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独り言多めの読書感想文(朝井リョウさん『少女は卒業しない』)


朝井リョウさん『少女は卒業しない』を、読書感想文してみる。

(「月○本新作を仕上げる」というハードルを自ら設定してこなしていたという作家さん相手に)未熟者がおこがましい……!

という問題はスルー。だってお題で読書感想文募集してるんだもの。感想だもの。個人の主観だもの。勝手に好きなんだもの。勝手に好きに解釈したっていいじゃない。それが私の愛し方よ。相変わらず前置きが長い。

この作品は一言で言うと『「切な美しい」短編集』です。

何だ切な美しいって。言い得た! って自分の表現に酔ってんじゃねぇぞ零細SNSerが(playerのerと同じ意味ね)

いや、ほんとね、この短編集には外れがない。違う。語弊がある。

当たらないものがない。

複数の作品が混在する短編集には「中でもこれ」というお気に入りが生じやすい。同じ作家の同じ土台の中でだからこそ、テーマや当てたスポットによって、はっきりと作品同士を比べることが出来るからだ。だからその人にとっての優劣が生じるのはむしろ当たり前のこと。その当たり前をぶち壊す。思うにそのマジックの種、からくりは、

「仮想共感によるまやかし」だと思う。

誰しもが通ってきた学生時代。それは(不登校や長期化した嫌がらせなど、根本から学校に対しての印象が異なる人を除いた人達にとって)経年によって非常に美化されやすく、そもそも美化されていること自体に気付かずに享受しうる余白が多いため、記憶の中で曖昧になりがちな部分(主に「具体的に場面こそ覚えていないが、その時確かに感じた経験のある感情の記憶」)を作品を読み進めるうちに無意識に補填することで、ここに書かれている内容ほとんどを自分ごととして捉えるようになるためだ。

……オイオイ針の穴でも通すつもりかい? 自分で言っといてその推察、刺さらなかった時すげぇ恥ずかしいぜ? 針の穴より先に、そん時用の穴掘っといたほうが建設的じゃねぇの? a-ha.忠告ありがとう。考えとくよ。


桜色。甘酸っぱさと、刹那的に走る痛み。

「あの時」

学生で、無力だった。大切にしたい相手がいても、

責任、財産、余裕、時間。

上滑りする言葉。その人の人生を背負えるだけのものを持たない。でも大切にしたいと思ったんだ。本当に。その気持ちに嘘偽りはない。そんな叫びを。

「あの時確かに生じた、感情のエネルギー」を閉じ込める。


そう。確かに身に覚えのある感情。さまざまな立場、関係から掘り下げた先に、自分でも忘れていた宝物を見つけたかのような。決してまっすぐさわやかなハッピーエンドじゃなくて、例えるなら淡くけぶった水色をした、

泣きそうに微笑むような、空。それは痛みを知る分、どこまでもやさしくて。


性差関係なく、あなたは必ずこの作品の中に「あなた自身」を見つける。もしかしたら見つけたくなかったもの、あえて埋めていたものまで掘り起こしてしまうかもしれない。それでも、

読む価値はある。リスクを差し引いて有り余る。

「チア男子」「世界地図の下書き」「星やどりの声」どれも好きだが、中でもこの短編集はいつまでも私の一軍だ。満点の短編しか収めていないこの作品、おこがましくもこの感動、一人で味わうには勿体なさすぎる。

まずは一本、読むことをオススメする。トップバッターは「エンドロールが始まる」私自身、ネット上に作品を上げているが、その中での登場人物紹介のタイトル「エンドロール」はここからとった。おっとおしゃべりが過ぎた。


ここまで読んでいただいてありがとうございました😊うれしい。

あなたの読書ライフが、より実りあるものになりますように✨






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