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潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く

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2021年7月の記事一覧

第17話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

僕が初めて見た異性の胸は、保育園の幼なじみで何十年ぶりの再会を果たした女の子だった。そし…

第16話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

人差し指と中指を優しく添えて、ゆっくりと上下運動で刺激する。自分でやる行為とは格別に違う…

第15話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

数字を意識してしまうから変に勘違いするかも。私は綿の大きくなった粉雪を数えながら思った。…

第14話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

鯨が潮を噴くように、僕は穢れの知らない手のひらへ白い液体を飛ばした。引くに引けない糸が絡…

第12話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

彼女が桃香のことを見て、そんな風に考えたとき、物語は数分前を語ることになった。 沈黙から…

第11話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

兄が大人の成人式に参加したあと、なんとなく雰囲気が変わった。見た目の変化とは違う。内面的…

第13話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

冷たい唇が僕の唇を震わせた。緊張からの震えが正解なんだろう。僕の期待とは裏腹に、一歩手前のキスは冷たかった。柔らかい唇がそっと触れたとき僕の血が脈々と打つのがわかった。 初めてのキスは、冷たい空気の中で交わされた。ソファーに並んで座った僕たちは、好奇心を感情に織り交ぜて、触れたまま止まった時間のキスに震えた。説明書の無いキスに本能という塊が操作する。 同じタイミングと同じ思いが自然に重なる。ミルクレープほどの隙間から、濡れた舌が滑り込む。ほんのり微熱を帯びた舌と舌が絡みつ

第10話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

北城美鈴(きたしろ・みすず)二十歳。私が大人の成人式を知ったのは小学生のときだった。教えて…

第9話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

何人目かのスピーチが終わったとき、私は列を離れてひと気が少ない所へ移動した。すぐ後ろから…

第8話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

町の市長から、ありがたいお言葉を頂きました。エコーのかかったマイクで話す中年男性。まった…

第6話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

桃香との思い出は、僕の人生でほんの一握りに過ぎなかった。あの寒かった日の翌日、桃香は卒園…

第7話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

成人式が始まっても実感はなかった。それはそうだろう。僕たちは二階に居て、式に出席していな…

第5話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

肩まで包まれた毛布の中で、僕は千夏先生の言葉を繰り返した。大人の成人式?あの頃の僕が、も…

第4話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

たった五才の保育園児が何を感じるのか?それは、五才の僕に訊ねてみないとわからない。桃香とは年長組のときに、仲良くなったような気がする。 確か。 あれから数十年経ったけど、彼女は僕のことを覚えていた。それは、とてつもない記憶力だと思う。正直言って、僕の方はうろ覚えだったし、横に並ぶ彼女の顔を改めて見ても、微妙な残像しか流れていない。 もしかして、僕の顔に印象があったのか?それは無いなと自分で納得する。 勘違いしていないが、僕は至って平凡な顔をしていた。 「ねぇ、海ちゃ