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療育業界は、思う以上に「支援者による無意識の差別」がある〜Voicyの話題(無意識の差別)を深堀りします〜

こんにちは。にしむら夫婦のにしむらたけしです。

Voicyでは、基本的には、自分たちが伝えたいことをテーマにお話しているのですが、Voicyの運営の方からパーソナリティに「こんなテーマでお話してみてはどうでしょう?」とご提案があったりします。

で、今回Voicyさんからの提案が、「#無意識の意識」でした。

なので、今回療育業界における「無意識の差別」というテーマでお話をしてみました。

この中で私は、無意識の差別につながる「療育業界におけるステレオタイプ」についてお話しました。

結論から先に言うと、「この子は◯◯な子だ」と「決めつけてしまっている」支援者や「こうするべきだ」と「ムリなことを押し付けてしまう」支援者がいます。

こういった方々は決して悪気があるわけではなく、「良かれと思って」「この子のために」という自分なりの正義があったりします。

このような捉え方をする支援者の方がいる背景には「ステレオタイプで子どもを見るから」だと考えています。

反対に、ステレオタイプで子どもや子どもの周りの事象を見ることを止めれば、支援者自身の視野が広がり、より質の高い効果的な療育が実践できると言えます。


このことについて、Voicyの時間制限の中では十分に伝えきれなかったので、こちらで少し深堀りします。

※なお、この記事では療育支援者について書いていますが、保護者の方は「支援者」を「保護者」と読み替えていただければと思います。


無意識の差別は、ステレオタイプの思考から生まれる

ステレオタイプとは、いわゆる先入観や思い込みで人や事象を見ることです。


例えば一般の方に対して「自閉症の症状としては、どのようなものがあると思いますか?」と質問したら、「パニックになる、知的障害を伴う、言葉が遅れる、人の気持が分からない」などの答えが返ってくることが多くあります。

ですが、これ、全部ステレオタイプの思考です。

パニックを起こさない自閉症の方もいるし、知的障害もないというよりむしろIQがとても高い人もします。言葉の遅れは全く無い方もいますし、人の気持をきちんと理解できる方もいます。

要は、「その人がどうなのか?」という視点で考えないといけないのですが、つい「自閉症の方は、◯◯だ」と断言してしまったほうが、その人自身もしっくりくる、というか、理解できる、ということなのでしょう。


このステレオタイプの思考からの無意識の差別については、療育業界(支援者)にもその傾向がある人が一定数います。

いわゆる「評価もしていないのに、見た感じで『こうだ』と決めつける人」です。


例えば、椅子にじっと座れないお子さんがいたとします。

座れない理由は、色々考えられますよね 。


例えば、

・視覚優位で目に入ったものが気になるので、動いてしまう。
・座っていると疲労してくるので、立ち歩いてリセットしている。
・その(提供されている)課題がたいして面白くない。
・睡眠リズムが崩れていて、日中眠いので集中力が落ちている

などです。もちろんこれ以外にも理由はあるでしょう。


しかし、支援者の中には「落ち着きがない子だから」や「座る気がない子だ」と決めつけてしまう方が一定数います。


つまり、「なぜ座れないのか」についての評価ができていないのです。

評価ができていないことを棚に上げて、「我慢が足りない子だからだ」なんて、ひどい話です。

その子だけでなく、保護者の方にも失礼な話だよなと思ってしまいます。


もし、「疲労が原因だ」という仮説を持てば、机上課題の合間に適宜休憩をいれる(例えば体を動かす時間を持つ)など、「工夫」が生まれます。

「課題が面白くないのでは?」と推察すれば、「好きそうなものを課題として提供すればどんな反応になるのかな?」という思考につながります。


こういった思考がないと、この子は我慢ができない子だ→厳しく躾けないと!となってしまうか、保護者にも協力してもらってお家でもじっと座れるようトレーニングをしてもらおう!といった結論になってしまいます。


なぜステレオタイプになってしまうのか?どうすればいいのか?

ステレオタイプになってしまう人には、共通点があります。

それは「思考しない人」である、ということです。

思考するって、頭を使う行為です。

だから、脳がしんどい、面倒くさい、よく分からない、などの理由で頭を使わない人は、「決めつけておいたほうがラク」ということになるのでしょう。

決めておいたほうがラク=ステレオタイプでいたほうがラク


そうならないためには、「常に考える習慣を持つ」ということが必要だと思います。

「日本一、幸せな会社」とも言われる未来工業株式会社さんの社是は、「常に考える」です。

常に考えるからこそ、他とは違う思考が生まれ、それが個性になっていきます。


療育や発達支援においても、「答えを出す」ことよりも、「色々な側面から子どもや事象を見て、常に考え続ける」ことの方が重要です。

そして、「当たっているかどうか分からないが、とりあえずやってみる。そして振り返る」につなげていくことができれば、何かは変わります。

常に振り返りを行うので、その仮説が間違っていたとしても、いくらでも修正ができます。

そして、その間違ったことも、事例として積み上がっていきます

それが子どもの発達を可能な限り最高に伸ばすことにつながります。


私は療育において最も重要なことは、「評価すること」だと考えています。

評価がなければ、手立ては見つからない。

評価を正しく行うことができれば、手立ては自ずと見つかります


つまり、ステレオタイプの療育(療育支援者)は、 「評価をしていない人」または「評価ができない人」と換言できます(できるけどしていないのか、そもそも評価できないのかは人によりますが)。


療育業界の無意識の差別をなくしていくために、「子どもの権利を尊重しよう」と声高に言うのも悪くないでしょう。

ですが、「客観性と根拠を持った視点で子どもを評価することができる支援者を増やす」ことこそ、無意識の差別をなくしていくために、療育業界にいる人達が、今取り組むべき事項だと思います。


まとめ

・療育業界にも無意識の差別があります。

・その原因は、ステレオタイプで子どもを見る人がいるからです。

・ステレオタイプになる原因は、思考するのが面倒だからです。

・子どもを正しく評価できるスキルを持った人は、ステレオタイプでものを考える必要がないので、子どもをパッと見た目で判断したりしません。

・療育業界の無意識の差別をなくしていくためには、「正しく評価できる支援者を増やすこと」が最も最短の方法だと考えられます。

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