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感情のドローイング

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感情を詰め込んだ魔法瓶。いつか自分の武器を持つために。
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2020年9月の記事一覧

なぜ今日も、情けなく息をしているのだろう。

人生で「死にたい」と言った回数がわからない。「死のう」と言った回数も。

ただわかるのは、私は生まれてこなかった方が良くて、私が生きているから家族に問題が起きた過去が、事実だと言うことだ。
それでもなお、情けなくも死を選択することができずにいる。自己責任論は強固で、私たちは望まず産み落とされ、望まずこの身体に入っているのに、ただあるがままにあるだけで、生きる事を選択し続けている。

何故死ねないの

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恋しい宇宙船。

恋しい宇宙船。

なんだかひどく疲れて、だけれども落ち着かない。
なにかに集中することができないけれど、なにもせずぼんやりとも出来ずに、意味もなく自室とリビングを往復してみる。
こういうときこそ散歩なのだが、空は重く、いつその上空で結実して、地を叩くか分からない。
なにより、やっぱりひどく疲れている気がする。

こういうとき、自分に何が足りないのかを、私は知っている。
それはつまり、物語だ。

  〇

何故だか調

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母は三歳児だから、空を竜が泳いでいる。

母は三歳児だから、空を竜が泳いでいる。

「私三歳児だから、いやいや期だから」
朝、リビングの机で母がそう言う。
今日は調子が悪いらしい。いつも悪いけれど。
「今日は調子が悪いので、なにもしません」
視線を机に落としてそう続ける母は、確かにどこか子供っぽい。
今日は、というか、今日も、では。率直な感想を述べればまた落ち込むことは目に見えているので「わかった」と一言だけ返して、カフェオレを啜った。

私の母は双極性障害だ。
この一年間、ほと

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人は羽ばたけない。

名鉄本線の車窓からは、白い鳥が見える。
その鳥が数回羽ばたいたら、電車は地下へと潜る。車内アナウンスがもうすぐ名鉄名古屋駅に到着することを告げている。

  〇

車がないと不自由な地域で生まれ育った私にとって、電車での外出は、とびきりのお出かけだった。駅のホームに滑り込む車両、窓の外を飛んでいく風景、老若男女様々な乗客。そのどれもが物珍しく映る。キョロキョロと落ち着かずに、母に叱られたことを覚え

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