在間 ミツル

エッセイスト。身の回り半径3m以内で起きたこと、感じたこと、考えたことを綴ります。 お…

在間 ミツル

エッセイスト。身の回り半径3m以内で起きたこと、感じたこと、考えたことを綴ります。 お気に入り記事は有料で公開(不定期)。申し訳ありませんが、諸事情により2024年4月以降当面コメント返し出来ません。

マガジン

  • 夫と私

    多動、整頓ベタ、デベソ、異常な集中力、の夫とのすっとこどっこいな日常です。

  • My Favorite Works

    私の心に響いた素敵な記事。笑いあり、涙あり、感動あり。忖度なし、下心なし、計算なしで私が読み返したくなる作品ばかりです。

  • クラリネット諸々

    愛するクラリネットとの関わりあれこれを綴りました。

  • 忘れられない先生まとめ

    私の出会った個性的で人間味溢れる先生方の思い出です

  • 関東と関西

    関東に住む関西人の感じた事を綴りました。

最近の記事

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海は必ず凪ぐ

ちょっと前まで、私は夢なんて持っていなかった。この歳で夢を語るなんて、バカげたことだと思っていた。そしてどうやって死にゆくか、いかにこの世に未練なく、きれいさっぱり自らの生きた恥ずかしい痕跡を消すか、そんなことばかり考えていた。 世の中は怖くて厳しいもので、生きることは辛く苦しいもの。他人は先ず警戒し、おそれ、避けるべきもの。そんな風に感じていた。 この世は限りなくグレーで、自分はその中で辛うじて生存を許されている存在、ぼんやりとだが、そんな気がしていた。 上手く行かないこ

    • オーバーツーリズム報道に思う

      少し前になるが、ニュースでオーバーツーリズムについての特集を組んでいた。京都市内にある義実家等に頻繁に出かける用事のある人間として、興味深く観させてもらった。 しかし、残念ながら内容には感心出来なかった。 実態を正確に報じているとは、とても思えなかったからである。 一つの例として、京都の市営バスの中の様子が写し出されていた。そこには大きなキャリーケースで我が物顔に通路を占拠する、大勢の外国人観光客が写っていた。立錐の余地もない感じだった。 私はこの映像を観て、強烈な違和感を

      • じいちゃんも夫

        NTTの番号案内サービスが二年後?に終了する、というニュースを聞いた時、『まだやってたんや』と驚いた。 近年の利用者の減少が廃止の理由らしい。誰もが納得するだろう。 昔は何度かお世話になったことがある。固定電話を引くのが当たり前だった時代には、結構重宝した。 時代の流れを感じている。 ニュースを聞いた時、ふと昔の思い出が蘇った。 ハッキリとは覚えていないのだが、多分小学校高学年くらいの頃だったと思う。長期の休みか何かで、私は祖父母宅に一人で滞在していた。 いつもは夫婦二人で

        • ピーちゃんのお気に入り

          実家の隣家はT さんという。長崎の五島列島出身のご夫婦と、私より一つ年下の男の子、ウチの妹より二つ年下の女の子の四人家族だった。 家族構成が似ているのと、どちらもよその県から来ている者同士、仲良くさせてもらっていた。 幼い頃は子供同士、よく一緒に遊んだものだった。 Tさん宅にはいつ頃からか、一羽のセキセイインコがいた。名前をピーちゃんといった。羽を切って手乗りで飼われており、寝る時以外は家の中で放し飼い状態だった。 気難しいご主人は生き物全般が大嫌いで、ペットを飼うなんても

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          オクレさん、全力疾走する

          最近、私の朝の仕事は少し変化している。新人Iさんの教育担当になった為である。 朝、二階の出納係の窓口で正面玄関とウチのレジの鍵を受け取り、全員分のインカムを一階の売り場まで持って降りてくる、という仕事をIさんにやってもらっているのだ。 早朝番要員として採用されたIさんに、まず覚えて頂きたいのがこの鍵の授受を確実に行うこと、だからである。Iさんは、なかなか覚えるのが『ゆっくりさん』なので、根気よく同じ作業を何度もやってもらう必要があるのだ。 その日の朝も、私はIさんより早く来た

          オクレさん、全力疾走する

          カタログギフト

          「これ、お前決めて申し込みしといて」 先月のある休みの日、夕食後にゆっくりしていると、夫がこう言って一冊の厚い冊子を投げてよこした。 見るとカタログギフトである。 「これ、どうしたん?」 「同じ部門の若い奴が結婚してな。欲しいもん訊いて、みんなで金出して結婚祝いの品を贈ったんや。その返しや」 「ふうん」 パラパラとページを繰る。 カタログギフトの常なのだが、パッと見たところ、凄く欲しい!というものはない。 「なんか欲しいもん、なかったん?」 夫がした祝いなんだから、自分が欲

          カタログギフト

          私のキュンキュンポイント

          男性が心奪われる女性の仕草とか表情というのは、色々あるだろう。 髪をかき上げるのが好き、とか、目を伏せた時の睫毛がたまらないとか、コップに添える小指がピンと立っているのが良いとか、枚挙に暇がない。 では逆に、女性は男性のどういう仕草や表情にキュンとするか。若い女性向けの雑誌などで特集になったりしそうだ。 オバサンも昔は『若い女性』だった訳なので、生きている限りキュンキュンポイントは絶対ある(はず)。『○○する仕草って良いよね~』などと群れてキャッキャと騒ぐことからは縁遠くなっ

