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高橋弘希 送り火 感想等

芥川賞を獲った作品である、高橋弘希の送り火の感想を書きます

ネタバレ注意

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 稔は歩のどこが気に入らなく、刺そうとしたのか。おそらく、歩の器用さだろう。よそ者にも関わらず、クラス内で晃に次ぐナンバー2の地位を確立した。歩は複数の転向を経て、このうまくやる能力を獲得していた。晃に忠告し、彼の行動をコントロールできるのは、グループ内で歩だけになる。つまり、歩が晃に一言「稔へのいじめを止めろ」と告げればいいのだ。しかし、歩はそれをしない。歩の視界からは、稔の存在は外れているからだろう。

 稔からすると、自分へのいじめを見て見ぬふりをする歩を恨むのも仕方ない。傍観者は加害者理論で、歩も加害者だ。

 それに、高校進学とともに、関東に戻る歩には、いろいろな可能性が残されているが、稔には、地元に残り肉屋を継くしかない。歩と稔の将来性は、大きく差があるということだ。稔が歩に恨みを持つのも理解できる。

 今まで登場してこなかった人物に、小説のラストへの導入を任せてしまっていた。読者からすると、晃と稔の関係性に決着がつくと期待するが、そうではなかったので、肩透かしを食らった。

 

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