念にとらわれた老人たちはびっくりしておるようだが、男だろうが女だろうがなんだろうが、チェンソーを振り回したいやつは振り回せばよいし、針でちくちくしたいやつはちくちくすればいいし、自分の食事をつくりたいヤツは料理をすればいい、というだけの話じゃ。

なんとか男子とか、なんとか女子とか、いろいろなものに付けて言うヤツがでてきたが、今までは男と女のどちらかばかりがやってきたものがいろいろあるってことじゃな。この言い回しは気味が悪いが、そのうち、どこの世界も、性別関係なしに入り混じって、こんな言い回しもすたれてくるはずじゃ。「仙人男子」とか、「仙人女子」ってのは聞かないのぉ。仙人になってまで性別を気にしているようじゃ、修行が足りないってもんじゃ。

とにかく、男はこう、女はこう、なんていう世間の固定観念なんていうのはそもそも馬鹿げたものなんじゃから、あなたはそんなことは気にせず、自分の好きなことをしていけばいいと思うぞ。さあて、腹が減ったな。これから一緒に料理でもするかね?

(おしまい)

※架空の人物「おはなし仙人」が架空の人生相談に答えるシリーズです。
筆者はおはなし仙人と同一人物ではありません。

※なお、おはなし仙人は修行とお昼寝でいそがしいため、コメントをいただいても返事ができません。コメント自体は歓迎で、いただいたコメントはおはなし仙人にお伝えしておきます。

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