          私のキュンキュンポイント

          生涯忘れない日

          その日は土曜日だった。 朝起きて、普通にトイレに入って用を足して立ち上がった私は、何気なく便器に目をやって驚いた。 鮮血が走っている。それもあまり少なくない量だ。 痛いわけでも、お腹が張っている感じもない。でも、私は直感した。 きっと、今日だ。 病院に電話するために受話器を取り上げながら、私は興奮気味だった。 お腹は静かにその時を待っているのか、いつもより動かない。 「産徴があったんやね。診てみよか」 先生に言われて、診察台に上がる。 「うーん、まだ子宮口はそんなに開いてな

          生涯忘れない日

          私、頑張らなきゃ

          近年、我々接客業界の人間の、服装や髪型などの自由度は随分増した。夏場の男性社員は、最早ネクタイなしの方が主流になりつつある。 金髪はダメでも茶髪はオーケーとか、ネイルは派手な装飾を施さなければ良いとか、そういうところも増えてきたように思う。 要はお客様に不快感を抱かせず、清潔感があり、気持ちよく愛想よく接客できる人間なら外見は問題ない、ということなんだろう。それをみて苦情を言うお客様が少なくなってきた、ということでもある。 やっと人間の通常感覚に、日本社会が追いつきつつあるよ

          私、頑張らなきゃ

          小さい私

          私は小柄な女である。 身長は百五十センチちょっと。小柄といっても世の中を悲観するレベルではないと思うが、大きい方でないのは間違いない。 小学生時代は背の低いものから順番に並ばされたから、私はいつも先頭の方に居た。しかし私の前には大抵、一人か二人の先頭を務める子がいたので、私が先頭になることは滅多になかった。 高校生になると並び方は逆になった。背の高いものから順に並ぶようになったので、私はいつもしんがりの方にいたのだが、やっぱり一番最後ではなくて、後ろからニ、三番目に居ること

          土曜日が待ち遠しい

          (※以下はあくまでも私個人の感想です。ネタバレ多少あり。) ここ一週間、私は毎日のようにあるドラマを夢中で何度も観ている。このドラマを観る為に、某アプリを入手したほどだ。 ドラマのタイトルは『青島君はいじわる』(テレビ朝日)。元は吉井ユウさん作の漫画である。主役の二人は中村アンさん、渡辺翔太さんが演じている。 何を隠そう、私はこの漫画が大好きで、セリフを空で言えるくらい読んだ。ここまで熱心に読んだのは『のだめ』以来である。 最初の設定は多少無理矢理な感じもあるが、登場人物が皆

          土曜日が待ち遠しい

          ネジネジ星人は君だ

          我が家のドライヤーのコードは、油断するとすぐにネジネジになってしまう。尋常なねじれ方ではないので、元に戻すのにちょっと骨が折れる。 原因は多分、コードがどういう状態にあるかということを全く気にせず、手にしたプラグをなんとなくそのままコンセントに突っ込み、使用後もそのままの状態で元に戻す、という行動を繰り返していることにあると思う。 つまりねじった上にさらにねじっていくので、気が付いた時にはとんでもないことになっているのである。 ウチの実家の父はこういう状態が嫌いで、少しでもコ

          ネジネジ星人は君だ

          いつのまにか廃れる

          昨日のことである。 私はレジで一人、機械の掃除にいそしんでいた。特売日の翌日だし、チラシも入っていない。こういう日は比較的暇になる。埃の入り込みやすい機械の中を丁寧に掃除する、絶好のチャンスだ。 中にある入り組んだ溝の埃を丁寧に払っていたら、 「あのう、ちょっと良いかしら。靴のこと、お分かりになる?」 一人の女性客に声をかけられた。年齢は七十代後半といったところか。 「はい、いらっしゃいませ」 笑顔を向けると、彼女は困った様子を見せてこう言った。 「あのね、私ここでニ、三年前

          いつのまにか廃れる

          野菜ジュースが恋しい時

          ちょっと凹んでいる。 といっても明日の朝、美味しい野菜ジュースをクイッと飲み干せば、忘れてしまいそうなくらいのことなのだが、心に小さな小さな棘が一本、しっかりと刺さっている。 きっかけは夫との会話である。 ひょんなことから、都知事選の話題になった。 「小池さんはホンマに選挙上手やねえ」 私が感心していうと、夫はホンマにな、と頷いて 「蓮舫さんはイメージで損した部分が大きかったんと違うか。評論家のH氏が『彼女は生理的に嫌われたのではないか』って言うてたけど、オレもそう思うわ」

          野菜ジュースが恋しい時

          人間として対等だから

          最近、口にするのに抵抗がなくなった言葉に、 「この商品はお値下げ品でございますので、お客様都合での返品・交換は応じかねます」 というのがある。 レジに初めて立った頃はこれが物凄く言い辛かった。 『一旦お客様のところに渡ったものでも、再販売に耐えるものであればセール品であったって応じたって良いじゃないか。誰だって後から気が変わることはある。それがお客様ファーストの考え方だ』なんて言う風に思っていたからである。 返品や交換というのは、お客様の立場からするとやってもらえた方が良い

          人間として対等だから

          暑さにやられる人々

          夏の暑い日、朝の開け当番はちょっと緊張する。 暑い屋外で開店を待っていたお客様が、我先になだれ込んでくるからだ。気温が高ければ高いほど、皆様一刻も早く中に入ろうと身構えておられるので、自然と急ぎ足になるらしい。 大勢が団子になって入ってこられるから、将棋倒しみたいなことにもなりかねない。開け当番四人全員がにこやかに挨拶しながら、お客様が途切れる瞬間まで細心の注意を払っている。 手動でドアを開けるのだが、開ききるのを待たずに飛び込んでこられるお客様もいらっしゃる。こちらの開ける

          暑さにやられる人々