ところ変われば
あちこちに転居する生活を送っているが、地方に行くと所謂「ご当地ならでは」の食品をスーパーなどで目にすることが多くある。
福井では冬に「水羊羹」が山のように売ってあるのを見てびっくりした。「冬はコタツで水羊羹」なのだそうだ。関西でよく見かける、丸い缶に入った小さな物とはまるで違う。平べったい四角い紙の箱に入っている。割合大きい。大勢で切り分けて食べるようだ。味も関西の物とは違っていて、黒砂糖が勝っている。あずきは皮が入っていないから、こしあん使用だろう。こってり甘い関西の物に比べて、スッキリしているように思う。甘い物が好きな人にはちょっと物足りないかもしれない。地元では夏ではなく、冬の風物詩であると言うのが面白い。
「五月ヶ瀬せんべい」というお菓子もある。「せんべい」という名前から辛い物を想像するが、実際はクッキーに近い。ピーナッツがふんだんに入っている。そしてかなり硬くて分厚い。知人の中には、袋に入れたまま砕いて小さくしてから食べる、という人もいた。素朴な甘さである。お茶請けの一般的なお菓子のようだ。地元の人に聞くと好き、という人が多かった。高速道路のサービスエリアなどでも見かける。口がカラカラになるので、水分を一緒に取らないと食べられないと思う。
滋賀でびっくりしたのは「赤こんにゃく」と「丁字麩」である。赤こんにゃくは、安土城主だった信長が派手好みだった為、献上するこんにゃくに色をつけたのが始まり、とか聞いたが、真偽の程は分からない。真っ赤というより、煉瓦色という方が近い。売り場で初めて見たときは何かと思った。しらたきのように細くした物もある。地元では学校給食でも普通に出るらしい。赤い成分は身体に悪いものではなく、調理も普通のこんにゃくと同様に出来る。もらって調理した事はあるが、積極的にチョイスした事はない。馴染みがないとどうも手に取る気になれなかった。関西に住む友人にプレゼントしたら、おでんの汁の中で半端ない存在感を誇示していたそうだ。信長を喜ばせる為というのは本当かもしれない。
丁字麩(ちょうじふ)は四角い棒状の麩である。二本?が袋にピッチピチに入っている。地元の人はからし和えにしたりするらしい。からしあえにした物をパックにし、お土産として売っている事もある。私は食べたことはない。特に高齢の方は、結構コンスタントに皆さん買っている。私の勤めていた食品スーパーではいつも30個くらいまとめて買っていかれる方もいた。何にするのだろう、と思っていつも見ていた。
ご当地ものは、その土地その土地なりの愛される理由があるのだと思う。色々見つけるのは面白い。食べてみるのにはちょっと勇気のいる事もあるが、これからも行った先で試してみたい。