朝香初美

ニューヨーク在住、TVプロデューサー/スクリプトライター。

朝香初美

ニューヨーク在住、TVプロデューサー/スクリプトライター。

最近の記事

My jaw dropped. Then my lumber-like body fell to the floor and raised dust and self-doubt. "Allen v. Farrow" ミア・ファローとウッディ・アレンのドキュメンタリーで途方に暮れる

マンハッタンは数日前の春のような陽気からうって変わって曇っている。 私の気持ちもそんな感じで、この原稿を書きながらときどき外に目を向けていたら自分の部屋の窓が雨だかなんだかでところどころが汚れていることに気づき心はエンパイアステートビルディングの上に広がる空よりもどんよりとしてきている。理由はおととい見たドキュメンタリー番組"Allen v. Farrow"だ。原題の直訳は"アレン対ファロー"で、ご存知の人は多いと思うけれど元恋人同士の映画監督ウッディ・アレンと俳優ミア・フ

    • 9月11日。東京にて19年前のアメリカ同時多発テロが起きた朝を思う

      犠牲者は2,977人。ニューヨーク マンハッタンの世界貿易センタービルとワシントンD.Cの国防総省、そしてペンシルバニア州郊外で亡くなられたすべての方に哀悼の意を表します。 爽やかな火曜日だった。マンハッタンの私のアパートの窓からは雲ひとつない、ひたすら青く広がる空が見えていた。当時、アメリカのプロゴルフツアー、PGAの中継を担当していた私はその週に予定されていた大会のために午前中の便でミズーリ州セントルイスに向かうはずだった。荷造りのためにバタバタと部屋を行き来していると

      • 今日ニューヨークで再び考える、差別と命 -相模原障害者施設での事件から4年

        はじめに、命を落とされた19人の方にあらためて哀悼の意を表します。 「ハルさんだったかもしれない」電話の向こうで母がそう言ったのを覚えている。私はニューヨークで事件を知り、日本で重度の心身障害がある妹と暮らす母が動揺しているのではないかと電話をしたときのことだ。実際には母よりも私の方がはるかにショックを受けていて母の言葉の意味がうまく理解できず鼓動が速くなって苦しかった。ハルというのは私の妹の愛称だ。「お母さん、ハルさんが養護学校のころあの施設を見に行こうと思ったんだもの」

        • パンデミックとBLMで変化するNYCで  豊かさとは何かを考える

          ニューヨーク市ではロックダウン緩和の第1フェーズが今週の月曜日から始まった。建設業や製造業などに加えて衣料品店や書店など小売店の一部も店の外での物品の売り買いを条件に営業を再開できる。それでも街を歩いてみるとほとんどの店がまだ閉まっている。観光客もいないし学生や多くのニューヨーカーは街を抜け出したままだから無理して開けても採算が合わないのだ。新型コロナの影響で閉店せざるを得ない状況の中、先月から活発になった人種差別への抗議活動に乗じた、抗議活動とは関係のない悪人たちによる略奪

        My jaw dropped. Then my lumber-like body fell to the floor and raised dust and self-doubt. "Allen v. Farrow" ミア・ファローとウッディ・アレンのドキュメンタリーで途方に暮れる

        • 9月11日。東京にて19年前のアメリカ同時多発テロが起きた朝を思う

        • 今日ニューヨークで再び考える、差別と命 -相模原障害者施設での事件から4年

        • パンデミックとBLMで変化するNYCで  豊かさとは何かを考える

          #BlackOutTuesday in ニューヨーク  命と差別について考える

          きのう6月1日の朝、と言ってもまだ夜中を回って間もない時間にパトカーのサイレンの音で目が覚めた。闇を少しづつ斬り込むかのように断続的に近づいて来る不吉な響きは私の住むアパートの真下で止んだ。窓を開け、まだ冷たい空気の中に首を突き出して下を見ると覆面を含む8台ほどのNYPD(ニューヨーク市警察)の車が交差点の全ての角に止まってその一帯を紫色に浮かび上がらせていた。間もなく護送車がやって来て何人かが逮捕されていると知る。正当で平和的な抗議デモのはずが、政治的な思想を持つ団体が人員

          #BlackOutTuesday in ニューヨーク  命と差別について考える

          田代島(a.k.a. 猫島)で過ごした遠い記憶

          私が住んでいるニューヨーク市は自粛要請が3ヶ月目に突入している。もともと一人でいるのは苦でない性格の私だが、知らぬ間に心が疲れているということに先週気付いた。それは郵便局に向かう途中。からりと晴れた気持ちのいい昼下がりなのにストリートに人影はない。ふと空を見上げると、昔よく通ったナイトクラブの入り口のひさしが目に入った。そこに並べられた、NEW YORK I LOVE YOU の文字を見て突然こみ上げてきた、涙!マスクで覆われた口元に嗚咽がこもる。そのメッセージに感動したわけ

          田代島(a.k.a. 猫島)で過ごした遠い記憶

          パンデミックの渦中で人脈とは、を考えた

          アメリカの主要メディアの1つウォール・ストリート・ジャーナルに興味深い記事があった。医師から転身した33歳の投資家、Dr. トム・ケイヒルがリーダーとなってアメリカの最たる科学者たちの知力と億万長者たちの資金を集めて新型コロナウィルスの感染を止める解決策をホワイトハウスに提案していた、という話。記事の見出しは "The Secret Group of Scientists and Billionaires Pushing a Manhattan Project for Cov

          パンデミックの渦中で人脈とは、を考えた

          #岡村隆史 炎上を冷たい雨のニューヨークで思う

          ニューヨークは厳しい外出制限が始まってから1ヶ月が過ぎ、窓から眺める風景の中に花をつけ始めた街路樹を見つけると、外に出られないもどかしさを感じる季節になりました。でもきょう日曜日のマンハッタンは朝から曇り空。少し前から風の音が聞こえてきて、窓を開けると勢いよく小さな雨の雫が顔にぶつかりその冷たさにちょっとショックを受けてしまった。まるで「ザンネンでした、またどうぞ」と街が言っているような気がした。 そんな日なので少しザンネンな話を書こうと思う。 日本のお笑いタレントの岡村

          #岡村隆史 炎上を冷たい雨のニューヨークで思う

          "無い袖は振れぬ"をニューヨークで思う

          アメリカの"全国複数所帯物件協議会 (The National Multifamily Housing Council)" の調査によると新型コロナウィルスの影響で職を失い、4月分の家賃(アメリカでは月払い家賃の支払期限は月頭の物件が多い)を払えなかった人が全体の31%に上ったという。日本の古いことわざがふと浮かぶ。 "無い袖は振れぬ"。 ニューヨーカーのおよそ7割が賃貸住まいだ。日本のワンルームにあたるStudioの部屋でも人気のエリアはレント(家賃)が$

          "無い袖は振れぬ"をニューヨークで思う

          筋肉を落とさない

          トランプ大統領が非常事態宣言をしてから4週間。私が住むニューヨーク市では Stay-At-Home order (外出自粛令)が浸透し、毎日チェックする3大ネットワークの1つ、NBCのモーニングニュースショー"Today"は各アンカーが自宅からコメントするようになった。私が担当する番組も3週間前から会議や打ち合わせはWebツールを使った遠隔制作だ。 今はまだ不便と感じているこの遠隔作業が慣れてくると危険だ。根がぐうたらな私は特に危ない。やろうと思えばダイニングテーブルの

          筋肉を落とさない